第十三話
「約二年間…って。え? 俺たち高校一年生だよな? 去年の話?」
中等部と高等部を一緒に言うか? あれ?と思いつつ二人の顔を見つめた。
俺の言葉に都雅と勇気が顔を見合わせる。
「もしかして全部忘れちゃったの?」
「……ってことは高一じゃない…?」
「まぁ…間違ってはいないかな。今年の春から高等部だから」
青空の奴…きちんと説明して行けよ! 高校一年って言ってたじゃないかっ!
次にあったら、絶対文句いってやる。
溜息をついて、俺は二人に説明を求めることにした。
「悪い…説明してくれないか」
「うん。ええと、まず僕達は今、中等部三年生です。この学校は小等部から高等部の一貫教育男子高校なんだよ。あ、ちなみに学年末試験は終わってるからね」
勇気の言葉に俺はホッとした。試験は受けなくてすんだなら、何とかなりそうだ。
「後、二ヶ月ちょっとで高等部の校舎に移動だけど…もしかして現在の日時を把握していないということかな?」
都雅が口の端を少しだけ上げて笑いながらそう言った。
「……後二ヶ月ちょいでってことは…今、二月だよな…え…何でこんなに寒いんだ?」
俺の言葉は相当、変に聞こえたらしい。目を丸くした後、都雅と勇気は再び顔を見合わせた。
「二月って寒いでしょう?」
「寒いけど…でも寒すぎないか?」
そう言うと、立ち止まった都雅がいきなり鞄から地図帳を取り出して、開いて見せた。
俺と勇気も立ち止まって地図帳をのぞく。俺が使ってた(いや、当時あんまり使ってなかったか…)地図帳より綺麗で見やすくなっている。
「オレ達の住んでるのはここ」
都雅が指したその場所は、俺(三刀屋 鋼樹)が住んでいた場所から遥か遠い北に位置していた。
「……え…マジ?」
都雅と勇気は真面目な顔で頷いた。
「引っ越ししてきた…とか?」
「要くんは生まれも育ちもここだって聞いてるけど」
唖然としている俺を見て、都雅は地図を閉じて鞄にしまう。
「本当に覚えてないんだな…」
「ちょっと待て…なら、なんで都雅も勇気もコート着てないんだよ」
「今日はいつもより暖かいんだよ?」
暖かいという言葉に驚いて、俺は身震いする。
「これで?」
「昨日は平年的気温だったからコート着てたよ。でも、今日は三月下旬くらいの気温だって、天気予報で言ってた」
この寒さで三月の気温?
「明日から天気が崩れるって言ってたから、また寒くなるよ」
「かぁーっ!…何でお袋はコートくれなかったんだよっ…」
都雅は俺の様子に、シニカルに笑った。
「車で送るつもりだったからだろ」
「うわーっ…失敗したっ」
後悔先に立たず…。
「勇気も都雅も、寒さを我慢してるのかと思ってたのに…」
「いくらオレでも、寒かったらコート着るよ」
何でだか分からないけど…なんとなく敗北感。
同じ日本なのに、何なんだこの気温差は!
「箱柳くんの車に誘われた時、乗っていれば良かったのに」
勇気がそう言ったので、俺はむっとして早足で歩き出した。
「要くん! 怒ったの?」
「当たり前だろ。あんな奴の車、猛吹雪の日だって乗るもんか」
都雅と勇気が後ろから付いて来る。振り返ると二人は並んで歩いていた。箱柳と俺のやりとりを、勇気が都雅に説明している。何だ、もう慣れたのか。
「以前の要くんなら乗ってたよね」
などと言うので、勇気の首に腕を回して力を入れた。
「わっ! 苦っ苦しい…っ」
「変なこと言うからだっ」
力を抜いて腕を解くと、勇気は都雅の後ろに隠れた。
「本当なんだってば…前の要くんはそうだったんだよぅ」
目を潤ませて泣きそうになりながら勇気は反論する(ただし都雅の後ろに隠れたまま)。
「そうなのか?」
都雅に聞くと、黙って頷いた。
「仲がいい…という訳じゃないけど、いつも同じグループにいた…というか、いるようにしてた…かな」
「ふうん…何で?」
都雅は後ろに隠れている勇気を自分の前に引っ張って来て、両肩をポンと軽く叩く。
「えっ、えーっ僕が言うのーっ?」
俺は両手を腰に当てて勇気の言葉を待っていたが、あまりの寒さにくしゃみが出てしまった。
「はっ…くしゅんっ…うー、寒い」
「と、兎に角。中に入ろうよ、ね、ね?」
「うう…仕方ない」




