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第十二話

「OK、OK!そっちの方が俺としては有難い感じだね」

「そう? そうか…それじゃ、よろしく」

「こっちこそ、よろしく」

 再び握手をして、思い出したように鳶沢(とびさわ)を見ると、固まっていた。

「鳶沢…大丈夫か?」

「う、うん…」

 ふうと息を吐いて、鳶沢は目を瞬かせる。

「世紀の一瞬をみた気分だよ」

「大げさだなぁ」

「だって、皆もびっくりすると思うよ。優等生の要くんとその…あの…」

 鳶沢が言い淀んでいるのを察した八潮路(やしおじ)が、小さく笑った。

「優等生からは反比例のオレが友達になったから…かな」

 おお、反比例とはおもしろい表現。

「あ、あの…ごめん…」

「いいよ」

 八潮路にやさしく言われて鳶沢はごくんと唾を飲み込んだ。

「今日は…驚くことばっかりだよ…要くん」

 何故そんなに驚いてるのかは分からないが、どうやら以前の要は八潮路と仲良くしていなかったみたいだな。

驚いている勇気をほっておいて、都雅の方を向いて俺は笑って見せた。

「ってなわけで、都雅って呼んでもいいか?」

「ん、いいよ。それじゃ、オレも要って呼ばせてもらう。ところで、身体(からだ)は大丈夫か? なんだったら負ぶってやろうか」

「いいや、大丈夫。教室まで案内してよ」

「わかった」

「あ、待ってよ。置いていかないでー!」

 歩き出した俺たちの後を、慌てた様に鳶沢が追いかけてくる。

「そういえば、鳶沢は俺のこと要って呼ぶんだな」

「あ、うん。ダメだったかな…以前からそう呼んでいたから」

「別にいいけど…俺は何て呼んでた?」

「勇気くんって呼んでくれてたけど」

 勇気くん…ね。

「勇気でいいだろ」

「あ、うん。いいよ」

 歩きながら、俺と都雅の丁度中間の、後ろを歩いている勇気の方を振り返った。

「何、遠慮して歩いてるんだ? 隣り来いよ」

「あ、えっと…あんまり横に並んで歩くのは…」

「狭い歩道じゃないんだから、いいだろう」

 なぁ? と隣りにいる都雅に同意を求めると、都雅は小さく笑った。

「鳶沢は距離を測りかねてるんだろうさ」

「距離?」

 勇気は慌てた様に、首を横に振り両手を大げさなくらいに左右に振る。

「ちっ違うよ…」

 その慌てぶりに、俺は何となく納得した。

「あー、悪い。急に変わった俺に付いて行けないってことか。ま、仕方ないか」

「違うったら」

「勇気くんだって、もとの要と同じ様に優等生だったんだろう?」

 そう俺が言うと、勇気は涙目になっていた。

「違うってば!」

 勇気が泣き声混じりでそう言った時、俺の隣で都雅が再び小さく笑った。

「それ以上、(いじ)めるのはやめなよ」

「苛めてないって」

「オレが言った距離ってのは、要とのじゃなくて、オレとの距離ってことだよ」

「都雅との?」

 都雅の顔を見ると、深く頷いた。

「約二年間同じクラスだったけど、ほとんど喋ったことないし。小等部の時からアウトロー的なところがあったからね。ほら、触らぬ神に祟りなしっていうだろう? あいにくオレは神じゃないけど」

 ふむふむ…と納得しつつ、最初の言葉に引っかかりをおぼえて、俺は首を傾げた。



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