どこまでにも対抗心
12月に入り、臼杵が競馬イベントのイメージガールの1人に選ばれた。彼女はイメージガールのアルバイトをしていたのだ。
ご丁寧にうちの事務所にもポスターが送付され、重留が「競馬なんてやる暇あるんですか?」とぼやきながら掲示板に貼っていた。それを見ていたナギジュンはというと……。
「社長、何かイベント事の仕事ないんですか? 私もコンパニオンやりたいんですけど」
「ナギジュン、そんな所にまで対抗意識を燃やすな」
「そうよ。イベントのオファーは来てないし、ベーシックにいえば、うちは芸能プロダクションじゃないんだからね」
オレも陣内社長も呆れて笑うしかない。
「それは解ってますけど、マガジンのグラビアにもまだ声が掛からないし、智弥ちゃんは慶應出てるけど私なんか倍率1・5倍の大学しか出てないから。彼女には敵わないのかなあ」
珍しくセンチメンタルな顔しやがって。が……。
「へえー、倍率1・5倍って。フフンッ」
「何で嗤うんですか!?」
「社長、今人間性の悪さが出ましたよ」
ナギジュン、オレの順でツッコむと、
「ハハハッ! 。別にバカにした訳じゃないけど、倍率で大学選ばなくない?」
オレに同意を求める。
「まあ、初めて聞きましたけどね」
「ユースケ君もバカにしてるじゃん!」
「別にバカにはしてないって。それより、もう作家としてだけに対抗心を持て」
目力を込めて諭したつもりだった。が、
「大学も1・5倍で勉強も大して出来ないんだよ」
まだ解っとらんな、こいつ。
「大学や勉強のせいにすんなよ! オレも学生の頃陸に勉強して来なかったから、今でも語彙も少ないし英文なんか意味も発音すら解らない。だから今頃になって毎日辞書引いたり英語の発音や意味は恥を感じながら人に訊いたりしてる。
時にはネットの辞書も遣う。その分通信料は掛かるけどしょうがないんだよ。学生の時だけじゃない。人間幾つになっても勉強して行かなきゃいけないんだよ。良いか、教育係として言っておくぞ。放送作家っていう職業は1年中、365日「受験勉強」してるようなものなんだよ。
これは作家に限った事じゃない。新しい商品、新たなプロジェクト、会社員の人達だってみんな勉強してるんだよ! ナギジュンは勉強して来なかった学生時代に引けを感じてるばかりで、今の自分から目を背けてるだけじゃないのか!?」
思わず熱弁してしまった。でも間違った事を言ったつもりはない。
「ユースケ君もまくし立てたねえ。びっくりしちゃった……解ったよ。私も作家に成れた事だし勉強して行く」
ナギジュンの目が真剣になった。
「そう。中山君が言った事が放送作家、社会人としての序論だよ。ちょっと熱が籠り過ぎてたけどね」
陣内社長はにっこりなんだか苦笑なんだか。
「でも社長、グラビアの件はお願いしますね!」
そこの拘りは説得出来なかったか……。
「もう解った解った。特別に年明け最初のグラビアに推薦しとくから……」
社長の面倒臭そうな口振り。でも……。
「ほんとですか! 宜しくお願いします。脱ぎますから!!」
「だから脱がなくて良いって! 何回言えば……」
解るんだか。社長も頭を抱えてしまう。でも採用したのは貴方ですからね。




