下世話
それは番組の会議でも……。
「下平、ギャラ上げてくれよ」
「これぐらいで良いって事?」
彼女が出した指は2本。
「0が一つ足りないな」
「20万も出せる訳ねえじゃん!」
「20万貰えたらマジリスペクトっすよ。下平さん」
ナリ君は目を輝かせる。冗談のやり取りだと解っているのやら。
「私は20万円でも別に良いですけどね」
お貴さんは澄まし顔。彼女はオレ達とは次元が違う。
「だから出せねえっつーの!!」
「今のギャラで何とかお願い」
脹れっ面の下平と苦笑いの大石さん。だから冗談のつもりなんだけど。
しかし、こんな戯言でも企画案は出て来るものだ。
出演者がギャラを告白し合う、トークの40分間のコーナー。最初はギャラを告白し合う内容からファーストキスはいつだったか、どんなシチュエーションだったかを告白し合う内容へとシフトして行く企画に肉付けされた。
会議中は、
「ぶっちゃけユースケ君クラスになるとどれくらいなのか、私も知りたい」
「そうだねナギジュンちゃん。オレも知りたいっすよユースケさん」
ナギジュンとナリ君も乗かって来る。下世話好き共め……。
「別に皆とほぼ一緒だよ」
「ぶっちゃけ20万とか?」
金に不自由しないだろうお貴さんまでにっこり。
「制作費考えてみなよ。そんな額貰える訳がない。プロデューサーやディレクターより少ないよ」
「あたし達を巻込むな!」
「私達を巻込むな!」
下平、枦山からのユニゾンのツッコミ。でも事実ではある。
「でも一度で良いんで教えてくださいよ」
臼杵まで入って来る。
「どいつもこいつも仕方ねえなあ……10万だよ」
結局、愚直に答えてしまった。
「マジっすか!? オレより3万も多いっすよ、ユースケさん」
ナリ君は目を丸くし、
「私より2万多いですね」
お貴さんはやっぱりにこやか。
「お貴さんは良いですよ、実家がお金持ちなんですから。私達より5万も多い」
「早く10万近く貰えるように成りたいね。でもユースケさんクラスでも10万円なんですね」
臼杵はナギジュンではなく下平の方を見る。
「悪かったね。大した額しか出せなくて。でも作家は良いよ、何本もレギュラー番組掛持出来るんだからさ」
「下平だって制作プロダクションなんだから掛持出来るだろ」
「あたしはまだ他の番組じゃディレクターだもん。この番組でも半ディレクター扱いみたいなもんだし」
「ナリ君とか釈迦に説法だろうけどさ、プライムタイムの番組でも作家のギャラはプロデューサーやディレクターより額は低いんだよ。作家なんてコンビニの時給より低い額で働いてんだから。掛持出来たとしてもね」
「確かにそうっすよねえ」
ナリ君はやっと納得してくれた。
「ごめんね。安いギャラで働かせて」
今まで苦笑しながら黙っていた大石さんが口を開く。
「でも希ちゃんさ、何れはどの番組でもプロデューサーに成れるんだから、今は修行だと思って」
「そうそう。1本でもプロデューサーに成れて良しとしなきゃな。オレ達なんかまだディレクターなんだから」
「私だってそうだよ、希」
大石、大場、枦山の順で慰められる新人プロデューサーって一体……何?
「それよりお貴さん、今六本木で暮らしてるんだよねえ? 場所覚えられた?」
「ええ。何とか、やっと」
ユースケ君が話題を変えたけど、お貴さん自宅の場所も覚えてなかったって訳?
「何回か不動産屋に電話して訊いてたみたいだけど、自宅マンションを覚えられないなんてスケールが違うよね」
「私は別にスケールが大きいなんて思ってはないけど」
枦山さんの言葉にお貴さんはにこやかだけど、笑顔で言った枦山さんは百パー皮肉だよ。
「お父さんに援助して貰ってるって、この前聞いたけど、月どのくらい?」
ユースケ君だって人の金銭面に興味あるんじゃん。
「そんなに多くはないですよ。3百万くらいかなあ」
「そんなに!? パパ活じゃないですか!」
「智弥ちゃん、そういう問題じゃなくない? 良いですね、富裕層の人は」
智弥ちゃんは笑ってるけど私は敵意むき出し。だって私も実家暮らしだけどそんな父親いねえし。
「月3百万くれる親がいるなんて、マジリスペクトっすよお貴さん」
「ナリ君、リスペクトする所がおかしいって」
ファーストキスの話題にまでは及ばなかったが、金の話は下世話で盛上るというのは立証された。まあ解り切ってはいた事だから企画案に出せれたんだけど。
後は男女の芸人を数人ゲストに招いてトークをさせれば盛上る事間違いなしだ。数字は、どうなるかは知らんが……。




