7819T列車 再婚
皇紀2745年2月28日(第6日目) 国鉄美祢線美祢駅。
秋吉台からバスで戻る。時間もお昼を過ぎ、僕たちはお昼ご飯を済ませて駅へ戻った。美祢からは再び特急「スーパーあきよし」に乗って益田を目指す。
美祢→美祢線・山陰本線特急「スーパーあきよし」→益田
枕崎→広尾間の最長往復切符往路美祢駅から使用再開
「ご乗車ありがとうございました。まもなく長門市、長門市です。長門市を出ますと次は東萩に止まります。」
長門市に到着する手前で車掌のアナウンスがある。
「なお、長門市駅で7分停車します。また長門市駅では山陰本線小串方面から参ります特急「スーパーいそかぜ号」の連結をいたします。」
とさらに続けられた。
長門市駅に到着すると反対側のホームにキハ187系が止まっている。ステンレスの背の低い車体に振り子機構を搭載したディーゼルカー。1号車の半室構造のグリーン車・・・。どこからどう見ても四国で走り回っている2000系気動車にしか見えない。
「ちょっと降りるか。」
僕は萌に声をかけて、ホームに降りた。ホームと扉の段差が少々大きい。
「ご注意ください。特急「スーパーいそかぜ」益田行きの到着です。黄色い線の内側までお下がりください。」
とアナウンスが流れる。
「「いそかぜ」って。下関で分かれた。」
萌が言う。もちろん、朝に見た「いそかぜ」はとっくに益田まで行ってしまっているから、別の「いそかぜ」になるが・・・。
「そうだよ。」
と僕は答えた。
「はあ・・・。「いそかぜ」と「あきよし」って下関で分かれて、長門市でまた会うの。面白い走り方ね。」
「まぁ、急行「さんべ」とかは再婚列車とか言われていたからね。」
これは下関から長門市間の距離が余り変わらないことに由来する。今回は最長往復切符のルートを通る特急「あきよし」を利用した。下関~長門市間を美祢線経由で行った場合の距離は79.8キロだ。一方、下関から山陰本線経由で分かれた特急「いそかぜ」の下関から益田間の距離は77.7キロ。その差はわずか2.1キロ。ほとんど差が無いため、どの路線を経由しても同じぐらいの所要時間で合流できるというのだ。
「再婚列車ねぇ・・・。私達は再婚しなくたって大丈夫よね。」
「ああ。」
「フフ、ナガシィ。大好き。」
「・・・。」
あっ、はめられた。
反対側のホームで待っていた特急「いそかぜ」は益田行きの「いそかぜ」が到着すると同時にエンジンを吹かして出発。その後を追うように美祢線経由の特急「あきよし」博多行きもエンジンを吹かして長門市を出発していく。あっちは下関でちゃんと合うことが出来るだろうか・・・そんな心配をしつつ、僕たちは益田行きの「あきよし」に戻った。
山陰本線に入ると「あきよし」は人が変わったようだ。エンジンはさっきよりもうなり、車体をカーブに合せて右に左に傾ける。引き下げられたり、引き上げられたりする動きは振り子式車両の特徴的な動きだ。
「人が変わったみたいね・・・。」
萌が過ぎ去る風景を見ながらつぶやく。
「これがキハ187系さ・・・。」
益田駅に到着すると客は二手に分かれた。一つはここで降りる人、もう一つはここからさらに東を目指していく人たち。「スーパーいそかぜ」・「スーパーあきよし」が止まっている反対側ホームには鳥取行き特急「スーパーくにびき」・「スーパーおき」がいる。7両でも長いと思ったが、キハ187系が「いそかぜ」・「あきよし」よりも長編成を組んでいるのは不思議な感じがする。数えてみると11両だった。
「弁当ぅ、えぇ弁当ぅ。」
ホームを駅弁売りが歩き、乗客は扉から「おい、こっち。こっち。」と声を上げる。「はい、毎度。」それに応える駅弁売りも手慣れている。
「特急「スーパーくにびき」・「スーパーおき」鳥取行き。発車いたします。白の線の内側までお下がりください。」
アナウンスと車掌の笛の合図でドアが閉まる。にわかに辺りがうるさくなると列車はゆっくりとホームを離れていった。
「僕たちも行こうか。駅弁買って。」
「うん。」
益田→山口線→津和野
枕崎→広尾間の最長往復切符往路津和野駅で途中下車
一口メモ
再婚列車
ある駅で離れ、またある駅で同じ列車が併結される列車をさす。「スーパーあきよし」と「スーパーいそかぜ」は下関・長門市で分割・併合を行っているため、主にこれをさす。
特急「スーパーくにびき」
鳥取~益田間を運行する特急列車。「スーパーまつかぜ」を補完する役割を持っている。
特急「スーパーおき」
鳥取~小郡間を運行する特急列車。




