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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第一章 始まりのダンジョン
5/48

5 三分

 


「ええい、お湯はないのか!? お湯を映せ!」


 酸素欠乏症のロボット技師のようにスマホに向かって叫ぶと商品リストに【お湯 10$】が出てきた。


 なんだ……やればできるじゃねえか……ええ? 迷宮主(ダンジョンマスター)


 購入すると再び魔法陣が光り、やかんが現れた。

 あちっ。ちゃんとお湯が入っている。



 カップ麺にお湯を注ぎながら考える。

 今起こったことはどういう意味を持つか。

 監視されている?あるいは、アプリを通じて音声が誰かに届いているか。


 今ノリで迷宮主(ダンジョンマスター)などという単語を出したが、実際このダンジョンはあまりに人間臭い。トイレまであるし。十中八九人間が作ったものだろう。

 そして割と気を遣ってくれている。面白がっているだけかもしれないが。


 何のために。何をさせたいのか。

 三分は待ち切れない。

 蓋を開けて麺をすする(割り箸はついてた)。固いがウマイ。


 途中で水分が欲しくなり水も買った。ペットボトルのミネラルウォーターだ。

 残りは144$。推測通り150$の長剣は消えた。




「聞きたいことがあります。出てきてもらえませんか?」


 食べ終わって一息ついた後、スマホに向かって呼び掛けてみたが特にリアクションはなかった。


「……俺はホントはシーフード味の方が好きです」


 商品リストに【カップ麺(シーフード)】が増えた。

 うーん、自動なのかな……


 でも今結構適当な言い方でもちゃんとカップ麺のシーフード味が出たな。誰かが聞いてそうだけどな。

 頭の中でカレー味を思い浮かべてもダメだった。言ったら増えた。音声認識らしい。


「他に買えそうな武器は?」


 杖、ハンマー、弓、丸太などが出てきた。

 みんな、丸太は持ったか? 持たねえよ。

 買うつもりはないので値段は割愛する。


「脱出アイテムはあるか?」


 ……しーん。

 知ってた。悔しくないぞ。


 とりあえずはこんなものか。ショップを閉じた。

 考えたくはないが寝具なども買えそうだ。いざとなればそうしよう。



 もう一つの気になる木……気になる機能、アナライズも確認しておこう。

 タップするとカメラが起動したので、カップ麺の容器を映してみる。

 プログレスバーが表示され、数秒で解析が完了する。


『カップ麺 使用済み 0$ 』


 ……見ればわかるな。

 最後のは売却金額か? どうやって売るんだ?


 試しに魔法陣に載せて映してみると、売却ボタンが表示された。なるほどね。

 押してみると、購入時同様の光が出てカップ麺容器はこの世を去った。


 剣を見る。


『古びた剣 6$』


 やっす。

 他の武器の値段から推測すると、買値の十分の一といったところか。かのボッタクリ商店もビックリである。


 ふと思い立ってインベントリから宝箱を取り出し、アナライズで映してみる。ドキドキ。


『宝箱 施錠済み 中身不明 120$』


 おお。つまり買うと1200$の価値があるということか。なんとかして開けたいな。

 こじ開けるのは無理かな…… 剣を使って折れたらツライな。あまり乱暴にして中身が壊れても泣けるし。

 まだ保留とする。


 それにしてもいまいち役に立たないな、アナライズ。

 あるいは、マジックアイテムなどなら効果がわかったりするのかもしれないが……

 モンスターとかにも通用するのかな。戦闘中にカメラ向ける余裕があるとも思えないが、そのうち試してみるか。




 さて、ステータスを確認しておこう。


 ===================

 笠木詠介 学生

 レベル 3 MP 20 / 20 SP 12

 気配察知Lv1

 ===================


 レベルがまた上がってるな。割と上がりやすいのか。

 そういえば、レベルが上がっても特に身体能力や体力が向上した感じはないな。そのあたりはスキルでカバーしろということか。


 ===================

 頑健Lv1 3SP

 剛力Lv1 3SP

 ===================


 増えている。腕力上昇っぽい。

 ムキムキになったらやだな……


 しかしこれ、アンロック条件とかあるのかな。

 箱を開けようとして頑張ったからかな?

 いろいろ試してみるといいかもしれない。


 にしても、あると便利そうだ。少し迷ったが、【剛力】を習得してみることにする。



 習得した瞬間、全身の筋肉が盛り上がり、服が弾け飛んだ。

 テーレッテー!



 なんてことはなかった。

 すぐは実感ないのは【気配察知】と同じだな。


 試しに腕立て伏せをしてみる。

 ホッホッ。

 いつもより素早くできる気がするが、すぐ疲れた。持久力が上がるわけではないのか。

 重い物でも持ってみないと分からんな。


 よし、箱開けをもう一度試してみよう。

 さっきと同じ体勢になり、力を込める。


 ぬおおおおん!

 フルパワー! 100%中の(略)



 ……いろんな角度から頑張ってみたところ、中身を吹っ飛ばすこともなく、最終的に蝶番の方を壊すことができた。

 さすが剛力さん。

 おかげで手が尋常じゃなく痛いが。


 よし、開けるぞ。

 ぐびり。と生唾を飲み込む。



 中から出てきたのは巻物だった。

 ガサガサの厚くて硬い黄ばんだ紙を丸めたものだ。羊皮紙というやつか。凝ってるな。


 開いてみると、魔法陣のような図形と、謎の文字がのたくっていた。なるほどわからん。


 こういう時のためのアナライズだろ。

 スマホのカメラを向けると、数秒かかったあとに解析結果が表示された。



『【解錠(アンロック)】の巻物(スクロール) 【解錠(アンロック)】の魔法を習得可能』


 ……オイィィィィ!!

 なんでこんだけ苦労した後でこういうのが出んだよ!馬鹿にしてんのか!


 くっ……怒ってもしょうがないか。便利だろうことは間違いない。今回は許してやろう(何様)



 巻物を広げて魔法陣に触れてみると、ボンヤリと光りだす。

 手を置いてみると徐々に光が強くなっていく。やがて手に吸い込まれて光が収まると魔法陣も消えていた。

 これでいいのかな。


 ===================

 笠木詠介 学生

 レベル 3 MP 20 / 20 SP 9

 気配察知Lv1 剛力Lv1

 解錠

 ===================


 よしよし、順調だな。


 【解錠】を試してみたいが開けるものがない。次の宝箱はサクッと開けられるかな。罠がなければな。



 よし、そろそろ休憩は終わりだ。

 早く出口を見つけないと、ここで野宿になってしまう。

 いや、屋内だから野宿じゃないけど。


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