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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第一章 始まりのダンジョン
3/48

3 初めてのスキル

 


 俺は少し興奮していた。モンスターがいるダンジョンで冒険している。


 最初こそビビっていた俺だが、二回の戦闘を無傷で切り抜けて楽しさが顔を出してきた。

 少なくとも自分の身長の高さから落ちて死ぬ探検家や事あるごとに自殺するしんのゆうしゃよりは強いらしい。

 気を大きくしながら、迂闊にもズンズンと進んでいった。



 !?



 突然背中にドン、と大きなものが覆い被さってきた。

 かなりの衝撃に前につんのめる。

 チキチキ、と頭の後ろで気持ち悪い音が聞こえた。


 なかばパニックになりながらも倒れることはなんとか堪え、おぶさっているものを振り回すが剥がれない。何かが肩に食い込んでいる。



 このままではマズイーー



 意を決して背中から壁に激突する。肩への食い込みは強くなるが、圧力が緩んだ隙に逆手に持ち替えた剣で背中と壁に挟まれた敵を突き刺す。手応えありだ。


 敵は声もなく背中から剥がれて床に落ちた。俺は慌てて数歩分前に逃げ、振り返る。


 丸っこい胴体と長い脚のある、蜘蛛とカマドウマの中間のようなおぞましい虫だ。体長は1メートル程もあり、グレーの体が保護色になっていて天井にいたのを見逃していたようだ。

 ひっくり返った状態から長い脚をつかって起き上がるところだった。



「クソ虫が!」


 鳥肌が立つのを自覚しながら前脚を狙って切り払う。千切れはしなかったものの、鈍い音を立てて折れ曲がった。


 後脚で跳躍し飛び掛かろうとしたようだが前脚に受けた衝撃でバランスを崩したか。

 床に突っ込んだ虫を足で踏み潰すように押さえつけ、頭部に剣を突き入れる。


 しばらくそのまま痙攣していたが、やがて動きが止まるのを確認してから足を離した。


 あ、あぶねえ…… 油断しすぎだ。



 肩の傷を確認する。血が滲んでいるが、そこまで深くはなさそうだ。ホッとする。


 即死系の敵じゃなかったのが救いだ。

 だがそういうのがいないとは限らない。首をはねてくるウサギとか。



 そういえば……


 一応周りに今の虫がいないことを念入りに確認してから、スマホを取り出し、悪魔召喚プログラム……ならぬ、『ダンジョンアシスタント』アプリを起動した。

 ステータスを確認する。


 ===================

 笠木詠介 学生

 レベル 2 MP 15 / 15 SP 10

 スキルなし

 ===================


 おお、レベルが上がってる。

 なるほど、SPは1レベルにつき5ずつ貰えるのか……

 MPもだ。魔法なんてないけど。

 スキルボタンをタップする。


 ===================

 気配察知Lv1 3SP

 頑健Lv1   3SP

 ===================


 おお、増えてる……

 ちょっと嬉しくなるが、今回の目当ては【気配察知】である。

 いつ襲われるかわからないのは心臓に悪すぎる。これできっと敵を発見し易くなるだろう。

 なったらいいな。


【気配察知Lv1】をタップして習得する。これでいいのだろうか。


 ===================

 笠木詠介 学生

 レベル 2 MP 15 / 15 SP 7

 気配察知Lv1

 ===================


 ちゃんと習得出来たようだ。

 実感は特に湧かないが……

 過信は禁物か。



 気を引き締め直し、進んでいく。

 程無く曲がり角があり、恐る恐る覗き込む。


 その先はすぐ行き止まりになっていたが、そこにポツンと置かれていたのは……

 一抱えほどもある箱だった。


「おお……おお!」


 近くでまじまじと見てみる。

 箱は木で出来ており、蓋は湾曲している。

 蓋と本体の間には金属の留め具があり、鍵穴がある。

 絵に描いたような宝箱だ。

 思わず頰が緩むのを感じる。


 いや待て、落ち着け。

 宝箱には付き物のアレがあるかもしれない。


 そうーー罠、だ。


 ありがちなものとしてはダーツや石が飛び出してくるもの。ダーツには毒があるかもしれない。致命的だ。さらに爆発の罠。あるいは石化ガスとか……!いや、やはり最も危険なのは転移させられるテレポーター……!石の中に飛ばされれば即ロストである。危険極まりない。おお……恐ろしい!



 ……興奮し過ぎたな。

 さて、どうしようか。


 ぶっちゃけ、いくら警戒したところでどうしようもない。

 俺はシーフではないし、罠解除スキルなんてものもない。ましてや、魔法もだ。


 では、スルーか?

 宝箱を前にしてスルー……あり得ない。

 結局一か八か開いてみるしかないか。


 まず、剣でつついてみる。箱自体に擬態してるわけではなさそうだ。最近は箱を被った怪しい変態もいるからな。


 スマホから鞄を取り出し、盾のように顔を庇う。さらに、モンスターの出現やガスの噴出に備え、即座にバックステップで回避する心の準備をする。



 よし……いくぞ!



 気合いとともに蓋に力を込め、開け放つーー

 硬い。


 顔を庇っていた鞄を下ろした。両脚で箱を挟み、背筋を使って全力を込めるーー



 ……


 ……鍵が掛かってた。


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