第22章・第ニ部 「ブラックタイガー本部 ― 闇の中の真実」
レイを乗せたブラックタイガーの艦艇は、暗い雲を突き抜け、
見たこともない軌道を描いて上昇していった。
視界の端に、青い地球がゆっくりと小さくなっていく。
「まさか……本当に宇宙に……」
レイは窓越しに呟いた。
艦艇が到着した先、それは巨大な人工衛星のような基地――
ブラックタイガー本部「アーク・ネメシス」。
そこには、数千人規模の鬼と人間の混血兵士たちが整然と動いていた。
彼らの目には、恐怖も怒りもなく、ただ「使命」の光だけが宿っている。
艦内でレイを迎えたのは、姉・神崎アヤ。
彼女は以前の冷徹な表情のまま、淡々と告げた。
「ようこそ、レイ。ここが父さんの築いた“新しい世界”よ。」
「……世界?」
「地上の人間はもう限界。
ここから、真の均衡を作り出すの。」
レイは答えず、ただ姉の瞳を見た。
その奥にあるのは、昔見た優しい姉の影ではなかった。
ミカに案内され、レイは研究区画へと通される。
そこでは、鬼と人間のDNAを掛け合わせた**「次世代融合体」**が実験的に造られていた。
「これは……なんだ……」
「母さんの研究の続きよ。」
レイは息を呑む。
母・ユキが生前、ホワイトホースのために行っていたはずの研究が、
今は“完全な鬼”を創り出すために利用されていた。
奥のカプセルに、眠るように横たわる一人の女性。
装置のパネルには――**「神崎ユキ ― ステイシス状態」**の文字。
「……母さんっ!」
レイは駆け寄ろうとしたが、ミカが腕を掴んで止めた。
「今は近づくな。母さんは、まだ“完成”していない。」
「完成……? 母さんを、道具みたいに言うな!」
怒りに満ちたレイの声が響く。
だが、アヤは冷たく言い放った。
「父さんも、母さんも信じている。
この世界の未来は、あなたの“血”で完成するって。」
レイの中に、再び黒い熱が込み上げる。
胸の奥に宿る“闇の力”が、ざわめき始めた。
「俺の血なんて……誰にも使わせない。」
そのとき、艦内放送が鳴り響いた。
『総裁より、全隊員へ通達。
“次段階計画・イグニッション”を72時間後に実行する。』
アヤが振り向き、わずかに笑う。
「レイ……この3日で、あなたも“理解”するわ。
父の言う、真の世界の意味を。」
閉ざされた隔離室の中で、レイは窓の外に広がる地球を見つめながら、
心の奥で静かに誓った。
「父さん……姉さん……母さん。
俺は、絶対に闇には染まらない。
俺は――人として戦う。」
そして、ホワイトホース本部でも同時に動きがあった。
ナツキとシュンが、レイ奪還のための極秘作戦に呼ばれることとなる。




