53 本当の自由
「ウェダスは伝承を見つけたのでしょう。そこに女神となったエルタナが、財宝と引き換えに魂替えを教えた。ただ、此度の帝国の動きに憤慨した創造神様がエルタナを捕らえ、その…、エルタナを捕らえた事であの惨状を生み出してしまったようで…」
言って良かったのかなぁ〜、と頭を掻いていたらエレナと目が合った。
「うん?どうかしたか?」
エレナは「話ちて良いって。エルタナの子孫がこれからどう生きて行かなければならないか、ちゃんと話ちた方が良いって」おや、創造神様から伝言を頂きましたか。
エレナの頭を撫でて「分かった」と、俺は答えた。
「創造神様はエルタナの所業を許さず、断罪して処分なされました。もう、神界にエルタナは居ません。そして、子孫達も罰を受ける事になりました」
皆が信じられないと言う顔で俺を見る。
「罰とはどう言った…?」フォルダスは気になるよな。青い顔をして俺を凝視している。
「喜んで悪事を働いていた者は罰を受けた。子孫である限り、この罰は有効らしいです。ただ、どこかで己の行いを反省し、真面目に過ごすと罰は受けないみたいです。多分罰とは、餓死していた事と関係が有るんじゃないかなぁ〜」
あれだけの人数が死んでいたんだから、多分そうなのだろう。
エレナが悲しそうだ。がんばってオニギリ作ったもんな。
◆◇◆◇◆◇
俺はマジックバッグから、皆にオニギリを渡した。
「これは何だ?薬か何かなのか?」国王に聞かれてアレン先生が「これはオニギリと言うものです。穀物なんですよ。先日ワシも貰って食ってみたところ、とても旨かったんですよ」嬉々として葉を剥いて食べ出した。
それを見て他の皆も食べ始めた。
フォルダスは「あ、コレ、助けて頂いた時に食べました。久しぶりのまともな食事で、非常に美味しかったです…」目に涙を浮かべて食べている。
俺はエレナを撫でながら「この子が作ったんです。少し前に帝国から逃げ出した兵士と知り合って、飢えに苦しんでいるのを知りました。エレナはその人達の為に、オニギリを作ったんですよ。だいぶ余っちゃいましたけど」
エレナもオニギリを食べながら俺を見た。本当は、たくさんの人に喜んで貰えると思ったんだよな。
「この子は…女神に直接、かなり酷い目に合わされているんです。それなのに、女神の子孫達の為にオニギリを用意しました。この子の気持ちを理解出来ますか?」
フォルダスは、オニギリを見つめて考えている。
「我らは本来、助け合って生きて行かねばならぬ。エルタナが考えていた事は、己の事だけだったと言う事だな?」国王はさすがだな。
俺は頷き「そうです。エルタナ同様の考えに染まったウェダスは、もう人間では無かった。欲にまみれた異形な物と、創造神様は言われました。だから俺はヤツの魂を滅殺した」
フォルダスは心痛な面持ちだ。
◆◇◆◇◆◇
「そして、ヤツの魂の燃えカスの様なモノが俺の口に入って、飲み込んでしまって…。そこから先はスズメも見ていた事なので」と、スズメに続きを投げた。
「えっ?私ですか?」スズメが自分を指さし焦っている。
ふふふ、働けよ。
俺のほくそ笑んだ顔を見て、諦めたようだ。
「はぁ~、分かりました。え〜〜、咳込んで苦しみ出したユリウスさんが、いきなり剣で自分の胸を刺したんです。あっと言う間で止める事も出来ず。申し訳ありません」スズメが項垂れた。
「ウェダスに体を乗っ取られそうになったんですよ。それで、自分で心臓を刺すしか無くて。しかし、その燃えカスもちゃんと消滅させたので、心配ありませんよ?」俺の言葉に全員が、大きな口を開け固まっている。
「えーっと、勇者と皇帝の魂は、創造神様によって別世界に送られたそうです。あっちで罰を受けているみたいです。ハイ…」
皆が固まったまま、動いてくれない。
俺が皆の顔を見回していると、復活したのはやはりアレン先生だった。
「あー、その傷を治したのはエレナちゃんか?」
「そうです。魔力をたくさん込めてくれて。俺は死にかけましたが、この通り元気ですよ」両手を広げて元気を主張する。
「話は以上ですかね?じゃあ俺達はこれで」と、部屋から出て行こうとすると待ったが掛かった。
◆◇◆◇◆◇
「コラッ!またそうやってすぐ出て行こうとするっ!お前部下とか国とか、どうするんだよ?ちゃんと決めてやらなきゃ可哀想だろ?」と、アレン先生に睨まれてしまった。
「もう俺の仕事じゃないです。王子もいるし、兄上も生きているんでしょ?そっちに任せますよ」
エレナを抱き上げ「お世話になりました。ありがとうございました」「おしぇわににゃりまちた」と、エレナも挨拶した。
「改めて言っておきます。俺達の事は放っておいて下さい。必要以上の接触は拒否しますので」誰かに止められる前に、俺達はサッサと城から出た。
途中で何人か見知った男達を見た気がしたが、俺は無視して通り過ぎた。
もう全部終わったんだ。これからは何にも囚われずに生きて行きたい。
兄上だけには連絡を取らないとな。絶対に怒られる…。
「おとーしゃん、これからどこに行くにょ?」エレナが話し掛けて来た事で、思考を止めた。
「どこでも良いぞ?エレナの行きたい所に行こう。どこが良い?」
「まじゅオコメ欲ちい。みちょとちょーゆも欲ちい。あと海行きちゃい。それと…」
「くく、分かった。全部行こうか。時間はたっぷりあるし、何かしなきゃいけない事も無いしな。本当の自由だぞ!」
「あ〜、しょれなんだけど、ちょーぢょーちんしゃまがお願いがあるってぇ〜」
「ハァ?何で?俺達に何させようとしてんの?創造神様〜〜〜!!」
俺は空に向かって大声で叫んだ。周りに人がいたが、構うもんかっ。
「ほんちょよね〜。わたちたち便利屋じゃにゃいにょよ?」エレナも何だかプリプリ怒っている。
「一先ずロッカに帰ろう。お世話になった人達に挨拶して、旅の準備をしようか」俺はエレナに笑い掛けた。
「うん、しょうちよう〜♪」エレナも笑顔で親指を立てる。
◆◇◆◇◆◇
ここから先も、創造神様のせいで大変な目に合うのだが、エレナと二人で乗り越えた。
楽しい事も悲しい事も、エレナと一緒に経験したよ。
それなりに良い人生だった。
〈イヤイヤ、ユリウス君、まだやって欲しい事があるからね?転生してもよろしくね?〉
=完=
拙い文章で読みづらかったと思いますが、お読み頂きありがとうございました。評価下さった方々もありがとうございました。




