↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さよなら殿下  作者: まとやまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

殿下の冒険①

めちゃくちゃ遅くなりました!更新再開します。

 あれから数回街へ降り、ギルドの依頼をこなした。

 街中での依頼はなかなか楽しかった。荷物運びや店の手伝い、掃除など王子であるレオニスがやったことのないものばかりだったのでどれも楽しくできた。


 依頼の報酬で魔術の補助魔道具も手に入れた。魔力補給ができる魔石の付いたバングルだ。

 普通は体内の魔力を使って魔術を使うが、このバングルをつける事によって魔石の魔力から魔術を使うことができる。本来は魔力が少ない者や長時間魔力を使用する時の補助具として使うものだ。

 購入した時は魔石が付いていなかったので、バングル自体は依頼報酬でギリギリ買えた。

 高級品になる魔石は王妃宮の執務部屋にあった何本かの万年筆の中から色の濃いものを何個か拝借した。ちょっとした強化魔術などはこれだけでなんとかなりそうだ。



 そして今日は(ブロンズ)ランクへ上がる為の、王都の外での依頼を受ける日だ。

 銅ランク以上の者と、とあったのでもちろんディルクに同行を依頼した。

 二つ返事で快諾してくれたディルクとはすっかり親友のような関係になった。ディルクの両親にも気に入られてなんだか家族になったような気分になりほんのりとした幸せを感じる。

「お前怪我に頓着しないから気をつけろよ」

 外には毒を持った魔獣や植物もあるんだからな。と釘を刺された。







 何回目かの依頼で荷運びの仕事をしたのだが、その時荷物が崩れる事故があったのだ。

 たまたま仕事の見学に来ていた依頼主の子息が巻き込まれそうになった為、咄嗟に庇い左足が崩れた荷物の下敷きになってしまったのだ。

 魔力の節約で防護魔術を解いていたので足首の骨にヒビが入る大怪我をしてしまったのだ。

 久々の痛みに涙目になるがその時は保護魔術やら強化魔術やらで足首を固定してやり過ごした。

 しかしギルドに依頼達成の報告に向かった時、ディルクに目敏く見つけられこっぴどく怒られた。

 治癒魔術も少し使えるが魔力消費が大きいので、王宮の自室にある上級ポーションを使うつもりだったのだ。それまで固定しておけば我慢できなくもないと思っての行動だったが、ディルクにとっては信じられない行動だったのだろう。

 麦穂亭に担ぎ込まれてソファに降ろされると足首に中級ポーションを滴るほどかけられた。


 黙々と治療をするディルク。その怒っている様子にレオニスはどう声をかけていいのかわからなかった。

 中級だと一回では治らないからとポーションの瓶を三本押し付けられる。

「時間あけて使えよ。念の為十日は安静にしてろ」

 静かに告げられレオニスは眉を下げる。

「ごめん」

「痛かったら痛いって言えよ!我慢できるってなんだよ。もう少し自分を大事にしろよ……」

 ディルクの怒った物言いが、だんだん萎んでいき最後には涙声になっていた。


 幼い頃からできなければ鞭で腕や背中を打たれる体罰が待っていた。自室のポーションはその治療の為に置いてあるもので、王妃の死後は使用していない。

 泣いたり叫んだりすればさらに鞭が飛んでくるのだ。我慢しなければもっと痛くなる。

 あの時の教育がトラウマとなり、痛くても我慢する癖がついてしまった。今でもその癖は抜けていない。


「王都近辺はそこまで脅威になる魔獣はいない。でも、それでも命の危険と隣り合わせだ。痛みは命の危機を教えてもくれる。我慢できるからって放置してるといずれ死ぬ」

 ディルクはレオニスの足首に包帯を巻きながら静かに語る。下を向いているので表情は見えないがいつもと違う真剣な声だ。

「自分を大事にしない奴はすぐに死ぬ。そんな奴を王都の外に出すわけにはいかない」

 顔をあげこちらを射抜くような瞳と言葉はどこまでも真剣だ。胸が締め付けられる感覚に泣きそうになり顔を顰めてしまう。

「二度とこんな真似すんな。誰かを救う前に、お前自身を守れ」

 包帯を巻き終えたその手がレオニスの手を力強く掴んだ。



「……頼むから、自分の痛みに鈍くならないでくれ」



 その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れ出した。

 レオニスの人生で、レオニスの為にここまで心配をしてくれた人物は誰一人いなかった。


 母は自分自身の為に。


 使用人達は主人である母の為に。


 全ては“王太子“となる御身の為に。


 レオニスが鞭で打たれ血を流そうがレオニス自身を心配した事など一度もなかった。

 母は自分の望みが潰えた時レオニスを解放するでもなく、共に死ぬことを望んだ。

 生きていてほしいと、幸せになれと、望まなかったのだ。


 その事実が胸に突き刺さったまま王太子になるしか価値がないと思っていたレオニス。

 それが、冷たいあの場所から抜け出した先で、初めて自分の為に叱って泣いてくれる人が出来たことに、嬉しさで胸が苦しくなる。



「……うん、わかったよ。ごめん……ごめん……ありがとう……」



 やがて女将が様子を見に来るまで、二人は子どものように泣き続けていた。






 ディルクの忠告を改めて胸に刻み準備を整えたレオニスは、いつものように庭師小屋で転移魔術陣を起動させる。

 いつもの見慣れたディルクの家。いつもと違うのは目の前にディルクがいることだ。

「おはよう。待ってたのか?」

「おう!今日の依頼は俺ん家からの依頼だからな」

 依頼用紙をひらりとさせながらにっかりと笑う。



 麦穂亭からの依頼は角兎だ。

 ディルクが冒険者をやっている理由の大半は家の依頼をこなす為である。

 牛や豚は飼育コストがかかりすぎる故の高級品で、貴族の食卓にしか並ばない。その為平民は魔獣の肉を食べるのだ。

 しかしこの魔獣を狩るには冒険者の資格が必要な為、街の食堂は冒険者を雇ったり家族の誰かが冒険者になって調達するのが常識となっている。麦穂亭は後者でディルクがその役割を担っていた。

 いつも家からの指名依頼を格安の報酬で受けているが、その分生活費を入れなくてもいいらしくかなり自由気ままに過ごしているので羨ましい限りだ。

 しかし王都近郊とはいえ魔獣狩りは危険と隣り合わせなので、その辺りは家族からの配慮もあるのだろう。


「でもいいのか?俺ん家の依頼報酬なんて昼飯代くらいにしかならないぞ?」

「来るたびにシチューご馳走になってるからそのお礼だよ。あと自分で狩った肉を食べてみたいのもあるけどね」


 麦穂亭の看板メニュー『角兎のブラウンシチュー』は本当に絶品なのだ。

 街に降りると必ず食べている。というか女将さんが必ず用意してくれている。毎回代金を払おうとするのだが女将さんもディルクも断固として受け取らない。

 お返しをと思いたまに店を手伝ったりもしているが結局賄いでシチューを出してくれているのでお返しになっていないと思っていたところだった。


「かーちゃんは懐に入れた人間には甘いからなあ」

 呆れながらも笑うディルクはそんな女将さんが好きなんだろう、優しい顔をしている。

 少しだけ羨ましい気持ちが湧き上がるが、以前のような強い胸の痛みは薄れてきたように感じる。

 心が痛む事なく穏やかに凪いでいるのは街で色々な人と関わるようになったおかげなのだろう。

 表情筋もほぐれたのか顔つきが穏やかになったと周りからも言われるようになり、街中で色んな人に声をかけられる事も増えた。しかし微笑んでいるとディルクから「表情をしまえ、誘拐されるぞ」と真剣に言われてしまったのは解せない。



 昼食時は王都の外にいるので女将さんが弁当を持たせてくれた。黒パンに肉や野菜を挟んだ簡単なものだが焼いた肉の香ばしい匂いが包みから漂ってきて食欲を刺激する。

 女将さんに礼を言い楽しみを胸に王都の外へと向かう事にした。



レオニスの微笑みは年上のお姉さんにドストライクなのかめちゃくちゃ逆ナンされてる。

そしてどこかの連れ込み宿に連れて行かれそうになっているのをディルクが救出するのが常である。

なお、レオニスは自分が危険な目に遭ってる事に気づいてないくらい天然で鈍感。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。