最終話 共に走る
最終話です。
桜琳の事故のことや、骨が綺麗にくっついてない理由を聞いて、みなほは桜琳らしいと思い抱きつきます。
そして、抱き合いながら、お互い好きだと伝えあい、みなほは恋人として付き合おうと告白します。。
桜琳の喜んでいる顔を見て、わたしは安心して息を吐く。
そして、桜琳がわたしを信頼してくれていることを、わたしも喜ぶ。
「桜琳の顔を見て安心したよ。足の傷跡を見て、細いって言うのは良くなかったかな」
「みなほがそう思ったなら、私もかまわない」
「ありがとう、桜琳」
わたしは桜琳にお礼を言う。
「私もみなほに足を見てもらってよかった。こんな傷だらけの足は私も見たくない」
桜琳は自分自身も足を見たくないって言うけど、手術と事故による傷だらけの足は確かに見たくない。
だから、夏でも足を隠すのは理解できる。
でも、わたしから見たら、桜琳の足は細くて羨ましい。
傷跡は目立つけど、それ以上に細いけど華奢でなく、筋肉で締まった細い足に憧れる。
「傷跡は確かに目立つし、痛々しいかもしれないけど、わたしはそれ以上に細く引き締まった足が好きだよ」
わたしは本心を桜琳に伝える。
「……ありがとう、みなほ」
桜琳もお礼をいって、目が潤んでいる。
「もう、桜琳目が潤んでるよ。ただ、この足を隠したい気持ちもわかるよ、傷だらけの足は見せたくないしね。
でも、わたしの足も見せられる足じゃないけどね」
わたしはこう言って、立ち上がると靴下を脱ぎ、太ももが見えるように、少しスカートを上げて桜琳に見せる。
「そんなことない、綺麗な足だよ……」
「そうかな、太い足だけどね。それに、綺麗な足だとしても、桜琳は……どう思う?」
桜琳の気持ちを知りたくて、わたしは綺麗な足について聞いてみた。
「綺麗な足は嫌い……」
桜琳は綺麗な足は嫌いと答える。
「そうだよね……」
桜琳が綺麗な足が嫌いなのは仕方がないか。
事故という想定外のことが起きたとはいえ、傷になるだけでなく、走れなくなってたかもしれないから。
「でも、今は走れるし、みなほに褒めてもらったから……」
「なら良かったかも。ところで、事故のことを……」
わたしは事故のことを聞こうとしたが、途中で言葉が途切れる。
「別に構わない。小学生の時、走ってたら車に轢かれた……でも、飛び出した私も悪い」
桜琳は事故のことを話すけど、小学生の時に車に轢かれたが、桜琳自身の飛び出しであったと答える。
わたしは何も言わないが、桜琳はさらに続ける。
「その時、両足を轢かれて、タイヤに巻き込まれて骨折をした。骨折は普通の治療で治ったから問題ない。
ただ、筋肉と神経も大きく傷ついて、走れなくなるかもと言われた」
桜琳が言うには、骨折自体はちゃんと治療すれば問題なかった。
ただ、筋肉と神経も傷ついて、こちらの方が問題となり、もしかしたら走れなくなったかもしれない。
しかし、無事に治療をして、今はちゃんと走ることができている。
「そうだったんだ。ちゃんと治ってよかったけど……骨がちゃんとくっついてない気がするかも……」
わたしは骨がまっすぐになってないので、そのことも恐る恐る聞いてみた。
「これは……動いたほうがすぐに走れると言われて、病院の廊下を走ったら……走りすぎたせい……」
桜琳が恥ずかしがるが、桜琳らしい理由だった。
「桜琳らしい理由だね」
わたしは笑いそうになったけど、我慢する。
「病院の先生にも怒られた……だから、ちょっとうまくくっついていない……」
桜琳は恥ずかしいのか、横を向いて、顔を赤くしている。
「本当に桜琳らしいね、ふふふ」
わたしは我慢していた笑いが漏れる。
「あ、ごめん」
わたしは謝るが、桜琳は
「別に構わない……私自身も笑うぐらいだから」
桜琳は言葉どおりに、にこりと笑う。
(笑った桜琳は……かわいいな……)
わたしはこう思うと、桜琳に抱きつく。
「みなほ?」
急に抱きつかれた桜琳は、さすがに戸惑っている。
「もう、桜琳はかわいいな。好きになる……ううん、もう好きになってるけどね」
わたしは笑いながら抱きついて、桜琳の頭を撫でる。
「私もみなほが好き……」
桜琳もわたしの背中に手をまわして、引き寄せる。
「これでお互い好き同士だね」
「うん……」
わたしと桜琳はしばらく抱き合う。
お互いの体温と鼓動、息づかいを感じる。
(このまま抱き合っていたいな……)
わたしはこう思うが、わたしと桜琳が恋人になったことを伝えるため、桜琳から離れて座り直す。
「桜琳、わたしたちこれからはちゃんと付き合おうね。友達じゃなくて……恋人として……」
わたしは恥ずかしながら恋人と言うけど、桜琳も顔を赤くしながら小さく頷いた。
「ところで桜琳、大会の時はどうやって足を隠すの?」
恋人として付き合おうと言った直後に聞くことじゃないけど、わたしは気になっていたので聞いてみた。
「大会の時は事故のケガの影響を理由にして、サポーターをしている」
なるほど、ケガの影響があることにしてサポーターで隠してるんだ。
「そうやって隠してるんだ。あと、寮だとお風呂とか、部活後のシャワーもあるよね?」
わたしはさらに聞くが、この際だから聞くことにする。
「お風呂は最後の方に1人で入ることが多い。部活の後のシャワーは、みんな気を利かせてくれる」
桜琳も答えるが、お風呂は最後の方に1人で入り、部活後のシャワーは他の子が気を利かせてくれていたんだ。
「そうなんだ、答えてくれてありがとう」
「別にいい……みなほが好きだし……恋人……になったから……」
桜琳の顔が真っ赤になる。
「桜琳、顔が真っ赤だよ、ははは」
その顔を見たわたしは、普段の桜琳と別人すぎて思わず笑う。
「笑わないで……恥ずかしいから……」
桜琳はそう言って、わたしに抱きつくと同時に、わたしを見上げる。
わたしと桜琳はお互い赤い顔をしながら、無言でじっと顔を見つめあう。
しばらくは見つめあったままだったが、互いの顔の距離が自然と縮まっていく。
そして、互いの唇の距離も無くなっていき、そのまま唇同士が触れ合ったのだった。
******
「桜琳、今日も走ろうね」
「今日もいつものペースでお願い、みなほ」
「わかった」
今日もわたしと桜琳は部活でいつものペースで走っている。
わたしと桜琳は公式なカップルになったけど、今までほとんど変わらない。
変わったと言えば、桜琳が少し明るくなったことかな。
そして、よく笑うようになった。
桜琳の笑顔にクラスのみんなは最初は驚いてたけど、今ではその笑顔が評判になっている。
だから、わたし以外の子も桜琳に話しかけるようになった。
クラスの子と話すのはいいけど……わたしはちょっと複雑。
思わず桜琳と話している子を、じっと見てちゃう。
見られる方もそれに気づいて、『とらないから大丈夫』と毎回笑われる。
もちろんわかってるけど、もしかしてわたしって実は独占欲があるのかな?
今まで独占欲があると思っていなかったけど、桜琳のかわいさをみんなに知られたからかもしれない。
正式に恋人になる前から、わたしと桜琳を応援してたから、わたしと桜琳に割って入ることはない。
そうだとしても、他の子と笑いながら話してるとなんか心配になる。
でも、今までぼっち気味だった桜琳が、みんなと楽しく話してて楽しそうだからいいかな。
「風が気持ちいいね」
すっかり秋の風になり、とても心地いい。
「わたしは風が好き……走っていることを感じられる。あと、みなほのことももちろん好き」
桜琳はわたしの後ろを走りながら、恥ずかしいことを言う。
(そんなこと言われたら、恥ずかしいって!)
わたしは思わずペダルを踏みこむ。
「みなほ、ペースが速い」
桜琳がこう言うけど
「少しペースアップだよ」
と言って誤魔化す。
桜琳もペースを上げて、すぐにわたしに追いつく。
桜琳が追いついてきたので、わたしも速度を落として並走する。
「大会に出るなら、ペースアップも大事」
桜琳はこう言うけど、わたしが恥ずかしがっていることには気づいていない。
「ねえ、桜琳、今度の休みに2人でどこか行かない?あ、今回は走るのはなしだよ」
わたしは前を見ながら、並走している桜琳をデートに誘う。
あと、先にこう言っておかないと、走ることになるので先に言っておく。
「だったら、秋桜が見たい」
桜琳は秋桜が見たいと答える。
わたしは花に興味がないけど、桜琳がこう言うならいいかな。
「なら秋桜を見に行こう。でも、どこで見ることができるの?」
わたしが尋ねると
「実はわたしもわからない」
と桜琳が答える。
「そ、そうなんだ。でも、調べれば出てくるよ、多分」
スマホで調べればきっと見つかるから、部活が終わったら調べよう。
「わたしはみなほが一緒なら……どこに行っても楽しい……」
「わたしもだよ、桜琳」
わたしは笑いながら桜琳の顔を見ると、桜琳も笑いながら走っている。
「ねぇ、桜琳、足を隠さないようになったね」
わたしに足を見せて以来、部活の時だけは桜琳は足を隠さないようになった。
「走る時は風を感じたいから、走る時だけ隠さない」
桜琳は力強く答える。
「そうだね、風が心地よくて、走りやすくなったね」
「走りやすい季節は好き、みなほと走るのはもっと好き……」
桜琳はまた恥ずかしいセリフを言うが、自分で言って自分で照れている。
(桜琳はかわいいな)
わたしは桜琳を見てニヤニヤする。
「わたしも、桜琳と一緒だから走れるよ。だから、これからもずっと一緒に走ろうね」
わたしはニヤニヤしながら桜琳に伝える。
桜琳も
「うん、わたしもみなほと走る、いつまでも一緒に」
と笑いながら答え、お互いに笑い合った。
そして、わたしと桜琳はこのまま並走して、同じペースで共に走って行くのだった。
お読みいただきありがとうございます。
付き合うようになっても、2人はあまり変わらないですが、変わらないのが2人らしい。
2人間はかわらなくても、桜琳はよく笑うようになり、クラスメイトとよく話すようにもなりました。
みなほはみんなと話すようになって嬉しい反面、嫉妬もある。
クラスメイトもみなほの嫉妬を見抜いて、取らないと言って笑う。
みなほも自分に意外と独占欲があって意外と思っています。
桜琳は走るのが生きがいだったのが、みなほに走るのは無しという条件でを受け入れてます。
みなほが走ることより少し上だとういことですが、走ることはまだまだ桜琳の中では上位です。
そして、桜琳は走る時だけ足を出すようになったのもみなほのおかげです。
共に走るは最初はあくまでもペーサーとランナーだったのが、最後は恋人として一緒に走るに変わっています。
ラブラブになるより、関係性の延長線なのがこの2人らしいと思います。
時間はかかりましたか、無事完結させることができました。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ツイッター
@shiizu17




