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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第三部:強欲青年は嗤って戦地を闊歩する
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第九章:第二次人森戦争・後編-13

久々に時間空いてしまいました、すみません。


仕事が忙しかったのと、軽い燃え尽き症候群になってしまっていました。



 

「ボスー? この魚っのー……これってさー? 食べられるっけ?」


「む? ああ、それは白子だな。少々独特の風味はあるが、適度に熱を加え臭みを抜けば実にクリーミーで旨味溢れる珍味になる。周囲の膜を丁寧に切り離して取り分けておいてくれ」


「りょーかーい」


「ね、ねぇちょっとボス……。この鶏肉のここに付いてるブヨブヨした気持ち悪いのなっ!? 後この管みたいなのもっ!?」


「そっちは脂肪の塊だな。臭みが強くて味が無いうえ食感が悪いから切り取って捨ててしまって構わん。それとその管は気管で、見た目は悪いが歯応えある。味付け次第では中々に美味いぞ」


「ぼ、ボス……。この貝全然口の場所分からないんですけど……」


「──ああ、その貝は確かに分かり辛いな。平らな面を上にして大体右下の方に比較的開け易い箇所があるから、そこにナイフを下に滑り込ます感じで貝柱を断ってくれ」


「なぁボス……。本当にこんな細かく量らなきゃダメなのかよぉ? もうちょい適当でも……」


「勿論だ。スパイスは量を間違えれば途端にバランスを崩して余計な風味や味になる。薬臭いもんを食べたくなければグラム単位程度はしっかり量れ」


「……なんだ、これは?」


 私は前線拠点に帰還後、諸々の報告を作戦本部に通達し終えてから部下達と共に夕食作りに取り掛かった。


 一応先にロリーナとグラッドが手を付けていてくれたのだが、今夜は少し盛大にやりたい気分だ。普段よりも品目と量を増し増しにし、全員で食べ疲れようと、普段参加しないヘリアーテ達を巻き込んで作り込んでいる。


 それに()()()()も労ってやらねばな。私からのささやかな褒美だ。


 ──と、そこまで事前に説明してから連れて来たにも関わらず、何故父上とカーラットは揃って私達を見て眉を(ひそ)めているんだ?


 む。もしや──


「だから言ったではないですか。今はまだ準備中なので来ても直ぐには食べられませんよ、と。なんなら一旦カーネリア防衛拠点に戻りますか?」


「あ、いやそうではなくてだなぁっ!? ……はぁ。何故お前はそう関心が無い事にはとことん疎くなるのだ?」


 そう言って呆れるように額に手を当てる父上だが、そんなもの当然だろう。


 ただでさえ私は他者よりも気にせねばならない事柄が多いのだ。関心の向かない事にまで一々気を向けていては私とて身が保たん。


「私が言いたいのはだなクラウン。英雄エルダールを討ち取った張本人が何を呑気に料理を拵える事に注力しているのか……? そう言っているのだっ!」


「……」


「お前はやった。やってのけた。あの生ける伝説「森精の弓矢英雄」を討ち取ったのだぞっ!? 実父の私ですら耳を疑うような大戦果だっ!! 本来ならば陛下の御前にて直接報せ、栄華を賜るに相応しい働きだっ!! にも関わらずお前は何故……」


 ……はあ。そんなもの決まっているだろう。


「──エルダール討伐など、ただの通過点に過ぎません」


「なっ!?」


「確かにエルダールの討伐は難業でした。戦場での情報操作を駆使し、幾つもの工作と豪運を経て漸く成し遂げるに至った私の集大成、その結果です」


「な、ならば──」


「ですが」


 まあ、とはいえエルダールの討伐は事実上、戦勝をかなり早める……というか、勝利は決定的になっただろう。


 彼の死は双方の士気に圧倒的な差を生ませ、やり方次第では今後のアールヴの各村落や街を無血開城で陥落させる事だって難しくはない。


 早ければ半月と経たずこの戦争は我が国が勝利する形で終戦する。まさに想定通りだ。


 ……だが──


「……ですが所詮。エルダールはアールヴの一兵士であり、戦勝のトロフィーではありません。彼を討ち取ったからと、我々が戦争に勝ったわけではないのです。逸ってはいけません」


「そ、それはそうだが……。かの英雄討伐を聞き、アールヴの女皇帝はそれでも諦めぬと言うのか? これから行われる〝降伏勧告〟に、応じぬと言うのか?」


「……ユーリがそんなまともな奴なら、我々はそもそも戦争なんてしていませんよ」


 あの女の戦争の動機は世間に知られているような真っ当なものではない。


 もっとワガママで、もっと自己中心的で利己的、もっともっと欲深くそして……。


 ……。


「……クラウン?」


「ああいえ。……兎に角です。この戦争の決定打を打ち込めたとはいえ、わざわざ陛下や他貴族達の時間を使ってまで栄華を賜る儀式をやる意味は薄いですよ。士気向上もエルダール討伐を全軍に報せるだけで充分です」


「しかし……」


「陛下や珠玉七貴族の面々が「強制はしない」とそこまで(うるさ)く言って来ないのは、それを彼等も承知しているからでしょう? 今慌てて賜らずとも、終戦後にしっかりキャッツ家復権に繋がる正当な評価が下されれば問題無い筈です」


「う、うむ……」


「それにアールヴの強者はエルダールだけではありませんよ? めぼしい者はもう居ませんが、あの底知れない女皇帝ユーリの事です。下手をすれば英雄や軍団長で無いにしろまだ強者が居る可能性も捨て切れない……。油断しては足元を掬われますよ?」


「う……。そう、だな……」


 とはいえ私と姉さんが前線を張り、更に南の監視砦で待機中のアンブロイド伯傘下の人間達による奇襲があればそう難しい事はない。


 後は私個人の表には出せない思惑と計画が滞りなく完遂されるだけ……。その下準備も先程最終段階に入り、タイミングを合わせながら微調整を繰り返していけばこれも上手く運べる。


 懸念があるとすれば未だに動向の知れないカリナンの存在だけだが、この戦況をひっくり返す事は()しもの奴でも不可能に近い筈。


 常に気を配りながらにはなるが……。エルダールの英雄の能力を得た今の私ならば造作もな──いや、先程私自身で言ったばかりではないか。「油断しては足元を掬われる」と……。


 いかん。エルダールを討ち取った高揚感と達成感、そして彼から得たスキルや経験から来る全能感でどうしても気が緩みそうになってしまう。これでは人の事を言えん。自戒せねばな。


 まったく。つくづく己の未熟さ恥入るばかりだ……。


 ──まぁ、それはいいとして。


「それより父上。帰らないのなら夕食作り手伝って下さいよ。まだまだ作り足りないのですから」


「わ、私もっ!?」


「そうですよ。野菜をざく切りにしてくれるだけで良いんで、なるべく手早くお願いします」


 働かざる者食うべからず……まあ父上は別に働いていないというわけではないが、前線部隊全員とプラスで十二人分を作らねばならないからな。人手はあるに越した事はない。


「い、いやしかしだなぁ……。なあカーラット?」


「ふふ。良いではありませんかたまには。旦那様は器用ですし、そう梃子摺(てこず)る事も無いでしょう。やり方は私が御教えしますので」


「む、むう……。そう言うならば」


 カーラットに諭され渋々と言いた気にまな板の前で包丁を手に取り野菜を切り始めた父上。


 その手際は手慣れてるとは言えないものの、横からのカーラットの意見を素直に、そして正確に聞き入れ実行し、瞬く間に手際が良くなっていく。


 父上は昔からそう、基礎的な技術の習熟に関しては異様に早い人だ。


 私が幼少の頃、暇を持て余して様々な娯楽や芸術、文化に手当たり次第に手を付けていた際の事。


 初めての息子である私と何とかコミュニケーションを取ろうと躍起になっていた父上は、私と一緒になって色々と挑戦していた。


 すると父上は最初に始めていた私の事をあっという間に追い越し、基礎的、基本的な知識や技術をいとも容易く身に付けてみせたのだ。


 流石にそのままプロ級の腕前になれる程に化け物じみてはいなかったが、それでも、今と変わらぬ自我と精神を持ち合わせていた私ですらその習熟速度には驚かされたし、お陰で実の親をしっかりと尊敬し敬愛する事が出来た。


 もしそういったキッカケが無かったならば、今頃私は実の父を見下し、ここまで良好な関係にはなれなかっただろう。私の父上がこの人で良かったとつくづく思う。


「……む。所でクラウンよ。これだけの食材を使って何を作るのだ?」


 最早包丁を扱う手を止めぬまま視線をコチラに寄越して訊いてくる父上。本当、手慣れるのが異様に早いな。


 サポートを口にしていたカーラットなど早くも自分の仕事を見付けて勝手に作業している。私でもそんな早く身に付けられはしないんだがな……。


 まさか英雄の能力を得て直ぐに二度も敗北感を味わうハメになるとは……。


「む? どうした?」


「ああいえ何でも……。今日はカレ──スパイス等の様々な香辛料をふんだんに使った煮込み料理です」


「ほう。戦場で食べるにしては中々に贅沢なものだな」


「ただの煮込み料理というわけではありませんよ。野菜、魚介、鶏、豚、牛の五種をそれぞれメインとし、更に甘口・中辛・辛口の三種味を全てに用意するつもりです。勿論、種類ごとにスパイスの調合を変えているので風味も全く違いますよ」


「なっ!? そ、そんなに作るのかっ!?」


「それだけではありません。オリーブを搾って作られた油に様々な具材を入れ煮詰めた〝アヒージョ〟を浅い大鍋で作りますし、口直しの小鉢も複数種……。それから──」


「ああもう分かった分かったっ!! というか毎日こんな量を作っているのかっ!?」


「いえいえまさか。陛下からの栄華云々は別として、英雄を討ち取った事実は私としても大業です。なのでイヤラしくない程度に盛大にやりたいな、と……」


 まあ、実はエルダールの騙し討ちから西側広域砦前の拠点全制覇でかなり体力と魔力を使ってしまったからな。今回の料理で可能な限り回復したいというのが本音だ。


 一応何も食べずとも一月程は問題無いと感覚で理解出来るのだが、節制しなければならない状況でも無いのにわざわざ我慢する意味は無いし、何より(暴食)が食欲を抑えるなどあり得ん。


「──ふむ。成る程な。ならば私としても祝ってやらねばなっ! 大した事は出来ぬだろうが、私なりに祝わせてもらうとしようっ! 何か要望はあるか?」


「あ。それなら闇琅玕(やみろうかん)をこのまま私に──」


「それはダメだまだ早い」


 ピシャリと、先程まで笑みを浮かべていた顔が真顔になるのと同時に平坦な声音で謝絶されてしまった。


「……ダメですかね」


「ダメだ。アレはそう易々と振るえる代物ではない」


「自画自賛ではありますが、今の私にならば扱えるかとも思うのですが?」


 実際エルダールを討ち取った際には短い間ではあるが問題無く扱えた。一体何をそんなに警戒して……。


「……お前はアレを、単なる〝闇属性の大鎌〟と思っているのか?」


「いえ、それは……」


 闇琅玕(やみろうかん)は尋常ではない……。それくらいは勿論理解している。


 握った瞬間から私の中に何やら得体の知れない何か……。敢えて形容するなら〝情報〟が流れ込んで来るような武器が普通や逸品程度の物である筈がない。


 《解析鑑定》を使ってみても──




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アイテム名:闇琅玕(やみろうかん)


 種別:大鎌


 分類:繝ッ繝シ繝ォ繝峨い繧、繝?Β


 スキル:隗」譫蝉ク榊庄。讓ゥ髯千┌縺。隱崎ュ倅ク崎?


 希少価値:萓。蛟、謠帷ョ嶺ク榊庄閭ス


 概要:豺ア豺オ縺ッ荳也阜縺ョ荳埼??ケ溘?よュ」縺輔l縺ャ逅?r辣ョ隧ー繧√@蠎輔?謇峨?髢峨§縲?嵯縺ッ豌ク荵?↓謗帙¢繧峨l繧薙?る幕縺代◆縺上?隴倥l縲ょコ輔↓豐医∩縺嶺ク也阜縺ョ荳埼???∝?縺ョ險医j遏・繧後〓荳肴ュ」縺ェ繧狗悄螳溘?陬丞?繧偵?

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 文字化けして何が書かれているのか一切解らん。こんな事は初めてだ。


 これは最早《解析鑑定》の熟練度云々の問題ではない。何やら根本的にアクセスのしかたが間違っているという事……。つまりは何一つ解らなかったという結果だ。 


 明らかに異常としか言えないあの大鎌。当然そんなものを決して軽んじているワケではない。ワケではないのだが……。


「しかし父上。父上が操れているという事は、少なくともある程度制御可能な手段があるのでしょう?」


 そう。父上は使えている。


 何の問題もなく何十年も専用武器として扱っているのだ。あの闇琅玕(やみろうかん)を充分に扱えるようになる何かがある筈だ。


「……果たして私も、アレを扱えているのか……」


 ……何?


「それは、どういう意味です?」


「ああいや……。確かに、キャッツ家の歴代当主は闇琅玕(やみろうかん)を代々引き継ぎ操ってきた。あの忌まわしい「強欲の魔王」だったビルも、一度は手にした過去を待つ。操るだけならば、そう、難しくはない」


「それならば──」


「だがなっ!」


 父上は包丁の手を止めると振り返り、私の両肩に手を置きながら目を真っ直ぐに見つめてくる。


「父上?」


「……アレを軽んじるのだけはやめなさい。特にお前は」


「私は?」


 私も父上に合わせて手を止め、その真摯な意志を読み取る為に同じように見詰め返す。


「ああそうだ。……ここ数年、闇琅玕(やみろうかん)が妙な反応を見せている。今まで私が持っていてもそんな反応は無かったし、父や祖父、一族に関連する書物にも見られなかった。何やら異常なのだ。最近のアレは」


「成る程……」


「だからクラウンよ。いずれお前に継承するにせよ、もう少し調べる時間をくれ。私なりに仔細をもっと詰め、改めて闇琅玕(やみろうかん)がどんな武器なのか、はたまた単なる武器ではないのか……。それを知り尽くした上でお前に渡したいのだ」


「……そうですか」


 私は父上の手を優しく退かしてから改めて包丁を手に取り、目の前の豚肉の肩ロース磨きを再開する。


「ならそれで構いませんよ」


「む。よ、良いのか?」


「ええ。別に渡さないというワケではないのでしょう? ならば問題ありませんよ。私としては別段急いでるワケではありませんし、武器には困っていません。問題無いですよ」


「だ、だがお前。私から闇琅玕(やみろうかん)を借りに来た際に熱望していたではないかっ! だからこそ私は……」


「そうですね。ですが父上が私の為にやれる事をして下さるというならば、私に止める理由はありません。私は基本的にワガママで〝強欲〟ですが、より大きく多くの利が得られるならば時には耐え、待つ事を選びますよ」


「そ、うか……。お前がそう言うのであれば、良かった」


 安心したように一息吐いた父上は改めてまな板に向き直ると包丁を手に取り、野菜の処理を再開した。


 本音を言えば、手に入れられるなら直ぐにでも欲しい気持ちはあるのだがな。


 父上がこうも心配し懸念しているのだ。いつも心配ばかり掛けてしまっているし、先に言ったように特段急いでいるわけでもない。


 ならばここは父上に任せて闇琅玕(やみろうかん)の事をしっかり洗って貰おう。その方が時間や手間を考えた分効率的だ。


「しかしお前。余り自分で〝強欲〟などと少し趣味が良くないぞ? ただでさえお前の要らぬ嫌疑は晴れ切っておらんし、キャッツ家には浅からぬ因縁がある。軽々に口にするのは感心せんな」


「……そうですね。以後気を付けます」


 ……このまま秘密にしておくのは、恐らく無理だろう。


 私がこの国で活躍し、功績を上げ続ける過程でいつしか何らかの形で「強欲の魔王(それ)」は浮き彫りになっていく。避けられない未来だ。


 故にそれまでに私はこの国の中核へと自身を食い込ませ、私無しでは成立しない体制にしなければならない。


 仮に私が魔王だと明かされても見逃され、不承不承にでも納得させるような、そんな地位と権力を必ず手に入れなければ……。


 そうしなければきっと、私や私の身内に幸せなど訪れはしないのだから。


「──む? アレは……」


 ふと、父上が手元から顔を上げ少し遠方へと視線を向ける。


「なぁクラウン。あの一団は知っている者達か?」


 父上が見つけた一団。それは十二人からなる軽鎧を身に付けた少年少女と、その後ろに続く何処か物々しい実践向き機能優先の装備で全身を固めた成人からなる二十人近い集団。


「ん。ああ、そうですね。ある意味私にとっては、私に次いで成果を上げた部下達です。……後ろの連中は知りませんが」


 いや。厳密には知らないわけではない。


 彼等が何処の誰なのかは理解している。何せ十二名の部下達を私が彼等の元へやったのだからな。


 だが。何故彼等が一緒にここに来ているのかは知らん。


「ぼ、ボスぅ〜」


「つ、疲れましたぁぁぁ……」


 十二名の部下の内、ヘリアーテの部下であるギデオンとホーリーが項垂(うなだ)れながら露骨に大変だった事を訴えて来る。


 ふむ、まあ、実際彼等は役に立ってくれたからな。存分にその疲れに報いてやろう。


「お疲れ様。報告を受けている。私の満足いく成果を上げてくれたようだな。感謝する」


「ま、マジっスかっ!?」


「や、やったぁぁぁ……」


 私からの言葉を受け、彼等は思い思いに歓喜を発露し、互いを讃え合う。


 一応これが初めての任務、そしてその成功という事になる。達成感もひとしおだろうな。差し当たりまずは──


「さぁ皆んな。今とびきり美味い料理を拵えているから、それまでは各々の好きなだけ休んでいなさい。それと何か食べたい物の要望があるなら今の内に言いなさい。特別に作ってやろう」


「「「ま、マジっすかっ!?」」」


「ああ。だが余り凝ったものは──」


「おいっ!!」


 ……努めて無視していたのだがな。


「……何か?」


「何か? じゃねぇっ!! そのメシ、俺等にも食わせてくれんだろうなっ!?」


「……」


 この傍若無人な物言いをする輩は先程部下達の後ろに付いて来ていた成人の集団──その頭目らしき大柄で何処か小汚い男である。


 まったく。折角の貴重な部下達との交流に水を差しおってからに……。


「この料理は、私と共に苦難を乗り越えた前線拠点の面々と、私の命令を忠実に熟した部下達の為に拵えているもの。貴方達の為に作ってはいません」


「あ゛ぁっ!? んだケチくせェなァっ! こんだけ作ってんだからちぃと分けてくれても良いじゃねェかよえぇっ!?」


「私の部下達に勝手に付いて来た連中に分けてやる分など無いと言っているんです。丁寧に断っている内に唯々諾々と従って下さい」


「……あ゛ぁ?」


 獣のように唸った頭目は私の眼前までズカズカと迫ると、何を思ったのか感情に任せて拳を手近な卓に叩き落とし、卓を半壊させながら卓上の切り終えた野菜を地面へと落とす。


 父上が切った野菜を、だ。


「良いから大人しく言う事聞いとけや、あぁ? こちとらテメェの部下っつうあのクソガキ共に仕事邪魔されてイラついてんだよ……。今謝ってメシ寄越すってんなら許してやらんでも──」


「そうか。そんなにメシが食いたいか」


「あ゛ぁ?」


「なら、存分に食わせてやろう。有り難く思え」


 包丁をまな板へ置いた後、私は頭目の背後に回り込んでから奴の後頭部を鷲掴み、野菜が散らばった地面へとその顔面を叩き付ける。


「ごがァっ!?」


「ほうら。父上が丹精込めて切ってくれた野菜だ。落としたからと捨ててしまうのは勿体無いからな。特別に味あわせてやる感謝しろ」


 更に私は頭目の顔面を地面へと強く押し付け、口元にある土塗れの野菜を無理矢理口に押し込んでいく。ふむ。中々に力加減が難しい。


「が、がごぼぁッッ!?」


「て、テメェっ!!」


「リーダーを離しやが──」


「ヘリアーテ、グラッド、ロセッティ、ディズレー。彼等に礼儀と行儀を教えてやりなさい。やり方は任せる。ああ一応、殺さない程度にな」


 私の号令で趨勢(すうせい)を見守っていた四人は頭目に駆け付けようとした彼の部下達の前へ並び、睥睨(へいげい)してから揃って笑う。


「骨折った数で勝負しなーい?」


「中々物騒ね……。ま。やるけど」


「く、砕いた場合はどうカウントします?」


「そんなちゃんとルール決めなくて良いだろ……。命乞いしたら終わりくらいで良いんじゃねぇか?」


「「けってーい」」


「が、頑張るっ!」


 ふっふっふっ。お茶目で愛い部下達だ。


「が、ごが……」


「おっと。こっちも集中しなければな。ほらほら、まだ落ちてしまった野菜が沢山あるぞー。特別に全部ご馳走様してやるからたんと食べなさい。ふふふふ……」


「……育て方、少し間違えたかな……私」

文字化け、個人的に好きなんですよね。狂気が視認出来て何とも言えない魅力を感じます。


因みにこの文字化けはそういったサイトで制作したのですが、逆引きしても多分内容は解析し切れないと思いますので悪しからず。


まあ、全部解析出来たとしても意味は理解出来ないものではありますがね。

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― 新着の感想 ―
クラウン、もうちょっと加減しないとジェイドさんの寿命縮むぞ。
[良い点] 翻訳機で失礼します 現時点で主人公が魔王であることが明らかになっても、王国が武力で主人公と家族を制圧することは不可能だと思いますが、まだ世界中を相手にするほどではないので気をつけているので…
[良い点] ほのぼの()回いいぞー [一言] 文字化けいいですよね・・・あの手のサイトは化けさせたのをそのまま突っ込んでも戻せない時があって、、、
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