第九章:第二次人森戦争・後編-1
またもや全没で一から書き直していました……。
本当は二日目からの流れを何話か挟むつもりだったのですが、全部カット。すっ飛ばしました。
理由としては色々とありますが、大部分は単に「間延び」してしまうからですね。
後付け後出しのようになってしまうから、と事前に色々と情報を出してその後の展開を読者に納得させるやり方を取っていたのですが、
前編が予定以上に長くなってしまった事と情報の散漫化を避けるために敢えて全部無くして一週間経過、一気にアールヴへ侵攻させる流れに変えたわけです。
勿論、その一週間での出来事は侵攻中の要所要所に挟み込むつもりなのでご心配無く。
戦争という舞台は今までの流れとは違った書き方をしなければならないので色々と試行錯誤、四苦八苦しながら模索して書いています。
どうか暖かい目で見守って下さい。
「『がぁ……ぁぁ……』」
「……次」
怒涛の開戦初日から一週間が経過した。
あの日以降、私や姉さんが前線を走り回った甲斐あって戦線を順調に押し上げる事に成功。
時折現れるまだ参戦していなかった副軍団長や遊撃部隊等が立ち塞がりはしたが、開戦直後から比べ軍団長二人分の力とスキルを得た今の私の敵でない。
「『な、何故貴様がその武器を──がぼっ!?』」
「『……次』」
戦果としても上々。
新たに手に入れたノルドールの魂が宿った爆撃属性の装具「聖装具アイゼンガルド」をノーマンに協力してもらい名付けして専用武器化を終えている。
ウーマンヤールから奪った溶岩属性の一対の手斧「熔斧ファラスリム」とテレリの使っていた音響属性が染み付いた糸とそれを収納する手甲「聖糸リンダール」に関しては先送り──というか、ノーマンが忙しそうにしていた為後回しにした。
アレはアレで時間が掛かるからな。ワガママは言えん。
姉さんと父上からも贈り物があり、姉さんからは妙に派手な鎧と豪奢な大盾、それと複雑な意匠が凝らされた鎖鎌に身の丈はある騎槍、と大盤振る舞い。
父上からは一対の弩が届いたが、これには何とも珍しい《陰影魔法》による陰影属性が染み付いていた。
この一日で幾つもの武器が一気に手に入り、思わずテンションが上がった私は再びノーマンに全て預けに行ったのだが──
『状況考えろバカ野郎ッ!! 俺達は直すんであって造る為にここ来てんじゃねぇんだよッ!!』
と、怒られてしまった。
最初の三点に関しては改良などはせずに専用武器化と名付けだけを行い、アイゼンガルドだけが姿形を変えただったので労力は掛かっていなかったのだが、言われてみればそれもそう。
ノーマンを含め、彼等ドワーフ族はあくまで我が国の後方支援を旨とした援軍であり、その仕事は主に鎧や武器、服飾の修理や修繕だ。
この期に及んで武器や鎧を改造して貰う、というのは今現在管轄外ともいえるだろう。
三点の武器の名付けは私がノーマンと親しかったが故の所謂サービス。現在出来得る限りの特権だったという事だ。
何ともケチ臭い話ではあるが、まああの時預けたとしてこの短期間で新たな専用武器として完成させるのは厳しいのも事実。ここはあの三点で我慢する事とした。
「『ぐ、ぐる、じぃ……が……』」
「『……次』」
もう一つ特記するとすれば、この一週間前線を走り回った事で討ち取った敵兵の数だろう。
この戦時中、私と姉さんは不謹慎ながら討ち倒した敵兵の数と質で点数を競い合い、負けた方が相手の要求を聞くという競争をしている。
正直なところ英雄となった姉さんに今の私では勝つのは難しいだろう。
実際姉さんは初日で二千人以上を仕留めているし、二日目、三日目も初日ほどではないにしろ中々の人数を捌いている。
一方私は初日から一週間の間で六百人強……。個人の戦果としては上々ではあるが姉さんの足元にも及ばない。このままでは敗北は必至だ。
……まあ、私では姉さんに人数では勝てない事などはなから分かり切っている事。
ならば私は数ではなく質で勝負するまで。最終的には姉さんを言い負かせられさえすれば問題はない。
「『ごがっ……』」
「次──」
「クラウンっ」
と、考え事をしながら武器を振り回しつていると、背後から制止を促すように私の名が呼ばれ、声の方へと意識を向ける。
「なんだ。戦闘中だぞ」
「いや……。もう終わってるよ」
「ん?」
ふと顔を上げてみれば、自身の周りには既に立っている兵士はおらず、大半が様々な形の傷を負いながら絶命し地に伏し、少数が武器を投げ捨て怯えたように地べたに頭を抱えて蹲っている。
どうやら本当にこの拠点での戦闘は終わったようだ。
「……ふぅ。ん……」
顔を上げた事で頬に付着していた返り血が口元まで垂れ、唇を伝う。反射的にそれを舐め取ると口内に血の味が広がり、生々しい風味を堪能した。
相手にならないからと考え事をしながら戦闘をするものではないな。返り血を無駄に浴び過ぎて血腥い……。
それに中には自分の思いもよらないスキルを有する敵だって居る可能性はゼロではない。いくら事前にアールヴの大臣達から敵情を聞き出しているとはいえ油断は大敵だろう。
そう反省し、深呼吸を一つ挟んでから私は声の主へと振りった。
するとそこには見覚えのある辛気臭い顔の奴が立っており、血塗れのわたしを複雑な感情の籠った目で睥睨してくる。
「……後はいつも通り処理しなさい。私は現状報告をする」
この数日間、基本的にはこれの繰り返しだ。
姉さん率いる剣術団一番隊と、実質私が指揮を執っている二番隊で敵拠点を攻略し、戦線を押し上げる……。
時折入る救援要請に駆け付けたり、怪我人が大量に出てしまった際に《空間魔法》のテレポーテーションと《回復魔法》でサポートをしに行った時もあったが、概ねこんな感じだ。
私が苦戦するようなアールヴの将は約半数が初日に処理済みである為、実に事をスムーズに運べている。
仮に次私が苦戦ないし本腰を入れた戦闘をするとすればアールヴ国内になるだろう。奴等にとっても本番はこんな平原などではなく、ホームである森林内の筈だからな。
その点についても、参謀総長やモンドベルク公に提言してみなくてはならないな……。
「……」
「……何を突っ立っているんだ」
私の指示は聞こえていた筈なんだがな。何故そんな沈痛な面持ちで死体を眺めてる?
「……まさか今更〝可哀想〟などと宣うつもりじゃ無いだろうな?」
「それ、は……」
まったく……。これだから連れて来たくなかったんだ。
「お前がどう思おうが勝手だがな。自らの意思で私に追従すると言った以上は最低限の仕事はして貰う。それすら出来んようなら今すぐ放り出すぞ」
「──っ!! ……わかっている」
「ならばチンタラするな。ただでさえこの戦争に於いてお前は〝無能〟なんだ。私を煩せるんじゃない」
「……」
「聞いているかっ? ヴァイスっ」
「……ああ」
「ふん」
私はヴァイスと擦れ違い、味方の回復を担当するロリーナの元へ足を進める。
それにしても……はぁ……。まったくもって気分が悪い。
まるで友人知人でも亡くしたような顔をしおってからに。見ているこっちまで気分を損ねる。
もう一層の事、無理矢理奴を後方拠点にでも置いてくるか? ……いや、しかしそれでは私に対する周りの印象は若干悪くなる。
ここはやはり我慢して──
「お疲れ様です。クラウンさん」
「ん。ああ。君の方もお疲れ様。ロリーナ」
色々と悩んでいる間にロリーナの元へ辿り着く。
軽く辺りを見回した感じでは最大限兵士達を死なせずに済んだらしい。まあ、流石に即死級の負傷者は無理だったようだが、それでも重畳と言えよう。
「……また揉めていたんですか?」
「ん? なんだ、解るのか?」
「はい。制圧完了したにしては少々不満気だな、と……」
「ふふふ。よく見てくれている。……奴、また死体に対して辛気臭い表情しおってな。いい加減煩わしくてならん」
ここ数日間で幾度か同じ経験をしている筈なんだがな。
感傷的になるのは構わんが多少は慣れて欲しいものだ。自身で手を下したわけでもあるまいに……。
「所で、何故彼等が私達にくっ付いて来る事になったんですか?」
「む? 言っていなかったか?」
基本的にはロリーナにも大体の情報を共有していたと思ったんだがな。無意識に私が奴の話をしたがらなかっただけか?
「詳しくは……。察しようとも考えたのですが、やはり気になってしまって……」
「いや構わないよ。……そこまで深い事情じゃない。ただ奴のワガママが上手い具合にハマってしまっただけだ。私が割を食う形でな──」
それは開戦の二日目。部下達の容態や自陣の戦況の確認を行う為に後衛拠点砦から本陣へと移動し、作戦会議を終えた直後の事だ。
帷幄から出た私を待っていたロリーナが、見知った顔の男と会話をしているのが目に入った。
『……ヴァイス』
思わず眉を顰めた私を発見し、彼が私に歩み寄る。
『お疲れ様、クラウン。いや、今は二番隊隊長補佐殿……かな?』
冗談ぽく微笑するヴァイスだが、その表情は浮かない。
色々と疲弊しているようだが、肉体的というよりも精神的に憔悴しているようで、昨夜の私とは比較にならない程に濃く、目の下に隈が浮いている。
『……ロリーナは先に準備をしに行ってくれるか? 私はコイツと話がある』
『はい。わかりました』
素直に頷いてくれたロリーナは言葉通り私達から離れて行き、私達の帷幄がある方へと歩いて行く。
『……で? 私に何の用だ? どうせロクな事じゃないだろう?』
ひしひしと嫌な予感を感じる。
何せこの戦時中に於いて、ヴァイスほど役に立たない奴も居ないのだからな。そんな奴が私にわざわざ会いに来る……。面倒事以外の何ものでもあるまい。
『単刀直入に言うよ。……僕を君に、同行させて欲──』
『却下だ』
ほれ見た事か。よりにもよって最悪も最悪だ。
『い、一刀両断だな……。ワケぐらい聞いてくれても……』
『どうせお前の事だ。私にとって聴くに耐えん理由に違いない。聴くだけストレスの元だ』
然しもの私とて戦争という大舞台では神経を擦り減らすんだ。誰が好き好んで悪化されに行く事がある。
『また随分と酷い物言いで……。ならストレス覚悟で聞いてくれ』
『おい待て勝手に──』
……そうして聞かされたのは、何ともヴァイスらしく、そして予想通り聴くに耐えないもの。
人を殺したくない彼は基本的には戦時中に於いて殆ど後方支援をしていたわけだが、戦線が昨日よりも前進した事で彼が配属された部隊での戦闘回数が減り、必然的にその部隊での敵味方の死傷者も殆ど出なくなった。
そこに戦況の有利や学生という身分も相まり彼の所属部隊での学生兵士達はほぼお役御免の状態となり、この後衛拠点での待機が命じられたという。
しかし博愛主義者で無駄な正義感を持つヴァイスとしては、そこに不満を覚えた。
彼は人を殺さないし、殺せない。
だが身に付けている才能や技術は人並み以上な事もあって全く役に立たないわけではなく、殺さないなら殺さないなりに味方を守り、助け、救い。
敵を倒し、制圧し、一時的に戦闘不能にする事で「殺さなくても役に立てる」と誤認した彼は欲をかいているのだ。
前線に立てばより多くの味方を守り、助け、救う事が出来る。
前線に立てばより多くの敵を倒し、制圧し、一時的に戦闘不能にする事で敵の命すら喪わさせずに済む、と……。
『僕の実力は君も知っている筈だクラウン。僕だってこの数ヶ月を無駄に過ごしたわけじゃないっ!! きっと前線に出たとしても役に立てる筈だっ!!』
……本当に、コイツは何も分かっていない。
『……お前。私が以前に言った事を覚えているか?』
『え……。い、色々と言われてるからどれの事だか……』
『人を救うなら救った後の責任を取れ、と言った事だ。忘れたか?』
『あ、ああそれか。勿論覚えているよ。確かあの時は──』
『取れるのか? 敵を生かす責任が、お前に』
『……え?』
殺したくないと思うのも言うのも自由だ。誰しも覚悟には時間が掛かるし、躊躇も苦悩もして当然。そんな覚悟、持たないに越した事など無いのは当たり前だ。
だが敵を殺さないという事は、敵を殺すより圧倒的に責任の重さが違う。
『も、勿論だよ。僕が助けたんだ。なら僕が責任を負うのは当然だ』
『……その助けた敵が、お前が守りたかった味方を殺してもか?』
『──っ!?』
ヴァイスは私の言葉に目を丸くする。本当に相変わらず、自分の事に甘く現実が見えていないな、この偽善者は。
『まさか自分が救ったら敵が恩を感じてくれるとでも思っているのか? 恩を感じて味方にでもなってくれると? そうでなくとも戦意喪失してくれるとでも思っているのか?』
『そ、れは……』
思って……いたんだろうなこの阿呆は。
清々しいぐらいに純粋で虫唾が走る。
『ヴァイス。それはお前の都合の良い〝妄想〟だ。そして同時に、敵に対する侮蔑以外の何物でもない』
『侮……蔑……』
『敵はお前のような吐き気がする甘ちゃんじゃない。私達のように命を賭して国を守ると決意し、その決意をもって人を殺す事を真の意味で覚悟した比類なき猛者達だ。そんな彼等がお前程度の甘さに救われて、簡単にその決意と覚悟を捨てると思うか?』
『……』
『……お前のその考えは一見美徳だ。だがお前のように大した覚悟も決意も……ましてや責任すらまともに取れん奴の都合の良い甘い妄想を、それ以上の信念で武器を振う彼等に押し付けるのはやめろ。その甘さは、味方を殺すぞ』
『……』
ヴァイスはそこで押し黙る。
ここまで言って分からん奴なら最早救いようがない。実際に味方を死なすか殺すかしない限りこの〝病気〟は治らん。
仮にこれでもまだふざけた戯言を垂れるようなら私の見込み違いだったのだろう。コイツを自由に泳がせて私では手の届き難いタイプのスキルを集めて貰う算段でいたが、その場合はコイツを身限り眼中から外す。
もし以前のように私に突っ掛かり邪魔立てするならば……。是非もない。
『……僕は──』
『一つ宜しいですかな?』
と、何かヴァイスが言い出しそうになったタイミングで別の声がコチラに向けて発せられる。
渋く老齢な声音のそれに振り向いてみると、そこには一般兵士とは明らかに格が違う風格と鎧を身に纏い、優し気で慈悲深い眼差しの老紳士が微笑を浮かべて立っていた。
『……キャザレル侯爵』
『と、義父さん……』
彼の名は「アッシェ・ラトウィッジ・キャザレル」。
王都セルブの南に位置し、あらゆる物資の集約地点としての役割を担う中央貿易都市「ガーマットレ」の領主。
王国の侯爵を任される上級貴族であり〝経済〟を司る珠玉七貴族、コランダーム公の右腕として国を支え続ける重鎮であり、幼少時代のヴァイスを養子として引き取った彼の義父である。
『随分と……嫌味を言いたくなるタイミングでの登場ですね。キャザレル侯』
こんな状況で義父が現れたんだ。私に都合の悪い事以外に無いだろう。全くこのおやこは……。
『ふぉふぉ。それを、嫌味というんですよキャッツの嫡子殿。……まあ、貴方の思う通りの事をするつもりではありますがな』
そう言うとキャザレル侯は私とヴァイスの間に割り込むと私を正面から見据え、その頭を少しだけだが、ゆっくりと前に傾ける。
『どうか愚息を、貴方に同行させては貰えないだろうか』
『と、義父さんっ!?』
慌てるヴァイスをキャザレル侯は横目で睥睨する事で制し、言葉を続ける。
『息子に限った話ではないが、君達の時代の子は世間の荒波に対して圧倒的に苦難に対する経験が乏しい……。それは言い換えれば我が国が長らく平和であった証明ではあるが、いざという時に対応出来ぬ事があっては目も当てられない……』
『……何が、言いたいので?』
『依怙贔屓や我儘は百も承知。だがそれでも将来、この愚息が国の支えになる素質があると信じる小生は可能な限り経験を積ませたいのだ。未来の国と、この子の為に……』
『……』
ヴァイスに素質があるのは、間違いない。
その精神性や人間性、性格は兎も角、技術や能力、才能は私を除いて並みの同年代達とは比ぶべくもない程だ。
現在は私の指導の元で鍛えたヘリアーテ達との差が開いてしまってはいるが、仮にヴァイスが彼等同様に私に指導され同じ期間訓練に励んだならば、恐らくどの部下達よりも凄まじい能力を開花させていただろう。
それだけのモノを、ヴァイスは持っている……。
だがそうはならなかった。
私がそれを望まなかった。
そんな未来など私達には用意されていない。
そういう関係なのだ。私達は……。
『……』
『……』
『……断った場合、貴方はどう出ますかな?』
『何も致しません。……ただ』
『ただ?』
『社交の場にてもしかしたら、小生が感じた貴方の印象を〝ついうっかり〟漏らしてしまうやもしれませんな。人間、完璧ではありませんから』
『……成る程』
この狸ジジイ……。私が今後上流階級での風評を重んじる事になると理解していて暗に脅かしに来ているな……。
キャザレル侯の信用は今後の私の活動にも間違いなく波及する……。国の要たる珠玉七貴族の面々には意図的に私の印象を根付かせてはいたが、その側近達にまではまだ手が回っていなかった。
波風立つのは承知していた故にいずれそちらにも手を伸ばす予定ではいたが……。チッ。戦時中は流石に大人しくしていると踏んでいたんだがな……。まさかこんな形で先手を打たれるか。面倒な。
……だが私に噛み付いて、ただで済ますと思うなよ?
『……彼を連れて行くとなると、私の権限外の話になってしまいます。そこら辺の処理はどうするおつもりで?』
『小生が取り計らおう』
『私にメリットは?』
『小生の権限で貴方が望むモノ、望む事を一つ叶えよう』
『一つ?』
『……ふた──』
『三つ。譲りません』
『……承った』
『それとは別に私の評価も社交の際に流布して頂きます。裏切りは許しませんよ。』
『……承知』
『装備はそちらで揃えて下さい。最低限死なぬよう気を配りますが、それ以外は責任を負いかねます』
『理解した……』
『義父さんっ!!』
私達のやり取りに今更声を上げるヴァイスだがもう遅い。
何の決意も覚悟も無いお前に、止める権利など一切無い。
『では一時間後に出立します。……ヴァイスも色々と準備終えて私の帷幄の前に来い』
『ぼ、僕は……』
『口答えするな。いいな?』
『……』
「……成る程」
「ああ出られては私も引き受けんわけにはいかん。まったく……面倒で仕方が無い」
だがこの面倒事をクリアさえすればキャザレル侯爵からの評判やその周辺の評価も多少得られるだろう。
将来国の中枢に食い込んだギルドを作る予定の私にとっては、ある意味で後々の活動を短縮出来るチャンスではある。
少しはポジティブに考えなければな。
……だがそれでも──
「ヴァイスくぅん。私も手伝うわぁ」
「遺体の配置場所は確保済みです。担架ももう直ぐ到着ですので、順次運んで行きましょう」
「えーっと、武器とか防具は剥いで向こうに集めて……。うっっわ、内臓が飛び出てるっ!? ちょっと誰か袋持って来てぇーっ!!」
聞いていないぞっ。ヴァイスの取り巻き三人まで付いてくるなんぞっ……。
思わず拳に、力が入る。




