幕間:嫉妬の受難・妬-2
森精皇国アールヴには一人〝聖母〟と称えられる女性エルフが居る。
彼女の生まれはしがない一般家庭であり、育ちも教養も才能も、取り立てて騒がれるようなものは特には無い。
成人してからは普通に恋仲の男エルフと結婚し、彼の実家であるナッツ専門店に嫁ぎながら二人で切り盛りし、元気な男児を一人授かり育てる、極々一般的なエルフの女性だ。
が、しかし。人族との戦争が本格化するに際し、彼女の運命は一変する。
それは徴兵。……と、言っても然しもの当時のアールヴでも、一般的成人女性エルフに戦線に立たせる程に兵力に困窮していたわけではない。
ただ《回復魔法》を扱える人材を、彼等は当時欲していた。何故なら戦争による戦死者を可能な限り出したくはなかったからである。
別に慈悲や悲嘆の念から来る救恤心ではないし、戦力を減らさないよう心掛ける事は当然の話ではあるが、事ここに至っては少し事情が異なる。
それは、ただ彼等は純粋に恐れていたからだ。「暴食の魔王」の出現を……。
「暴食の魔王」は次元の狭間に封印されていたもののその枷は決して厳重ではなく、彼の魔王が地上での〝死の香り〟を嗅ぎ付けでもすればすぐさま封印をこじ開け、戦場を食い散らかす。
故に戦争をするにしても生まれてしまう死体の数は可能な限り抑え込み、せめて重症や致命傷程度にまで持っていく努力は常に必要であった。
そこでアールヴ国軍は国民から募ったのである。まだ見ぬ隠れた才能を持つ国民を発掘し、付け焼き刃でも悪足掻きでも何でも良いからある程度の《回復魔法》を扱える者を。
国は無作為に、家柄や出身に関係無くアールヴ中の国民をくまなく査定。約二年の月日を費やし、そしてとうとう件の女性エルフを発掘した。
だが前述したように、後に聖母と呼ばれる彼女には突出した特別な才能は無い。
ただ他の女性エルフ同様に《回復魔法》を扱える程度の才があるくらいで、他の《回復魔法》術者と比べても何ら特徴は無い。
しかし、それでも彼女は《回復魔法》術者として戦争に参加して程無くし、国中から聖母と称えられるようになっていた。
その理由は──
「ふぅ……。もう大丈夫。後は安静にしていて。じゃあ、次……」
女性エルフは、状態が安定した怪我人を見て安心したように微笑を溢すとすぐさま次の怪我人に真剣な眼差しを向け、足早にそちらの方へ歩み寄る。
「な、なぁ聖母様……」
聖母と彼女を呼んだのは、片腕を失ったところを彼女に助けられ、戦線に復帰出来なくなった事を理由に助けてくれた彼女のサポートを買って出た元兵士。
この〝聖母〟という呼び名も、元はと言えばそんな彼から広められたものだ。
「やめて仰々しい。私はそんな大層な呼び名を付けられる程に凄い存在ではないわ」
彼女も一人の息子を持ついい大人だ。そんな大仰な呼び名を付けられて喜ぶほど、純粋な精神はしていない。
「いやでも……」
「でもよ。第一、私なんかより《回復魔法》を上手く扱える人は沢山居るじゃない。どうせならそんな人に付けてあげて」
「いやでも貴女は──」
元兵士は簡易病床に並ぶ彼女が治したい怪我人達をザッと見渡し、自身の偉業を否定する彼女を諭すように、彼女が聖母と呼ばれる理由を口にする。
「貴女は……人族も、救っているではありませんかっ!!」
この簡易病床には怪我を負ったエルフの兵士も寝かされているが、端の隔てられた区間には数名程度、敵である筈の人族もまた満足な治療を施され寝かされていたのだ。
「……怪我人には、変わりないわ」
そう。彼女は同胞であるエルフ族だけではなく、手の届く範囲ではあるが息のある人族ですら治療していた。
勿論、この事は人族を助け始めた当初様々方々から強く非難された。
折角我が軍の兵士が必死な思いをして致命傷を与えた敵兵を、何故わざわざ労力を割いてまで助けるのか?
造反か裏切りか……。そう強く批判された彼女だったが、だがそんな声に彼女は真っ直ぐに言い返す。
『エルフ族だろうが人族だろうが、人が死なないに越した事など何一つありません』
その言葉は彼女の偽らざる本音。
約三百年前に人族から命を救われた過去が彼女にその意識と言葉を授けており、ただ彼女にとってエルフ族も人族も平等で、ただ命に価値の優劣など存在しない、と当たり前のように考えていた。
するとそんな彼女の意識と言葉を耳にしたアールヴ国内に存在する数少ない人族に多少の信望を抱く者達もそれに賛同を始め、チラホラ現れた彼女を〝聖母〟と呼ぶ者達の声も相まって国内にちょっとした混乱が生まれそうになってしまった。
流石に戦時中の混乱は軍の士気に関わるのと「暴食の魔王」の出現率を下げられるならば……と無理矢理にこじつけ、軍上層部は特別な声明こそしなかったもののその後この件を黙認。
彼女は正当に両種族を救済する理由を手に入れたのだ。
……だがしかし、〝聖母〟という肩書きと理念は彼女に出会わせてしまう。
自分の人生が大きく狂う、最悪の出会いを……。
「せ、聖母様っ!?」
「なに、どうしたの? 急患?」
「そ、それが、人族と──」
「……?」
「人族とダークエルフの子が、砦の前で騒いでて……」
「……んん?」
ヒルドールは必死に森の中を駆けていた。
担ぐユーリに気を遣いながらなるべくなだらかな地形を可能な限り選び抜いて走り、スタミナを使い切らぬよう楽な道を疾駆している。
が、それと同時に彼は忙しなく頭の中で自問自答を繰り返す。
本当に大丈夫なのか? と……。
(半ば勢いで飛び出して来ちまったが、そう簡単には受け入れちゃくれない、よなぁ……)
ヒルドールは今、アールヴ国内に居る。
目指しているのは霊樹トールキン──ではなく、出来得る限りの辺境……。誰にも認知されていないような隔絶された村か集落、またはその廃墟を、何の当てもなくただ闇雲に目指しているのだ。
(ティリーザラに俺達の居場所はもう無い……。ならせめてコイツの故郷で、って思ったんだが……どの道厳しいよなぁ……)
人族にアレだけの仕打ちをされてしまったユーリを、今更ティリーザラに置いておく気にはなれなかった。
他種族──ドワーフ族や獣人族の国に行く事も考えたが、二国に行くには距離がかなりあるし、ドワーフの国はティリーザラの主要都市を、獣人族の国は帝国を経由しないと向かえない。
仮に苦労を重ねてその二国を訪れる事が出来たとしても、人族の成人男性とダークエルフの少女の二人では余りにも悪目立ちし過ぎてしまう。
その他の国々も同様。
着の身着のまま飛び出してしまいまともな路銀や食料、長距離を移動出来る手段が無いヒルドールにとって、ティリーザラより東側に行く選択肢は取りたくとも取れないものだった。
ならばもう、アールヴに賭けるしか無い。
(聞いた話じゃアールヴの広大な森──グイヴィエーネン大森林はエルフ族ですら把握し切れていない程に深い……。国が管理し切れていない村落の一つや二つ、あっても不思議じゃない……はず……)
最早希望的観測を越えて神頼みに片足を突っ込むような無謀で無計画な考えだが、色々と余裕の無いヒルドールにはそこまでのプランが限界である。
(とにかくっ! まずはアールヴの戦線から抜けねぇとしょうがねぇ……。あの調子じゃあもたもたしてたら明日にはもっと押し上げて来るぞっ!)
この時、アールヴ軍はティリーザラ軍にかなり押されていた。
エルフ族が人族を侮り過ぎたのが敗因の一助となっているのだが、それより何より今のティリーザラでは「最高位魔導師」がアールヴ軍に猛威を奮っていたのだ。
齢三十余年にして数々の魔法を発見し、基礎五属性の内の四属性と《光魔法》すら操りそれらを複合した複合魔法も多種多様に行使する天才。
加えて当代の「救恤の勇者」であり、数多の弟子を抱えるティリーザラが誇る最強の魔導師。
そんな最高位魔導師が今、本来後方支援がメインである魔導師にも関わらず前線でその魔法を自慢の弟子達と共に奮い、暴れているという。
(クソ……。我が祖国ながらに憎たらしいぐらいの戦力差だなぁ、ったくようっ!!)
一応アールヴにも、ティリーザラ自慢の最高位魔導師より遥か高みに居る強者は存在する。
アールヴ国内では「森精の弓英雄」と称えられる、竜を相手取り勝利すら収めた本物の英雄。
その栄光は敵国である筈のティリーザラにまで届いており、場所によっては彼を英雄譚として売り出している書店すらある程。
今現在は既に軍を引退し隠居に入っており、馴染みである皇帝からの懇願にも似た招集命令を突っぱねて息子夫婦と暮らしている。
そのため彼はこの戦争には参戦していないのだが、ティリーザラにとってはまさに幸運と呼べるだろう。
彼がもし参戦していたならば、今頃ティリーザラには嵐で抉られて出来たクレーターが数多作り出されていたのだから……。
(ああもうっ! 余計な今はいいっ! 今はまずどっか適当な所から食料やら水やら掻っ攫って──)
「……ねぇ、オジサン」
静かな声で、ユーリはヒルドールに問い掛ける。
その声音は悲惨な仕打ちの直後だというのに何処かあっけらかんとしていて、絶対に落ち込んでいると思っていたヒルドールは思わず動揺した。
「あ、ああユーリっ。どうした? あ、もしかして担がれるの辛いか?」
自身の心境を悟られぬよう自分から会話の内容を誘導するが、ユーリはそれを「ううん」と可愛らしく否定する。
「わたし達は、この後どうするの? ずっと一緒だよね?」
疑問形で聞いてはいるが、ヒルドールは彼女の言葉からは確信めいたものを読み取る。
それも仕方がない。何せしっかりとユーリはヒルドールが一緒に暮らしていく事をアパノースに宣言していたのだ。当然確信もする。
ただその言葉が自分ではなく〝あの女〟に向けられていたものだったのと、この短期間で酷い裏切りを経験してしまったが故に、ほんの少しだけ疑心暗鬼になっていたのだ。
それを察したヒルドールは担いだ姿勢のままユーリの頭にそっと手を添え、優しく撫でてやる。
「心配すんな。もう俺はどこにも行かねぇし、お前を裏切ったり、見捨てたりも絶対にしねぇ。約束する」
「──っ!! うん……うんっ!!」
ユーリは心底嬉しそうに頬を紅色に染めながら喜び、嬉しそうに何度も頷く。
ヒルドールにとってもユーリは大きな存在。ティリーザラに居た時は、ユーリの事で様々な問題を見て見ぬふりをして何のかんのとやり過ごしてきたし、それで何とかなっていた。
それがあらゆる面でヒルドールの決心を鈍らせていた要因であったのだが、今回の一件で真に決意する。
この先の未来、自分はユーリと二人で生きていく、と……。
「……な、なぁユーリ。所でよ……」
「ん? なぁに?」
「その……アパノースの事……気にすんなよ?」
何も無いような表情と声をしているユーリだが、人族とエルフ族の目の前で磔にされ罵詈雑言の標的にされた。それもつい先日まで一緒に笑い合っていたアパノースによってだ。
気にするな、という方が無理がある。
きっと必死に感情を押し殺し、自分に悟らせぬように気を遣っているのだろう。と、ヒルドールはそんな彼女の心の膿を取り除いてやるつもりでそう口にした。
だが──
「……? 気にしてないよ?」
「え?」
ユーリの表情はそれでも何も変わらない。
「あの人の事、もういいよ。死んじゃったし」
「──っ!?」
余りに、言葉が軽かった。
他人事以上に、まるで特に興味のない物語のキャラクターが亡くなったかのような口振りで、そんな彼女にヒルドールは思わず顔を引き攣らせる。
更には……。
「そんな事より楽しみなんだっ! わたしっ!」
「た、楽しみ?」
「だってそうでしょ? これからわたしとオジサンの二人で頑張って生きていくんだよ? ワクワクするなぁ……。ふふっ」
「……そう、だな」
本当に気にしていないのだろう彼女の様子に多少安心感を覚えたものの、それ以上にヒルドールの心中ではユーリに対し原因の分からない不穏さを感じ取る。
別の意味で、本当に大丈夫なのだろうか? と……。
「……ん?」
そんな間も走り続けていたヒルドールだったが、ここでふと、目の前に広がる木々の隙間から先程から見ていた緑色の景色とは違う質感の景色が映る。
「げっ。マジかよ……」
闇雲に走っていた事やユーリに気を遣っていた事が災いし、ヒルドールはすっかり失念していた。
アールヴの西側──ティリーザラに面した国境手前の森林内には彼等が作り上げた砦が存在し、そこを越えなければアールヴの奥には行けない、という事を……。
「今から迂回──いや、食料が無い現状でこんな森の中の砦を迂回するのは無謀だな……」
ヒルドールは取り敢えず砦が見える位置で足を止め、木の影に身を隠して苦々しい表情を浮かべる。
この砦はアールヴ国内最大最長の砦であり、ティリーザラからの侵入を徹底的に拒むように展開され、北から南まで約数十キロある壁を両翼に中央の胴体部となる位置にそれらを管轄する為の砦が存在している。
これを迂回しようと思えば南北どちらかに少なくとも十キロ以上移動しなければならず、食料や水も無いまま散々走り続けスタミナが無くなって来た今のヒルドールには、草木が所狭しと犇く森林内をその距離迂回するのはとても現実的ではない。
だとすればやはり……。
「……オジサン?」
「ユーリ。少しだけ我慢してくれるか?」
「ん? なにが?」
「……今から、エルフに頭下げるっ!!」
「『頼むっ!! 俺達を中に入れてくれっ!!』」
砦の門前。ヒルドールは地面に額を擦り付ける勢いで必死に頭を下げ、それを二人の門番をしているエルフ族が困惑したようにその様子を眺めている。
最初は堂々と自分達の前に現れた人族に狼狽し武器を構えた二人の門番エルフだったのだが、自分達が手を出す前に早々に人族が頭を下げ始め、人族語で何やら喚き散らし始めてしまいどうするべきかを悩ませていた。
「な、なぁ。中に連絡は……」
「さっき監視のヤツが報せに行ったよ……」
「そっか。なら良いけど……。しっかし……」
「ただの人族だけなら問答無用で殺すんだが……」
「ああ……。後ろのアレ」
必死に土下座する人族の後ろ。そこでは頭を下げる彼を心配するかのように寄り添う浅黒い肌と燻んだ銀髪に少女……ダークエルフが居るのだ。
数分前……。この砦に入って来た一報はまさに衝撃的なものだった。
アールヴ森精皇国の現皇帝……。その血を引くダークエルフが戦場に現れた、と……。
実に信じ難い話であり、砦内に波及した際もその真偽を計りかねていたほどなのだが、今まさに眼前に居るのは間違いなくダークエルフの特徴を有しており、加えてそこに皇族の血の証である特徴すら加わっている。
仮に彼女が件のダークエルフだった場合、下手なやり方をすれば何かしら問題が起こるのは必至。
故に二人の門番はどう手を出していいか判らず、取り敢えず砦内の難しい判断が下せる人に連絡し、こうしてただ土下座をする人族とそれを心配するダークエルフを見ているしか出来ないでいるのだ。
「……ん?」
と、そんな時である。
砦の門脇にある扉が開き、そこから一人の女性エルフが現れる。
「あ、アナタは……」
「せ、聖母様っ!?」
大人びていて優しげな表情を湛えるながら現れたのはアールヴ国内にて聖母と称えられるエルフの女性。彼女は「『お疲れさま』」と、二人の門番に挨拶し、未だに頭を下げ続ける人族と寄り添うダークエルフを見遣った。
「この二人が……」
「あ、あの……」
「ん? どうしたの?」
「いや……。来てくださったのは良いのですが、何故この場に聖母様が?」
門番エルフの意見も最も。普通こんな重要な判断を下す場合、その場の責任者か、またはその権限を与えられた直属の部下が出張るものである。
しかし来たのは聖母と皆から称えられてはいるものの、一時的に回復術師の役職を与えられたナッツ屋の一般女性。
権限など、本来何一つ無い筈なのだ。
「うーん。一つは私が多少は人族語話せるって理由なんだけどぉ……」
「は、はい……」
「もう一つは領主様が「君なら正しい判断が出来るだろう」って、よく分からない理由なのよねぇ」
「……はい?」
彼女が語るように聖母自身、翻訳以外の理由でこの場に居る理由は分かっていない。
ただ実はこの時、裏で領主が人族の人身売買組織と取引しており、この事態を一種の隠れ蓑に使う算段をしている、というのが理由だったりするのだが、それはまた別の話……。
「ま。それは置いておいて──」
聖母はゆっくりした足取りで頭を下げ続ける人族とダークエルフの元まで歩み寄り始めた。
無防備な彼女に最初は門番達も慌てたが、聖母は少しだけ振り返り「大丈夫」と愛らしいジェスチャーをして二人を安心させる。
目の前まで来た彼女は綺麗に両足を畳んでしゃがみ込んでから優しく人族の男の肩を叩き、勢いよく顔を上げた彼に微笑んでから「コホン」と一つ咳をしてから口を開いた。
「えーと……『はじめ、まして。人族の、方』」
「『お、おおっ! 俺達の言葉っ!!』」
「『安心して、下さい。私達、は何も、しません』」
「『ああ。俺達も何もしないっ!! 約束するっ!!』」
そう言って人族の男は寄り添うダークエルフの少女を抱き寄せ、笑顔を見せた。
「『ひとまず、話は中で、しましょう。貴方達の、名前は?』」
「『お、俺はヒルドール。こっちの子はユーリだっ』」
「『じゃあヒルドールさん。ユーリちゃん。中で話しましょう。ついて来て、下さい』」
そう言って聖母は立ち上がり、二人も立ち上がる事を促してから着いてくるよう誘った。
「『あ、ありがとうっ!! 恩に着るっ!! えっと……アンタ名前は?』」
「『わたし?』」
「『そうっ! アンタだっ!』」
「『……私の名前はハンナ。ハンナよ』」
「ん……」
夢から覚めたユーリはベッドから身体を起こし、覚醒したばかりの頭で見たばかりの夢を反芻する。
「……ハンナ」
ユーリはそう呟くと部屋の隅……今現在ハンナを閉じ込めている尋問室がある方角へと無意識に視線を向けた。
「……クソが。なんでこんな……」
悪態を吐き、ユーリはベッドから脱出すると適当に身支度を整えようとクローゼットへ足を向けた。とその時──
「……あ?」
何やら全力でコチラに向かってくるような足音と気配を察し、ユーリはそちらに振り向く。
すると数秒して不躾にもユーリの部屋の扉が勢いよく開け放たれ、そこには肩で息をする伝令係の兵士が立っていた。
「なんだ朝から騒々しい」
冷たく言い放つユーリだが、ここまで必死の伝令係の登場など良い報せなわけがない、と内心では嫌な予感で気が気では無くなる。
「ご、ご、ご報告、します……」
「だからなんだっ!!」
「だ、大……」
「ああ?」
「大臣の一人であるヤヴァンナ様が……。ヤヴァンナ様が死体となって発見されましたッ!!」
「……は?」




