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夜の水族館



私は、毎日仕事に追われる生活をしていた。その息抜きに、有給を取り小旅行へ香川へと出かけた。香川といえばうどん県。勿論、お昼はうどんを食べた。有名な金毘羅さんにお参りをし、あっとゆう間に夕方になりホテルへチェックインをし、夕食やらを済ますと私は大本命の水族館へと出かけた。


「夜の水族館」。お昼間の水族館がガラリと雰囲気を変える夜の水族館。それを特別人数制限で見られるという企画に惹かれて私はこの旅行を組んだともいえる。


人気のない電車に揺られ、目的地の四国水族館に着いた。案内員さんに誘導され私は足を踏み入れた。水槽をぼんやりと見ると共にカップルや家族で来ているような人達がチラホラと見られた。私は、生物の説明をしっかり読んで進むタイプだ。時間はあるので、のんびりと見進めた。


周りを見渡すといつの間にか私の周りは、私1人になっていた。流石にのんびりと見過ぎたかと思いスマホをチラリと見ると、まだ余裕があったが、序盤部分でかなり時間をとってしまったようだったので、少し急ぐ事にした。


水槽が左右にある中、通路を進む。


まだ先のある通路をみると、キラリと光る何かを見つけた。蛍のようなナニカ。キラキラとひかり、それは人の形になった。朧気な人の形をするそれは私の手を取った。私は目が離せず惹かれるようにそれに着いて行った。


少し歩くと大水槽へと誘導された。大水槽……それは圧巻だった。大きな水槽に沢山の生物が暮らしていた。ニコリと笑ったようなマンタが目の前を通りすぎ、小さなサメも自由に泳いでいた。


私はふと今の生活を思い返した。毎日仕事仕事仕事。小学生の時の夢はお花屋さんだったかな?なんて懐かしい。いつの間にか現実を見るようになってしまった。いや、現実を見る必要があった。お花屋さんより公務員の方が安定してるし、仕事終わり時刻も決まってる……。私は悠々と泳ぐマンタやサメ達が羨ましくなった。私はいつの間にか、体に巻き付いた沢山のワカメによって自由に泳げなくなってしまった。このマンタやサメが暮らすこの大水槽が、私にとっての社会のよう。


ぼんやりと思いを馳せながら大水槽を見つめていると、先程のキラキラと舞う光とゆらゆらと朧気に動く人の姿が再び私の手を取った。ゆっくりと私を大水槽に近づけると、その手はガラスを越えて大水槽へとチャプんと入って行った。


「……!」



大水槽と繋がった私。人影はにこりと私に笑いかけた。こっちにおいでと言うように。正直、私はその手を強く握って大水槽に入ってしまいたかった。右も左も分からない、何も知らぬ幼き頃の夢。しがらみから解放され私も悠々とこの水槽を泳ぎたい。でも、大水槽が社会を比喩すると思ったように魚達は私のように息苦しいのかもしれない。この大水槽で。高校を卒業して、大学生活を4年。就活が始まり急に放り出される。


大人になった、

魚達は大自然に放り出される_____

私は社会に放り出される_____


_____よりも、安定して餌が貰えて環境に恵まれるこの大水槽。やっぱり、私は大水槽が羨ましい。でも、私はこの引かれる手を離した。


「私はそっちには行けない」




_____暗転したかと思うと、私は大水槽の前にある椅子に座っていた。ゆっくりと瞳を開けると、私は大水槽と向き合った。


私は自由に泳げない水槽、社会。仕事仕事と言っていたけれど、もう少し肩の力を抜いてもいい気がした。今の仕事がイヤなら転職もある。今からでもなんだって出来る。


「同じだね。不自由であり自由」


私は大水槽を見上げ手を伸ばした。

1日1話。

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