第8話 群圧Ⅱ
鬼塚美鈴は森を見ていた。
知らない世界。
身体は前よりもずっと軽い。
身体の出力が恐ろしいほど上がっている。
そして出そうと思えば、もっと出せる。
人間の身体ではないような感覚。
化け物。
そんな言葉が一瞬よぎる。
だめだ。
弱気になるな。しっかりしろ。
それでも胸の奥のざわつきは消えない。
知らない森に放り出されて。
知らない力を身体に入れられて。
やっと同級生と合流したと思ったら。
今度は森そのものが壊れた。
西園寺はここが異世界だと言う。
現実が、どこにもない。
⸻
森は静かだった。
やがて鬼塚が顔を上げる。
「……移動しよう」
声は低い。
「ここにいたくない」
それだけで意味は伝わった。
藤堂優斗は短く頷く。
久我亮も木から手を離した。
西園寺ルカも小さく頷く。
そのときだった。
佐伯真帆がゆっくり顔を上げる。
「……待って」
声は小さい。
だが、全員が止まった。
佐伯は森の奥を見ていた。
焦点の合わない目。
「……誰かいる」
空気が止まる。
西園寺が反射的に聞く。
「……同級生?」
佐伯は首を振った。
「……違うと思う」
一度、浅い呼吸を整える。
「男の人」
「ひとりで、まっすぐ……こっちに来てる」
知らない人間がいる。
こんな森の中を。
迷わずこちらに向かってきている。
背中に冷たいものが走った。
⸻
すでに三人。
多い。
通常は一人。
多くても二。
そして、さらに五人。
多すぎる。
この範囲。
この時間。
八。
異常だ。
――報告する必要がある。
いや。
まずは五人の性質を見る。
木々の影。
この距離なら、こちらは見えない。
次の瞬間。
小柄な女。
焦点の合わない目。
視線だけが正確にこちらへ向いた。
偶然ではない。
探知系がいたか。
捕捉された。




