表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

第3話 潰走Ⅰ

田中真央は、見知らぬ森の中を歩いていた。


湿った落ち葉が、靴の裏にまとわりつく。


踏むたびに、ぐちゃ、と嫌な音がする。


見上げると――


木。


木。


木。


どこまでも森だった。


「……どこだよ、ここ」


ついさっきまで、教室にいたはずだ。


黒板を見ていた。


教師が問題を説明していて、

後ろの席では誰かが笑っていた。


チョークの匂いが、まだ鼻の奥に残っている気がする。


夢かもしれない。


そう思った。


だけど。


足元の土の感触。


湿った空気。


森の匂い。


どれも、妙に生々しい。


現実感が強すぎた。


理解が追いつかない。


そのときだった。


視界の端に、文字が浮かぶ。



【ギフト:適応】



一瞬。


ゲームを思い出した。


レベルアップ。


スキル取得。


そんな画面表示に似ている。


だけど――


笑えない。


「なんだよ……これ」


声が出る。


状況が、まったく掴めない。


学校にいたはずなのに。


気づけば、知らない森。


それだけで頭の中がいっぱいだった。



立ち上がる。


座っていても何も変わらない。


とにかく周囲を見る。


木々の間を進む。


数歩歩いただけで、違和感が増えていく。


静かすぎる。


風はある。


葉は揺れている。


それなのに。


生き物の気配が、ほとんどない。


鳥の声もない。


虫の羽音もない。


森なのに。


妙に静まり返っている。


その静けさが、逆に気味悪かった。


そのとき。


鼻を刺す匂いがあった。


鉄の匂い。


血だ。


田中は足を止める。


胸の奥がざわつく。


嫌な予感がする。


ゆっくり視線を向ける。


人影があった。


少し先。


根が張り出した斜面の下。


制服だった。


うつ伏せに倒れている。


田中はゆっくり近づく。


背中が裂けていた。


血はもう黒く変わり始めている。


同じクラスの――


佐藤だった。


「……え」


頭が追いつかない。


なんで死んでる。


なんでこんな場所で。


さっきまで学校にいたはずだ。


声をかけようとする。


喉が動かない。


そのとき。


また文字が浮かぶ。



【適応:危機察知】



意味は分からない。


だけど。


背筋が凍る。


ここにいたら――


死ぬ。


そう確信した。


その瞬間。


空気が裂けた。


田中の体が勝手に動く。


反射的に前へ転がる。


次の瞬間。


剣が背中を掠めた。


熱が走る。


振り返る。


木々の間。


男が立っていた。


燻んだ革鎧。


剣。


顔はよく見えない。


それでも分かる。


――殺しに来ている。


「なんで……」


喉が震える。


なんなんだ。


なぜ自分が襲われている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ