第0話 成群Ⅳ
森を少し進んだ先に、木の密度が薄くなった場所。
頭上から光が落ちている。
人が集まるには十分な空間。
ここを見つけたのは佐伯だった。
「ここなら少し落ち着けると思う」
そう言ったあと、少し息を整えていた。
久我亮は近くの倒木に腰を下ろす。
さっきまで一人だった。
今は同級生が四人いる。
気持ちの落ち着き方が違った。
藤堂優斗が周囲を確認してから口を開く。
「一度、ギフトを共有しておいた方がいいと思う」
鬼塚が腕を組んだまま頷く。
「確かに」
藤堂が続けた。
「何ができるか分かっていれば、動きやすくなる」
少し考えて、
「じゃあ、俺から話す」
「俺のギフトは剣聖――」
⸻
鬼塚が言う。
「じゃあ次は西園寺さんお願い」
西園寺ルカは少し黙った。
視線を落とす。
ほんの少しだけ間が空く。
顔を上げた。
「……最初に言っておくね」
西園寺の声はいつもより少し低い。
「この力を使うつもりはないから」
四人の視線が集まる。
「私のギフト」
一度息を吸う。
「支配魅了って名前」
空気が止まる。
誰もすぐに言葉を出さなかった。
久我が先に口を開く。
「えー」
肩をすくめる。
「俺に使わないでよ?」
「あんたに使って何の意味があんのよ」
久我は笑う。
「ひでー」
西園寺は少しだけ視線を逸らした。
「効果はまだよく分からない」
「でも名前を見る限り……まあ、まともな能力じゃないのは分かるでしょ」
「だから試す気もない」
沈黙が落ちる。
森は静かだった。
風だけが葉を揺らしている。
久我が手を叩く。
「はい!」
声を張る。
四人が見る。
久我は立ち上がる。
腕を組む。
「俺のギフトを教えてやろう」
間を作る。
「未来予見」
「一秒先の未来が見え――え、何これ?」
森の景色が歪んだ。
木の位置がずれる。
幹が曲がる。
地面が波のように揺れる。
距離が伸びる。
縮む。
森の形が崩れる。
五人は、その歪みに飲み込まれた。




