第71話 雪山の奇跡
「ハア......ハア......」
雪山の奥深く、ヴァルロの闇魔法によって吹き飛ばされたロイが仰向けに倒れていた。
雪山では猛吹雪が吹き荒れる。
「ハア......ハア......ガハッ!!」
吐血するロイ。
その身体はボロボロになり、刺された右肩からも大量に出血していた。
「......ハア......ハア、こ、これは......ヤバいか」
剣を持ち、地面に突き刺して杖代わりにし、立ち上がるロイ。
その全身から大量の血が流れる。
周りを見渡すが、一面猛吹雪で何も見えない。
「......ともかくだ、魔王様を助けに......行かないと......」
辛うじて少し歩くロイ。
しかし、すぐにまた倒れた。
大量出血にこの寒さ、とても人間が立てる状態ではなかった。
「ガルルルルルルッッ!!」
ロイが虚ろに成りながら倒れていると、3つの影が見えた。
それはユキヤマオオカミである。雪山などの寒い場所に生息する獰猛なモンスターだ。
「ハハッ......笑えねーな」
それを見るとロイはまたしても何とか立ち上がった。
そして片手で剣を構える。
「......悪いが、まだ...死ねねぇ、まだ何も...出来て......ないからな」
ロイはカエデとレイカの顔を思い出した。
「カエデ、魔王様、みんな、大切な人にまだ何も出来てねぇ.....まだ死ぬ訳にはいかねぇ......それに」
ロイは大きく深呼吸をする。
「童貞のまま死ねねーだろうがよ!!」
その瞬間、ユキヤマオオカミの一匹がロイに飛び掛かる。
しかし、ロイは転がって避けた。
「はあっ!!」
ザシュッ!!
ロイはそのままユキヤマオオカミを斬り、倒した。
「ハア、ハア、うぐっ!!」
別のユキヤマオオカミに左腕を噛まれるロイ。
「ガルルルルルッッ!!!」
「うぐあっ!!」
左腕からは大量に血が流れる。
「こんチキショー!!」
ロイは左腕を振り、ユキヤマオオカミを地面に叩きつける。
「キャインッ!!」
「どりゃあああ!!」
ドスッ!!
倒れたユキヤマオオカミにヘッドバッドを叩きつけるロイ。
ユキヤマオオカミは気絶した。
そしてもう一匹のユキヤマオオカミを睨み付けるロイ。
「来るなら来いよ!!」
「キャ、キャイン」
ユキヤマオオカミは一目散に逃げていった。
「ハハッ、可愛いワンちゃんだぜ」
そして、そのまま倒れ込むロイ。
「ああ......ダメだ、意識が」
ここは雪山、それにこの大量出血で意識が無くなれば命がないことは誰が見ても明らかである。
(けどもう動けない......血が出過ぎて意識も薄い、ダメだ、俺の命はここまでなのか......)
ゆっくりと目を瞑るロイ。
(こんな雪山で助けが来る可能性は0だし、ああ、カエデ、謝れなくてごめん、喧嘩したままお別れなんて悲しいよ。魔王様、今回の件で気を病んでないといいが......)
ロイは完全に目を瞑った。
(ああ、もっと生きたかったな......)
その刹那、完全に意識を失うロイ。
ぽつんと倒れたロイだけを残し、静寂に包まれた雪山。
それから数分が経った。
すると、ロイの腰に付けていた袋が光り出した。
その袋はみるみる大きくなり、人の形へと変わっていった。
やがてその光は消え、人の形だけが残った。
「わ、私は......」
それは魔王軍第4魔将のサイだった。
魔王城でやられ、液体となっていたサイが元の姿に戻ったのである。
「一体私は何を.....確か私は魔王城で襲撃者にやられて......」
サイは周りを見渡す。
「しかし何だこの心地よい温度の場所は......何故私はこんな場所に」
サイがふと下を見ると、血を流して倒れているロイの姿があった。
「ロ、ロイくん!?どうしたんだ!?」
慌ててロイを持ち上げ、心臓に耳を当てるサイ。
「命はある!しかしこのケガでは......ん?」
サイは自分が裸であることに気が付いた。
「え、あ、ええ!?何で私スッポンポンなのだ!?」
しかし、首を振ると、ロイをおんぶして立ち上がる。
「そんなこと気にしている場合ではないな!とにかくロイくんを安全な場所に運ばないと!」
サイはロイをおんぶして走り出した。
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