第66話 内通者
魔王様は俯く。
それを見かねた俺は口を開いた。
「つまりヴァルロ様、帝国軍に抗う力を手にするため、魔王城を襲撃し魔力玉を奪取しようとしたと言うことですか?」
「お前は?」
「魔王様の部下のロイ・レンズです」
「ああロイ、その通りだよ。魔力玉があれば僕の闇魔力を増幅することが出来る。だがお前達もわかっている通り魔力玉がどこにあるかわからない。あのバカ親父、どこに隠したんだか」
「お父様はバカじゃない!!」
魔王様は悔しそうに言った。
「魔王軍の権威をここまで落とした魔王をバカ以外なんと言ったらいいんだ?」
「それならお兄様はどうやるって言うのさ!魔力玉も結局見つからなかったんでしょ!」
「こうしてレイの前に姿を現したのが答えだよ。レイの魔王軍、僕の革命軍、そして帝国軍の皇帝に反感を感じている者達を仲間に付けるんだ。そうすれば帝国軍と拮抗する力を身に付けることが出来る」
ヴァルロ様は魔王様の前に立ち、言った。
「それで冷戦状態を続けるってこと?」
「違う、帝国軍以上の力を身に付け今度こそ帝国軍を滅ぼす」
「えっ!?」
「僕の力で世界征服を成し遂げる。皇帝を処刑し、レイカ、君が魔皇帝となり世界を統べるんだ」
「ぼ、僕が魔皇帝!?」
「ああ、現魔王であるレイが相応しい」
「僕はそんなのなりたくないし、それは今帝国軍がやろうとしていることと同じじゃないか!!」
魔王様は強い口調で言った。
「そうだ、やられる前にやる。それだけのことだよ」
「そんなの正義じゃない!そんなやり方で魔王軍は動かさないよ!!」
「ならどうする?このまま行けば帝国軍に魔王軍が滅ぼされてしまうぞ」
「それは......」
「大人になれレイ、もう僕に手を貸す以外の方法は残ってないんだ」
魔王様に向かって手を差し伸べるヴァルロ様。
それを見ながら迷っている様子の魔王様。
「待ってください!それは突然過ぎると思います!」
その様子を見て、間に割って入る俺。
明らかに魔王様が困っている。
「ロイとか言ったね、事態は急を要するんだ」
「しかし、急に帝国軍を滅ぼすとか魔皇帝とか言われても魔王様は混乱するかと思います」
「ロイロイ......」
「それにわからないのが、どうして俺達がここに来ることわかっていたのですか?急いで魔王様を仲間に引き入れたいのなら俺達がここに来なければ作戦が破綻していたのでは?」
早く魔王軍を仲間に引き入れたいヴァルロ様が黙ってこの場所で待っていた理由がわからなかった。
「ハハハ、いい質問だねロイ、僕は君達がこの場所に来るとわかってたのさ。それに魔王軍の状況や内情も全て知っている」
「なんで?お兄様は5年前に魔王城を出て、魔王軍の内情は外部に漏らしていないはず......」
魔王様はそう言い終えるとハッとした表情を見せる。
「まさか、内通者がいる!?」
「その通りだよレイ、僕は魔王城から出る時にある男に僕に内情を流すように約束して城を出たんだ。その男が今回も僕に内情を流し、そしてレイを僕の元に来るように仕向けたのさ」
ヴァルロ様は冷笑しながら言う。
それに驚きの表情を見せる俺と魔王様。
「そ、その男って誰なの!?」
「まだわからないか、1人しかいないだろ」
ヴァルロ様がそう言うとランドさんは静かに歩き出し、ヴァルロ様の隣に立った。
「ま、まさか......」
「そうだ、ランドは昔から僕の部下で革命軍のメンバーだよ」
ランドさんは目を瞑りながら腕を組んだ。
「そ、そんな!?嘘だよねランド!!」
「いえ、全て真実です。魔王城の内情をヴァルロ様に伝達していたのは俺です」
「そんな......ランド、信じていたのに......」
魔王様は涙を流す。
「魔王様、来る前に何があっても泣かないって約束しましたよね?あなたはまだ魔王になり切れていないのです」
「......あの時何があってもランドは僕の味方だって、絶対側を離れないって言ったのも嘘だったの?」
魔王様は泣きながら呟く。
「その前から俺はヴァルロ様の部下だったのです」
「信じてたのに、口うるさいけど僕のこと考えてくれてるって!!」
「このようなことで感情的になるようでは魔王に向いていま」
「うるせー!!」
その瞬間、俺が飛び出し、剣を抜いてランドさんに斬りかかった。
キンッ!!
しかし、ヴァルロ様がランドさんの前に立ち、俺の剣を自らの剣で防ぐ。
「テメー!退きやがれ!!」
「お前が退けアホ面野郎」
ヴァルロ様改めヴァルロは俺を押し返し、吹き飛ばす。
俺は少し後退し、剣を構えた。
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