第65話 魔王の兄
それから数日経ち、俺、魔王様、ランドさんの3人は雪山の前まで歩いてきていた。
「ううう、寒いですね」
「ランドまだ着かないの?」
「もうすぐのはずです」
目的地である革命軍のアジトはこの雪山にあると言われている。
「もうすぐお兄様に会える......」
「......」
ランドさんは立ち止まった。
「魔王様、城を出る前にも言いましたがヴァルロ様は昔のヴァルロ様では無くなっているかも知れないです。それでも行きますか?」
「何度も言ったよ、ここまで来て引き返せないよ」
「何があっても泣かない傷付かないと約束出来ますか?」
「わ、わかってるよ!例えお兄様が僕の敵でも泣かないし傷付かない!覚悟は出来てるよ」
そう言う魔王様。
そうは言いつつも不安そうである。
俺は魔王様の肩に手を置く。
「魔王様......俺は何があっても魔王様の味方ですよ」
「ありがと、でも僕の身体に触ったから罰金だよ」
「え!?そ、そんな......」
「冗談だよ、ありがとロイロイ、帰ったら一回デートしてあげる」
「マジッスか!?」
「フフ......」
魔王様は一瞬微笑み、再びランドさんを見た。
「覚悟は出来てるよランド、行くよ」
ザッ!
歩みを進めようとする魔王様の前に何者かが現れた。
「お待ちしておりました」
「お、お前!!スカーレット!!」
それは長身の女、魔王城で俺とサイさんと戦った革命軍の幹部のスカーレットだった。
今日は何故かメイド服姿にツインテールである。
「コイツが魔王城でサイさんと戦ったスカーレットとかいうデカ女です!」
「デカ女......」
スカーレットはボソッと言う。
「テメー何の用だ!?って言うか何でメイド服なんだよ」
「私はヴァルロ様の使用人ですから、ヴァルロ様からレイカ様達が来たら案内するように仰せつかっております」
そう言うスカーレットに驚く俺と魔王様。
「やっぱりお兄様は生きていたんだ......」
「しかし、こちらの行動は筒抜けのようですね」
「コイツはサイさんを刺しやがったんだ!!信用出来ねー!!」
俺は敵意剥き出しでスカーレットを見る。
スカーレットは頭の上に「?」を浮かべているような表情をしていた。
「雪女は瀕死になると液体化すると聞きましたが」
「え?知ってたの?」
キョトンとする俺。
「ロイ様には何度も言いましたが不要な殺生はしたくありません。私達は魔王軍の敵でも味方でもないです、私はレイカ様を連れて来るように言われただけです」
「そうなら話が早いよ、メイドさん、案内して」
「わかりました。では皆様私の身体を掴んで下さい」
スカーレットはそう言う。
俺達はスカーレットの身体を掴んだ。
「では行きます」
シュンッ!!
その瞬間4人の姿は消え、洞窟のような場所に瞬間移動した。
「うわ!場所がいきなり変わった!」
「私の瞬間移動で先ほどの場所の地下へと移動しました。ではこちらへ」
スカーレットは持っていたランプに火を付けて歩き始める。
俺達はそれに付いていった。
「今の瞬間移動する魔法、あんなの見たことも聞いたこともない。メイドさんは何者なの?」
魔王様はスカーレットをじーっと見ながら言った。
物知りの魔王様も知らないなんて、一体どういう能力なのか。
「......何者でもありません、私はヴァルロ様の部下です」
「ふーん、まあいいけど」
「......」
俺達はスカーレットに黙ってついて行く。
そしてしばらく歩くと、スカーレットは足を止めた。
そこには鉄の扉があった。
「洞窟にこんな扉が......」
「この奥でヴァルロ様がお待ちです」
スカーレットは魔王様を見ながら言った。
「この奥にお兄様が......」
魔王様は少し不安そうな表情をする。
「魔王様......」
「大丈夫だよロイロイ、僕は平気」
「......」
それを見て、心配する俺と黙って見ているランドさん。
「......いいですか?」
「うん、ロイロイ、ランド、行くよ」
そう言うとスカーレットは扉を開ける。
その奥には地下とは思えぬほどの広い空間が広がっていた。
そして、その空間の一番奥の椅子に何者かが座っていた。
「久しぶりだねレイ」
それは黒髪に魔王様と似た顔つきの男であった。
「お、お兄様......」
魔王様は男を見ると、そう呟く。
この男が魔王様の兄で魔王軍の元王子のヴァルロ・ユミナル・ダーク様のようだ。
「お兄様なんだね!!」
「ああ、大きくなったねレイ」
「お兄様!!」
魔王様はヴァルロ様に向かって走り出した。
「お兄様!生きてたんだね!!」
「ああ、この通りね」
「僕心配したんだよ!どうして今まで姿を見せなかったのさ!」
「親父のやり方には従えない。だから魔王城を出たのさ」
「え......」
魔王様は足を止めた。
それと同時にスカーレットはヴァルロ様の隣に移動した。
「お前ももう子どもじゃないからね。ちゃんと説明してあげるよ」
ヴァルロ様は椅子から立ち上がる。
「今の魔王軍と帝国軍が冷戦状態になっているのはわかっているだろ?レイ」
「......うん」
「なら何故この状態になっているかはわかるかレイ?」
「魔王軍と帝国軍で不戦協定が結ばれているからだよ」
「そう、先々代の魔王、つまり僕達のお爺様の時代まではバチバチに帝国軍とはやり合っていたが先代の魔王である僕達の父は平和主義で帝国の皇帝と不戦協定を結び、再び大規模な戦争は起きないようになった」
「......それとお兄様が出ていったことに何の関係があるの?」
「まあ聞け、さっきも言ったが結論から言うと僕はお父様の意向に従えないと思ったから魔王軍を抜けた。現状を見てみろ、帝国軍が戦争は起こさないものの冒険者を集い魔王軍への攻撃を続けている、それは時を増すごとに過激になっていっている」
「......」
「あの不戦協定は愚策と言わざるを得ない。このままではいつか帝国軍に魔王軍は敗北し、支配される未来がある。僕は魔王軍を抜け、力を蓄える必要があると思ったんだ」
「だから魔王軍を抜け、新しい組織を作って戦力を蓄えたと?」
「ああ、その通りだ。僕達の父親は歴代でも無能な魔王だった」
「お父様をそんな風に言わないで!お父様は必死に帝国軍と戦争にならないように考えていた!」
「だが現状はどうだ?帝国軍はカードやバスターズを始め、軍拡に力を注いでいる。今戦争を起こされたら魔王軍は勝てない、違うか?」
「......」
「奪わなければ奪われる。大人になれレイ、現皇帝ベインはそんな甘い男ではない。必ず近い将来大規模な攻撃を仕掛けてくる。その時、力がなく魔王軍を危険に晒すのが親父のやり方だ」
「そんなこと......お父様は本当に平和を願って」
「僕は現実の話をしているんだ、絵空事で平和になるのならそれでいい、だがそれは不可能だ、現実と歴史が証明している」
「......」
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