第56話 発明家レイカ
サンダトルトの町を歩くレイカ。
「あーあ、ロイロイもいないし一人だと暇だね」
レイカは目の前の店を見た。
そこは機械や部品を売っている店だった。
「おお!スゴい!最新の機械がいっぱい!」
「お嬢ちゃん、興味あるのかい?」
レイカが機械を見ていると店主と思わしき男が声をかけてきた。
「工作趣味なんだよ!おじさんはこの店の店長?」
「そうだよ、良かったら自由に見ていきな」
「うん!ありがとう!」
レイカは店の中を見渡す。
「おじさん!これって発電機?」
レイカは1つの小型の機械に目をやる。
「そうだよ、良くわかったね」
店主は発電機の電源を点ける。
すると発電機に繋がれてある扇風機が動き出した。
「スゴい!こんな小さいのに発電出来るんだね」
「そうだよ、そこにはこのサンダトルトの近くにあるサンダトルト鉱山で取れる雷鉱石という石が使われていてね、それが」
「軽い摩擦を加えることで自発的に発電を行う雷鉱石の性質を利用しているってことだよね、それに手動で行う運動エネルギーを摩擦力として大幅に増大させるためにカタスモンドを混ぜ込んだヤスリを使用していると」
レイカがそういうと店主はポカンとする。
「よ、よく知ってるねお嬢ちゃん」
「でもこれさ、雷鉱石に導線を近付け過ぎな気がする。雷鉱石が発電した際に生じる電気は雷鉱石から3cmほど離した位置が一番多いからもう少し導線離した方が効率良い気がするけど」
そう言うレイカに対して驚きを隠せない店主。
「お、お嬢ちゃん、良かったら改造してみるかい?」
「えっ!?いいの!?」
「ああ、工具はそこの工具箱に入ってるから自由に使っていいよ」
「ありがとおじさん!」
レイカは工具箱を持ってきて機械をいじり始める。
その様子を後ろで見る店主。
「まずは導線を少し離すと、多分ヤスリもこの巻き方じゃなくこう巻いてやった方がエネルギーの伝わり方がいい気がする」
器用に工具で発電機をしばらくガチャガチャと改造していくレイカ。
「よーし!出来た!」
そう言って発電機の電源を点けると、さっきよりも10倍ほど早く扇風機が動き出した。
「やっぱり!こっちの方が発電効率がいいね!」
レイカはそう言って立ち上がる。
「ありがとおじさん!やっぱ機械は楽しいね!」
レイカは店を出て立ち去ろうとする。
「ま、待ってくれお嬢ちゃん!」
「ん?」
「すまん!俺からの頼みだ!お嬢ちゃんは工学の道に進まないか?」
「えー、工学?」
「俺の店で勉強してもいいし、他の大きな機械工場も紹介出来る、お嬢ちゃんなら良い大学も入れると思う」
「まあ、考えとくよ。ありがとう、じゃあねおじさん」
そう言ってレイカは店から立ち去っていった。
「工学かー、考えたことなかったな」
レイカはまた一人町を歩く。
「うーん、将来のこととか考えたことなかった。普通に僕は死ぬまで魔王として戦い続けるのかと思ってたけど」
歩きながら考え込むレイカ。
「もしお兄様が魔王になれば、僕は普通に働いて結婚して子ども生んでって人生になると思ってたけど......僕がもう魔王だからな」
考え込んでいると、目の前から綺麗なドレスを着た女の人が歩いてきていた。
(ん?こんな工場地帯には似つかわない綺麗な人......)
ジーッと見るレイカ。
(しかも何か見たことあるような......)
そう思うと同時に女の人はいきなり日傘を振りかぶった。
「えっ!?」
そして、その日傘をレイカに向かって振るう。
「うわっ!!」
ドゴッ!!
レイカはそれを避けると、地面に当たった日傘は地面に大きな穴を空ける。
「ええ!?どんなパワーなの!?」
「チッ!逃がしましたわ!」
「お姉さんいきなり何なのさ!?」
レイカは少し距離を取りながら話した。
その女の首には白いスカーフが巻かれていた。
「あなた、魔王レイカ・ユミナル・ダークとお見受けします」
「えっ!?」
レイカは考えた。
自分を狙う刺客はごまんといる。
ここは嘘で誤魔化せたら一番穏便に済ませるなと。
「ち、違うよ!」
「あれ?人違いでしたか?」
「う、うん!僕はただの町娘のレイコだよ!」
「これは失礼致しましたわ」
「そんな見え透いた嘘に騙されるなクイーン」
レイカが背後を見ると、そこには長身の男が立っていた。
その男の首にも白いスカーフが巻かれていた。
「そんなもの嘘に決まってるだろ」
「あら、嘘でしたか」
「クイーンって、お前らもしかして帝国のカードだな!」
「フフッ、敵に名乗って上げるほど優しくはないですわよ。そう、私がカードのクイーン」
「結局名乗るのかよ!!」
「俺がカードのキングだ、まさかこんなところで魔王に出くわすとはな」
カードのキングとクイーン、カードはリーダーのジョーカーを筆頭にエース、キング、クイーン、ジャックの称号を持つ皇帝直属の精鋭集団である。
カードはその証として、白いスカーフを巻いている。
「その白いスカーフ、噂には聞いてたけどそんなネーミングセンス0の集団が本当にいたなんてね」
「ダサいネーミングは皇帝様のセンスだ」
「キング、失礼ですし自分達の名前をダサいとか言わないでくださる?」
「僕の顔は表には公表してないはず、何でわかった?」
「さっき魔王四天王第1魔将ランドと一緒にいるのを目撃したからな、もしかしてと思ったのだ」
「そういうことか......まあいいや、僕と喧嘩したいんだろ?相手になってやるよ」
レイカは指を鳴らす。
「あら、話が早くて助かりますわ」
「ここじゃ人通りが多い、あっちに廃工場があるから付いてきな!」
レイカは廃工場に向かって走り出す。
「ふん、我々も人の目が付かない方が都合がいい、行くぞクイーン!」
キングとクイーンもレイカを追う。
そして、レイカは廃工場へと入っていった。
それに続いてキングとクイーンも廃工場へと入る。
廃工場は完全に閉まっていて真っ暗だった。
「真っ暗で何も見えないですわ」
「おい魔王、灯りを着けるから少し待」
「死ねぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!」
レイカは暗がりからいきなりキングに闇魔法を放つ。
その闇魔法はキングに直撃した。
「ぐあぁぁぁぁあああっ!!!」
キングは吹き飛んで、廃工場の壁にぶつかり、倒れた。
「な、なんですって!?」
「お前も死ね!!」
レイカはそのまま暗がりからクイーンに蹴りを放った。
「きゃあっ!!」
クイーンはレイカの蹴りを腹に受け、吹き飛ぶ。
そして、壁にぶつかり、腹を押さえる。
「ぐ、ぐう......」
「あれ?僕の蹴りを受けて耐えるなんてなかなかやるねお姉さん」
「や、闇討ちに不意打ちなんて卑怯ですわよ!!」
「卑怯?お前ら誰を相手にしてると思ってるの?正義の味方でも何でもない、悪の大魔王を相手にしてるんだよ?卑怯でなんぼなのさ!ガーハッハッハー!!」
レイカは大きな口を開けて笑う。
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