第55話 工業の町サンダトルト
その頃、ロイ達は魔王城近郊の道を歩いていた。
「青い空、青い海、澄んだ空気、美しい山、生い茂る草、さえずる鳥、ポカポカ太陽......」
魔王様は飛びながら前に進んだ。
「僕みたいに晴れた朝だね!」
魔王様は太陽に向かって指差した。
「何を言っているんですか朝っぱらから」
「なんだよ!ランドはノリ悪いな!」
「なにがノリですか。第一魔王様は魔王としての自覚が足りなすぎです。いいですか?、魔王とはですね。強さも重要ですが他の者の模範となるような」
「あーもう!その話は耳にタコやらイカやらが出来るまで聞いてるよ!」
「耳にイカはできません」
「バーカ!バーカ!バカランド!」
「バカで結構です」
魔王様はすっかり元気になった。
3日間悩んで吹っ切れたのだろうか。
「あのぉ......」
「なに!」
「なんだ!」
「な、なんでもないです」
俺はサンベルスでの一件以降、強くなることを心に決めた。
なので魔王様かランドさん、世界でも最強クラスの二人に修業をつけてもらいたいんだが......
いきなり喧嘩始めちゃったよ......
「だいたいなんでランドはついてきたのさ!」
「魔王様を監視しておかないとなにをするかわかったもんじゃないからです」
「監視とか言って実は僕のこと好きなんじゃないの?うわー、ランドのエッチ、ロリコン!」
自分でロリって認めるんだ......
「なにを言い出すかと思えば、自分の脱いだ服は脱ぎっぱなし、食べた食器は置きっぱなし、部屋の掃除はしない。最低限自立した生活を送れない人のことを好きになる人はいませんよ」
ランドさんは余裕の表情で言った。まるで魔王様のお母さんのようだ。
「うっ!も、もうランドなんか知らないもん!大嫌い!」
プイッ!と顔を反らす魔王様。
「ま、まあまあ魔王様落ち着いて.......」
喧嘩する二人を仲裁する俺。
この二人が喧嘩をするといつもサイさんが止めていたという、サイさんは魔王様に対しても姐御的存在だしランドさんにも意見出来る。
まさに有能な人である。
「ロイロイは僕の部下でしょ!何でランドの肩持つのさ!」
「そ、それは......」
「つべこべ言ってないでサンダトルトに向かいますよ、到着して宿を取らないといけないのですから」
そう言うとランドさんは先頭で歩き出す。
「ふんっ!偉そうに!」
「ま、魔王様......」
「なに?」
「サンダトルトってどんな町なのですか?」
「えー、サンダトルトを知らないの?」
またしても常識的なことを知らなかったらしい。
「仕方ない、お姉さんが教えてあげよう。サンダトルトは西イアスの町で魔王城に最も近く面積は西イアスで一番大きく人口も一番多い中核都市だよ」
「そうなんですね!じゃあ魔王軍で一番重要な町なんだ」
「そうだね、まああの辺りは昔から工業が発展してて今でも世界で随一の工業都市になっているよ」
「なるほど.....もしかして魔王様が工作得意なのってそのおかげなのですか?」
「まあそれもあるね、最新の技術は真っ先にサンダトルトで開発させ魔王城に流れてくるから、昔は良く遊びに行ったりしてたからね。実はサイちゃんと初めて会ったのもサンダトルトなんだよ」
「そうなんですか!?サイさんサンダトルトに住んでたんですか?」
「そうだね、当時大学生だったんだよ。初めて会った時は恥ずかしがり屋で可愛かったんだよサイちゃん、おっぱいは昔からドエロかったけどね」
「あんなエロい胸で大学生だったんですか!?」
「あんなエロい胸で大学生だったんだよ」
いない間にもセクハラトークされるサイさんだった。
そしてサンダトルトに到着した俺達。
「うわー!すっげー!」
サンダトルトは想像より大きな町で、サンベルスとは違った独特な様相だった。
「本当に工場や商店がいっぱいですね!」
「この辺は工業地帯だからね、もっと奥に行けば住宅街とか普通の町が広がってるよ」
「さて、今日はこの町で宿を取って休もう」
「まだお昼だし時間あるよね!」
ランドさんに食いつく魔王様。
「ええ、遊びたいんですか?」
「うん!遊んできていい!?」
「良いですが迷子にならないで下さいよ」
「わ、わかってるよ!」
そう言うと魔王様は俺の方を見る。
「ロイロイ!サンダトルトを案内したげる!一緒に行こ!」
そう言って笑う魔王様。
か、可愛い......
行きたい、死ぬほど行きたいが俺は......
「すいません魔王様!俺空いてる時間があったら修業したくて!」
「え?修業?」
「魔王城での一件で自分の弱さを知りました。俺がしっかりしてないばかりにサイさんを危険な目に合わせてしまったし、誰も守ることが出来なかった。だから俺、強くなりたくって」
サンベルスでの一件もあった。
俺は大切な人を守れるようになりたい。
「えー、僕とのデートよりそっちを取るの?」
「い、いえ......そういう訳ではないのですが」
「嘘だよ、早く強くなって僕を守ってね」
そう言ってまた魔王様は笑う。
て、天使か.......魔族だけど。
「修業はいいが何をするつもりだ」
「そ、それでおこがましいかも知れないですが、お二人のどちらかに修業を付けてもらいたいです」
そう言う俺。
コアネールさんに師匠を持つことの大切さを教えてもらった。
魔王様、ランドさんという最強クラスの師匠を持てれば俺は強くなれると思った。
「師匠って可愛くないから嫌だけど、しょーがない部下のために僕が一肌脱いで」
「修業なら俺が付けてやる」
魔王様の言葉を遮り、ランドさんが言う。
「えー、僕が付けてあげようと思ったのに」
「魔王様が得意なのは魔法と格闘術、それに闇魔法や魔族の身体能力を使った戦闘スタイルです。それは凡人の人間には合わない」
「まあ確かに、僕天才だし」
「俺は無属性で剣術も多少扱う、ロイの性質と俺の方が似ている。故に俺が付けてやった方が効率が良い」
「でもオッサンと修業より僕と修業する方がいいよねロイロイ?」
「いえ、ランドさんに修業付けてもらいたいです」
「うえー!!」
「ランドさんは無属性なのに最強クラス、同じ無属性の俺もそれだけ強くなりたい!なのでランドさんにお願いしたいです!」
「わかった、ここでは邪魔が入る、町郊外の森の中でやろう」
「なに?珍しく優しいじゃんランド」
「強くなりたい者に文句はないです。それにロイには強くなってもらわないとダメですから、魔王軍の一員らしく」
ランドさんはそう言い、目をつぶる。
「ありがとうございますランドさん、俺強くなってみせます!」
「礼を言うのは強くなってからだ、それに俺の修業は甘くないぞ」
「はい!よろしくお願いします!」
「ふーん、男って普段は女好きなのにこういう時は女そっちのけで盛り上がるよね、つまんないのー」
「魔王様も修業しますか?」
「嫌だよー、僕はサンダトルトの町を見て回ってくるから後で合流しよう」
そう言って魔王様は町の方へ歩いていく。
「向こうの森で修業してるので遊び終わったらそこへ来てください」
「へいへーい」
「お金は渡した分だけしか使わないで下さい、夕飯があるのでお菓子の食べ過ぎは止めて下さい」
「わかってるよ」
「知らない人に付いていったり、人通りの少ない場所には近付かないで下さいよ!」
「わ、わかってるよ!ランドはしつこいな!」
そう言うと魔王様は去っていった。
「ラ、ランドさん心配なんですか?」
「いや心配ではない、一人にするのが不安なだけだ」
それって心配なんじゃ......と思ったが言わないようにした。
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