第47話 魔王城防衛戦、終戦
「さあ僕の仲間を傷付けてくれたお礼だ!!」
「ク、クソ......魔法が効かないなら肉弾戦よ!!」
タイオは魔王様に向かって走り出す。
「うおおおおおお!!!」
そして腕を振り上げ、飛び掛かるタイオ。
しかし、魔王様はヒラリと交わす。
「なっ!?」
ドゴォ!!
魔王様はタイオの顔面を殴った。
「ガハッ!!」
タイオは吹っ飛び、壁にぶつかり倒れた。
「魔族の身体能力は人間の約4倍、肉弾戦でも負けないよ」
魔王様は自ら拳に息を吹き掛けながら言う。
ス、スゴい.......あんなに強かった侵入者幹部を易々と3人倒しちゃうなんて......
桁が違う、魔王様の強さは今まで見てきた強者の中でワンランクもツーランクも上の強さである。
「魔王様!!スゴすぎです!!」
俺がそう言うと、魔王様は俺の方を向き、親指を立てた。
「魔王様!!」
すると、背後から聞き覚えのある声がした。
ランドさんだ。
「ランドさん!」
「ロイ、生きていたか」
「ランド、城の状況は?」
魔王様は小さな翼で羽ばたくと、俺の隣に降りてきた。
「侵入者は殲滅、今は遠征途中から戻ってきた者が怪我人の手当を行っています」
「そう、ならそのまま怪我人の手当をお願い。後、液体保管用のカプセルを用意してほしい」
「わかりました、少しお待ちを」
ランドさんはそう言うと、城の内部へと走っていった。
「ま、魔王様、サイさんは.......」
「大丈夫だよ」
魔王様は魔法で液体となったサイさんを掬い取り、浮かせた。
「ピンチになった氷魔人は一時的に液体となって身体を回復させるんだ。だから液体になれてるってことはサイちゃんは致命傷を負ったときに何とか液体化出来たってこと」
「って言うことはつまり......」
「うん、数日はかかると思うけどサイちゃんは無事だよ」
「よかった.......」
俺は安堵とともに床にへたり込む。
サイさんが無事だった、本当に良かった。
「本当に、すぐ心配かけるんだから」
「サイさん、最後まで魔王様の心配してました。俺に魔王様を頼むって」
「僕の心配の前に自分の心配してよ。氷魔人なのに熱くなりやすいんだから.......」
そう言う魔王様の目には涙が滲んでいた。
魔王様とサイさんは何だか姉妹のような絆があるんだな。
すると、城の奥へと繋がる通路からランドさんが走ってきた。
その手には大きな筒のような物が握られている。
「魔王様、液体保管用のカプセルをお持ちいたしました」
「ありがと、ちょっと狭いけど許してねサイちゃん」
魔王様はランドさんからカプセルを受け取り、液体のサイさんを入れた。
あのカプセルは丈夫で液体の保存に適しているらしい。
「ところで魔王様達はどうして戻って来られたのですか?」
魔王様達はしばらく遠征の予定だったはずだ。
「いや......何か突然ランドが戻ろうって言い出して」
「ああ、妙な胸騒ぎがしてな。気になって一度戻ることにしたのだ」
「胸騒ぎですか?」
「ああ、俺の予感は良く当たる。案の定、城が襲撃されていた訳だ」
「でもまさかサイちゃんがやられるなんて、相手にも手練れがいたの?」
カプセルに蓋をしながら聞いてくる魔王様。
「はい、一人明らかに実力が違う者がいました。スカーレットという長身の女です」
「スカーレットか......聞いたことがありませんね。サイが苦戦するような相手が無名とは考え辛いですが......」
「そのスカーレットって女が襲撃してきた組織のリーダーってことかな?」
魔王様がそう言ったのを聞き、俺はサイさんがスカーレットから聞き出した情報を思い出した。
「ヴァルロ様......」
「えっ?」
「スカーレットがそう言いました。組織の目的はヴァルロ様のため、玉を奪取することだと」
そう俺が言うと魔王様もランドさんも黙り込む。
魔王様もランドさんも暗く神妙な面持ちになった。
「え、えっと......」
「ロイロイ、確かに敵はそう言ったの?」
魔王様は少し不安そうに聞き返してきた。
「はい、確かにそう言いましたが.......」
「そう......」
「魔王様、変なことは考えないで下さい」
ランドさんが魔王様に言う。
それを聞くと魔王様はランドさんを見る。
「変なことって?」
「今魔王様が考えていることはわかります。が、それは考えないことです」
「何で!?ランドはどうして......」
そう言うと魔王様は下を向く。
その顔はいつの元気な魔王様とは違う、とても悲しそうな顔である。
こんな顔の魔王様は見たくないな......
「あ、あの......一体何の話ですか?」
俺はわからず聞く。
「.......」
しかし、魔王様は黙ったままだ。
「ヴァルロ様は俺がかつて仕えていた魔族の王子の名前だ」
ランドさんが口を開く。
ランドさんの前の主人?
まさか......
すると、魔王様が顔を上げ、口を開く。
「先代の魔王の息子であり、次期魔王が確約していた。僕のお兄様の名前だよ」
魔王様のお兄さん、その名前がヴァルロと言うらしい。
確か前に魔王様が話してくれた、お兄さんは行方不明になったと。
そのお兄さんが襲撃してきた組織のリーダー?
「もしかしたら行方不明になったお兄様がその組織を」
「魔王様!!」
魔王様の言葉を遮るようにランドさんが声を上げた。
いつも冷静なランドさんが珍しく大きな声を上げた。
「変なことは言わないで下さい。ヴァルロ様がこの組織のリーダーだなんて」
「で、でも偶然同じ名前なんて考えられない!」
「偶然同じ名前か、そのスカーレットとか言う者が情報を撹乱するためにした虚言です」
「それこそ無理があるよ!ランドはお兄様が生きていてくれたら嬉しくないの?」
「嬉しくないです、そのヴァルロ様率いる組織が魔王城を襲撃したのですよ」
そう言われた魔王様はまた悲しそうな顔をした。
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