第36話 王女の真実
「貴方......ダメですの!それを言ったら......」
「みんな!聞いて下さい!僕がケガをしたのは僕のせいなんです!コアネールさんは僕を守ろうとしてくれました!」
それを聞いてザワつき出すカフコ族達。
「実は僕、母さんを喜ばせようと物を盗んだんだ......それで捕まって店主に殴られた」
涙を流しながら言う少年。
それを心配そうな顔で見るコアネールさん。
「それで店主に警察へ連れていかれそうになった。そこにコアネールさんが居合わせたんだ。僕はコアネールさんに病気の母さんのことを話したら、今回だけはってことで助けてくれた」
そうだったのか......やっぱりコアネールさんは少年を守ろうとしていた。
コアネールさんはサンベルスやカフコ族のことを思っている人だ。
「コアネールさんはカフコ族のことを考えてくれています!みんな!コアネールさんを処刑するなんておかしいです!」
少年はそう言った。
カフコ族達は迷っている様子である。
「お、俺は......」
一人のカフコ族の男が声を上げる。
「コアネール様は信頼出来る人だと思う!サンベルス、カフコ族と板挟みになって大変なところもあるだろうけど、両方が納得の行く方向に考えてくれている!」
そう男が言うと、カフコ族達は一斉に声を上げた。
「コアネール様はカフコ族のことを考えてくれている!!」
「そうだ!そうだ!」
気が付くと全てのカフコ族達がコアネールさんの処刑に反対している。
それを見て、コアネールさんは笑顔になった。
「皆さん......ありがとう」
「チッ!ここに来て裏切りやがったか」
その瞬間ジャックは剣を抜いた。
アイツまさか!!
「コアネール様!貴女さえ始末出来ればいいんだよ!!」
ジャックはコアネールさんに剣を振るおうとした。
まずい!!
「させないわよ!!」
バチチッ!!
その瞬間、カエデが雷魔法で縄を焼き切った。
「ハッ!!」
そして素早く鉄の針を取り出し、ジャックに向かって投げ付けた。
「おっと!!」
ジャックは剣を振るうのを止めて、針を避ける。
「カエデ!お前......」
バチチッ!!
カエデは雷魔法で俺を縛っている縄を焼き切った。
「あ、ありがとう!!」
「ロイ!私達の武器を取ってきて!」
「わ、わかった!」
俺は俺達の武器が入った袋目掛けて走り出した。
「お前......魔法が使えたのか!だがもう遅い!」
またしてもジャックがコアネールさんを斬り付けようとした。
「ハアッ!!」
その瞬間、物凄いスピードでジャックに近付き、跳び蹴りを放つカエデ。
ブンッ!!
しかし、ジャックはバックステップで避けて、処刑台の下に着地した。
その間にカエデはコアネールさんを抱え上げて、処刑台から跳び、ジャックと距離を取った。
「コアネール、大丈夫?」
「は、はい」
「ならコアネールはカフコ族達を連れて逃げて、そのままサンベルスに戻って増援を呼んできてくれる?」
「わかりました!銀髪さんと軟弱さんは!?」
「私とロイでコイツを抑えるわ。でも長く持つと思わないことね」
カエデはジャックを見る。
「コイツはカードの一員、帝国軍最強の剣士よ。なるべく早く増援をお願いね」
「わかりました!御武運を!」
コアネールさんはカフコ族の方に走っていき、カフコ族と共に森の奥へと進んでいった。
「カエデ!武器取ってきたぞ!」
武器が入った袋を抱え、カエデの元に駆け寄る俺。
「ありがとう」
カエデは自分の刀を取って構えた。
俺もアンセルとディアブロを取り出して、左手にアンセル、右手にディアブロを持ち、構えた。
「今の速さに雷魔法、嬢ちゃん、タダ者じゃないな」
ジャックはカエデを見ながら言う。
そして、ジャックも持っている剣を前に構えた。
「貴方、純粋なカフコ族を騙しコアネールさんを殺そうとした。どんな理由があっても許さないわよ!!」
鬼のような形相で言うカエデ。
こんなカエデ初めて見る、本気でキレているようだ。
「まあいいや、ここでお前らを殺す。その後、逃げた王女様とカフコ族を殺す。さっさと任務を完了させてもらうぜ」
「ちょっと待て!カフコ族達も殺すのかよ!?」
「当たり前だ、こうなった以上見た奴等を生かしておけねー。簡単だよ、カフコ族達がサンベルスへの恨みで王女様を殺した。そこに駆けつけた俺が王女様を助けようとしてカフコ族を殺した、だが間に合わなかった。どうだ?この算段は」
ジャックは涼しい顔でそう言った。
つまりはシナリオを捏ち上げるつもりだ。
「クソ野郎が!そんなことはさせねーよ!!」
だっ!!
俺は大きく踏み込み、ジャックに向かってダッシュした。
「ダ、ダメ!!待ちなさいロイ!!そいつは帝国軍最強の剣士よ!!」
カエデは止めようとするが、俺には全く聞こえなかった。
「オラッ!!もらった!!」
俺は両手の2本の剣をジャックに向かって振り下ろす。
しかし、ジャックは簡単に身体を反らして避けた。
クソッ!速い!!
「そこかっ!!」
俺は体制を整えて、避けたジャックを追うかのように剣を振るう。
しかし、そこにジャックの姿はなかった。
「あれ?どこ行っ ......」
ドゴンッ!!
ジャックは俺の後ろに回り込み、回し蹴りを放った。
ジャックの蹴りは俺の脇腹に直撃した。
「グワッ!!」
ドガッ!!
そのまま吹き飛ばされて、木にぶつかる俺。
ダ、ダメだ......意識が......
心配して駆け寄るカエデの顔が微かに見える。
カエデ......
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