第35話 処刑執行
そして、俺達は少し移動させられ、ある広場に辿り着いた。
その広場の真ん中には処刑台があり、ロープが吊るされている。
その処刑台の横に俺とカエデ、コアネールさんが座らされた。
処刑台の上にジャックが、処刑台の前にはカフコ族達が立っている。
「この処刑台はかつてサンベルス人がカフコ族を処刑するのに使用した処刑台だ。この処刑台でコアネール・サン・サンベルスとその仲間の処刑を執り行う」
ジャックがそう言った。
「まずはコアネール、お前からだ」
ジャックは顔を伏せて泣き続けるコアネールさんにくくりつけられたロープを引っ張った。
コアネールさんは引きずられながら、立ち上がらされた。
「お前!!コアネールさんに乱暴な真似すんな!!」
ジャックを睨む俺。
まずい......このままだとマジで処刑されちまう。
「カエデ!どうする!?」
「どうするったってこの状況どうしようもないわよ」
カエデは相変わらず冷静にそう言った。
「なんでそんな冷静なんだよ!このままだとコアネールさんが殺されちまうよ!」
「今騒いでもどうしようもないでしょ」
「カエデ!!何でお前はそんな冷たいんだよ!」
「うるさいわね、だいたいコアネールはこういうことになることも覚悟の上でここに来たんでしょ」
「お前……鬼じゃねーんだから」
「軟弱さん、銀髪さん」
その声は俺に背後から聞こえた。
俺が振り向くと、さっきまで顔を伏せて泣き崩れていたコアネールさんが顔を上げてこっちを見ている。
「喧嘩は止めてください……あの、今回は巻き込んでしまい申し訳ございませんでした。私が処刑される前に暴れてジャックさんの気を引きます。その内に何とか逃げて下さい、成功率の高い作戦ではありませんが、お願いします」
コアネールさんは俺達に笑顔を向けてそう言った。
「で、でもそれじゃコアネールさんは......」
「私の責任で貴方達を危険な目に合わせてしまった。せめてもの罪滅ぼしです」
「おい、早くしろ。最後ぐらい潔くしろ」
そう言ってまたコアネールさんのロープを引っ張ったジャック。
野郎......
「では行って参ります」
そう言ってコアネールさんは立ち上がり、処刑台に立った。
「おい!マジでまずいって!カエデ!!」
「ロイ、ジャックの後ろにある布袋見える?」
ジャックの後ろに視線を送りながら言うカエデ。
「そんなことどうでもいいだろ!!何とかしないと!」
「良いから見て」
「なんだよもう!」
俺はジャックの後ろに視線を送る。
そこには長細い布袋が置いてあった。
「あったけど何だよ?」
「あれは恐らく私達の武器よ、場所を覚えてて」
「それどころじゃねーだろ!」
「良いから」
カエデはじっと目を瞑りながら言う。
「何なんだよもう......」
そうこうしている内にコアネールさんが処刑台の上に立っていた。
コアネールさんは下を向き、暗い表情である。
「ジャックさん」
小さく呟くコアネールさん。
「なんだ?」
「最後に一つ聞かせて下さい」
「......ああ」
「貴方は皇帝のために、私を陥れるために嘘をつき、皆を騙したのですか?」
コアネールさんは下を向きながら聞いた。
「......ああ、任務だからな。悪く思うなよ」
ジャックはそう小さくカフコ族には聞こえない声で呟いた。
任務!?これが皇帝が命令したことなのか!?
そう思っていると、カエデはもっと神妙な面持ちだった。
一体何がどうなってやがんだ、訳がわからねぇ。
「そうですか、では私がやって来たことは間違いではなかったのですね」
そう言ったコアネールさんの目からは涙が流れていた。
「......最後に一言喋らせてやるよ、せめてもの手向けだ」
そう言うとジャックはコアネールさんから一歩離れた。
それを驚いた様子で見るコアネールさんだったが、優しい表情に変わり前を見た。
そして口を開く。
「カフコ族の皆さん」
そう言うとコアネールさんは目を瞑る。
「私は王女として一生懸命やってきました。サンベルスを良くしたい、カフコ族を良くしたい、そう思い日々生きて参りました。ですが私は未熟で、皆様のお気持ちに沿うことが出来ませんでした」
カフコ族達は静かに聞いている。
「ですが必ず!サンベルスとカフコ族、支え合える日が来ると私は信じています!私でなくとも誰かがそうやって、平和へと導いてくれると信じています!」
コアネールさんは目を開ける。
「私の役目はここで終わりますが、皆様きっと私の夢を叶えて下さい。きっと私の目指した平和を成し遂げて下さい。私からは以上です。皆様、信じていますよ」
そう笑顔を見せるコアネールさん。
それを見てカフコ族達は動揺しているように見えた。
「さて、終わったようだな」
ジャックがコアネールさんに近付く。
「それでは今からコアネール王女の処刑を」
「待ってください!!」
ジャックの言葉を遮るかのように声が聞こえてきた。
皆が一斉にその声のした方を向くと、その声の主は先ほどのケガを負った少年だった。
「ごめんなさいコアネール様、やっぱり僕本当のこと言います」
そう泣きながら言う少年。
それを見てコアネールさんは驚いた様子だ。
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