第34話 帝国軍の精鋭部隊
あれから俺達はロープで縛られ、カフコ族の集会所に連れていかれた。
剣も奪われ、完全に丸腰である。
カフコ族の集会所には、100人程のカフコ族達がいた。
「コアネール様、お待ちしておりました」
すると、カフコ族の長老らしき老人が一歩前に出てきた。
「長老さん、お久しぶりですの」
そう挨拶するコアネールさん、どうやら会ったことがあるらしい。
「単刀直入に聞きます。コアネール様が皇帝になればカフコ族の森を破壊するというのは真か?」
長老はそう言った。
「なっ!!そ、そんなことするはずがありませんわ!」
コアネールさんは驚きながら否定した。
確かに、平和主義のコアネールさんがそんなことするはずがない。
「だからあの手紙を送ってきたのですか!?」
「はい、コアネール様の真意を聞きたくて」
「そんなの根も葉もない嘘ですわ!誰からの情報ですの!?」
「俺だ」
その声は長老の横に立っていたフードを被った長身の男が発した物だった。
フードを被った男は一歩前に出て、長老と並んだ。
「貴方は?」
そう言われると、フードの男はフードを手で掴み、脱いだ。
その素顔は金髪で髪をかき上げた30歳ぐらいの男であった。
それに首には白いスカーフが巻いてある。
「初めましてだな。コアネール様」
そう挨拶をする男。
声が低く、渋い声をしている。
「あ、あなたは......カードのジャック!?」
コアネールさんは驚きながら言った。
「えっ!?カード!?」
それを聞いたカエデも珍しく驚きの声を上げた。
なんだ?カードとかジャックとか。
これまた知らなかったらバカにされるやつだろ。
っと自分の無知さに馴れてきた俺。
「あの......カエデ?」
俺は顔を引きずらせながらカエデに声をかける。
「ま、まさかアンタ、カードを知らないとか言わないわよね?」
「うっ......」
「うーん、まさかこの俺を知らない奴がいるとはねぇ」
ジャックとか言うオッサンは肩を回しながら言う。
「テメーなんかに名乗る道理はないが、いいか?カードってーのはな」
「道理はないのに名乗りますのね」
「カードってーのはな、皇帝直属の精鋭部隊のことさ」
「皇帝直属?」
聞くところによると、カードとは帝国軍のトップである皇帝が自ら選んだ直属の5人の精鋭部隊、ジャック、クイーン、キング、エース、ジョーカーの称号を与えられ、皇帝の護衛や特別な任務の際に動く。
簡単に言えば、帝国軍で最も強い5人と言える。
「わかったか?小僧」
「つまりジャックが一番弱いってことだろ?」
「ううん!ハッキリと言ってくれるガキだな」
「そんなことはどうだっていいですの!貴方が嘘の情報を流したって、なぜそんなことをするのですか!?」
コアネールさんが横入りしてきて言う。
「ううん!嘘とは聞き捨てならないな、確かな情報だぜ?」
「まさか......」
コアネールさんは口を閉ざした。
何かを考えている風だ。
「現皇帝の血族ではない私が皇帝になるのが気に入らないから潰しにきたってところですの?」
コアネールさんが言う。
「そんな!?皇帝様の命令でってこと!?」
カエデが驚きながら言った。
カエデは帝国側の人間、現皇帝がそんなことをしていると知って驚いている。
「わかりません、しかし現皇帝様は自らのご子息を次期皇帝にしたがってますから、それにカードが出てきたとなればそれぐらいしか考えられないですの」
「......」
コアネールさんの言葉に黙り込むカエデ。
「皆さん聞いて下さい!私はカフコ族の森を破壊するつもりなどございません!サンベルスとカフコ族、昔は対立していましたが今は友好的になっているではありませんか!」
必死に訴えるコアネールさん。
「いや、確かな情報だ。元々サンベルスは原住民族であるカフコ族から奪い建国された国、そうなっても不思議ではない」
「そ、それはそうですが!それも1000年前の話ですわ!今はこうやって友好関係を!」
「それにこの男を見ろ」
ジャックは一人のカフコ族の少年を呼び、民衆の前に連れてきた。
その少年は腕と頭に包帯を巻き、ケガをしているようだ。
「あ、貴方は......」
少年を見て狼狽えるコアネールさん。
どうやらその少年はコアネールさんと面識があるようだ。
「この少年はカフコ族の少年だ、骨折中の母親の代わりにサンベルスへ買い出しに行った」
ジャックのオッサンが話しているが、コアネールさんはずっと黙って聞いている。
「その時に差別を受けて暴力を振るわれケガを負った。酷い話だと思わないか?」
ジャックのオッサンがそう言うと、カフコ族の民衆はザワザワし始めた。
マジか......カフコ族とサンベルスの間にはそんな亀裂があったのか。
「その暴行の現場には他でもない。このコアネール王女様がいた。しかしこの王女様は暴行を加えたサンベルス人に何もせずに放置していたのだ」
ジャックが説明を続けるが、コアネールさんはずっと黙っている。
「サンベルスの連中はカフコ族の森を奪いサンベルスを建国したロバート・サン・サンベルスを英雄と見なしている。今回もロバートの銅像を撤去することよりカフコ族と争うことを選んだ。そのロバートの末裔こそがこのコアネール王女様だ」
そう熱弁を奮うジャック。
それを聞いてもコアネールさんはじっと下を向いている。
「野郎......コアネールさんは争うことなんか望んじゃいねーってーのによ!」
俺は悔しくて自然と口が動いてしまう。
その間もカエデは何やらキョロキョロと周りを見渡している。
「さあ皆の衆!カフコ族は今立ち上がらねばならない!そのためにはこのカフコ族への差別の元凶、コアネール・サン・サンベルスを処刑しなければならない」
そう言うジャック。
「しょ、処刑だと!?」
「ちょっと待ってください皆さん!そんなの私を処刑したところで何も変わらないです!」
咄嗟に話し出したコアネールさん。
「確かにサンベルスは原住民であるカフコ族の森を奪い建国され、それに私は初代サンベルス国王のロバートの末裔ですの!それにサンベルス国民の中にはカフコ族への差別があることも事実です......」
コアネールさんは表情を曇らせる。
「ですが私は私の代でそれを少しでも解消出来るように尽力いたしてきました。私の力が至らないばかりにまだ成し遂げられていませんが、必ず私はそういった意識を無くすように変えていきますの」
コアネールさんは熱意を込めて話した。
ザワザワし続けるカフコ族達。
「耳を貸すな、今までの王族だってそう言い続けてきたが一向にサンベルス人の差別意識は改善されないままだ。ここでこの王女を絶つべきだ」
「信じて下さい!私は......王女としてサンベルス人もカフコ族も守らなければいけないのです!」
必死に訴えるコアネールさん。
ザワザワし続けるカフコ族達だったが、一人の若者は一歩前に出た。
そして、口を開く。
「俺は......俺は信用出来ない!カードの人の言った通りだ、王族は毎回毎回口だけで何もしやしない!」
若者がそう言うと、後ろで聞いていたカフコ族達もそれに賛同するかのように頷いている。
「今回だって!カフコ族の少年が暴行を受けていたにも関わらずサンベルス人を守った!やっぱりコアネール王女様も今までの王族と同じで口だけで、カフコ族を差別しているんだ!」
そうだ!そうだ!っと口を揃えて言うカフコ族達。
それを見て、フッと笑うジャックと悲壮な表情を浮かべるコアネールさん。
「決まったなコアネール王女様、悪いがここで貴女は処刑される運命のようだ」
「そんな......私は今まで国のため、国民のために......」
そう言うとコアネールさんは顔を伏せて泣き始めた。
コアネールさん......
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