第32話 王女様のボディーガード
俺が王女様のボディーガード!?
い、いや、騎士みたいでカッコいいけども!
「い、いや、どうしてロドロスさんに言って城の兵士と行かないの?」
「お父様に言ったら絶対に反対されるに決まってますわ。私は私自身でカフコ族と話を付けたいのです」
確かにロドロスさんが娘のコアネールさん本人を行かせるとは思えない。
恐らく代わりの者を行かせて話をするという手筈を取るだろう。
「な、ならカエデは?俺なんかよりずっとカエデの方が頼りになるぞ?俺が言うのもなんだけど」
「あの方は真面目で合理的過ぎますの。きっと反対されると判断いたしました」
確かに!カエデはあれでいて無駄なことはしない主義だ。
デザール村の一件のときみたいに反対するのは目に見えていた。
逆を返せば俺は不真面目で非合理的だと思われたということだ。
全く持ってその通りである。流石王女様。
「だから貴方様にお願いいたしました!ワガママ言っているのは承知ですが、お願いいたします!」
そう言って立ち上がり、俺の手を握る。
お、王女様の手が俺に......
「い、いや......俺は別にいいけど」
俺は困ってる人を放ってはいれない主義だ。
別に目の前で嘆願する美少女王女様の誘惑に負けた訳ではない。
「本当ですの!?ありがとうございます!」
俺の手をもっとぎゅっと握る王女様。
アカンやろ......
けど喜んで貰えて良かったし、俺だってカフコ族の人がなんでこんな脅迫状を送ってきたのか気になる。
「それでは夜に出るのは危険ですので、明日の明け頃に出発させて下さい、それで問題ありませんか?」
「大丈夫だよ」
こうして俺は王女様のプチ遠征に付き合うこととなった。
カエデがいなくて少し不安だが、まあ言ってもすぐ近場だし大丈夫だろう。
そして明け方......
俺は約束通りコアネールさんの部屋に来た。
「さあ、出発ですわ!!」
コアネールさんは鎧で身を守り、槍を背負いヤル気満々である。
「スゴいカッコだねコアネールさん」
「ええ、城の兵士の鎧をお借りしましたの!似合いますか?」
コアネールさんはくるっと1回転して見せた。
「あー、オデコが綺麗だよ」
「オデコのことは言わないで下さる!?王族の決まりで女性は前髪を上げないといけませんの!」
コアネールさんはカチューシャで前髪を上げている。
綺麗で大き目のオデコがとてもチャーミングだ。
「そうなんだ、大変なんだな王族も」
「それはいいので出発しますわよ」
「でもどうやって出発するの?」
ここは城の最上階のコアネールさんの部屋、廊下や門前には兵士が沢山いるし、見つかってしまったら連れ戻されてしまうだろう。
ここからどうやって外に出るのだろうか。
「簡単ですわ、ここですの」
コアネールさんは自分のベッドを指差した。
え?ベッド?
「ベッドで何すんの?」
「これを少しズラすですの」
コアネールさんはベッドを掴んで、後ろに引っ張った。
すると、徐々に何か床が抉られたような跡が見えてきて、良く見るとベッドの下に大きな穴が空いてあるのが確認出来た。
「ええ!!何これ!?」
「こっそり城から抜け出すために私が作った抜け穴ですの、ここから城の裏手に繋がっていますの」
「抜け穴って......」
魔王様と同じことをしていたコアネールさん。
魔王様も魔族の姫、王族なんてお金持ちで羨ましいと思っていたが、色々と悩みがあるもんなんだな。
しかもこの床、大理石で出来ているがどうやって穴を空けたのだろうか。
「さあ、行きましょうか」
俺が王女様の行動力に呆気を取られていると、コアネールさんは穴へと入っていく。
あーあ、これはまた大変な遠征になりそうだ。
穴を進んで進んで、俺達は城の裏手にある井戸から顔を出した。
スゴいなこんなところに繋がっているのか。
恐らく、事あるごとにここから抜け出し、町へ繰り出していたのだろう。
「さて、ここまで来れば後は町の外に出るだけですわ」
コアネールさんは井戸から抜けて伸びをしながら言った。
俺も井戸から外に出た。
「カフコ族の森へはどっちに向かうの?」
「サンベルスから西へ出るので彼方に......」
そう言いながらコアネールさんは黙り込んだ。
じーっと一点を見つめている。
「ん?どうしたの?」
俺はコアネールさんが向いている方を向いた。
そこには人影があり、美しい銀色の髪に刀を腰に装着している人が立っていた。
あれは紛れもなく......
「カ、カエデ......」
「やっぱり、何か企んでたのね」
カエデは眉を細めて怒っている様子である。
「なんでカエデがここに?」
「昨日の晩、密会する約束してたでしょ?私、耳が異常に良くてちょっとした物音でも聞こえるのよ」
そうだ、カエデは物音に敏感である。
また人の殺気を感じ取ったり、感覚によるモノの判断がずば抜けている。流石は勇者と言ったところか。
「っで?二人で何をするつもりなのよ?」
俺はコアネールさんを見る。
冷や汗をかき、考え込んでいる様子のコアネールさん。
「じ、実は......」
コアネールさんは全て本当のことを話した。
この状況、それしか選択肢はないだろう。
「なるほどね」
カエデは納得したように腕を組んだ。
「お願いします!見逃して下さい!」
コアネールさんは頭を下げた。
「私は自分で何とかしたいのです!事を荒げればどちらにも良いことはありませんの」
「はあ......」
カエデはため息を付き、後ろを向く。
「それならそんな軟弱者だけじゃ危険でしょ。2時間で戻るわよ」
そう言って歩き出すカエデ。
それを見て、コアネールさんはパーッと明るい顔になった。
「あ、ありがとうございます!確かに軟弱さんだけでは心配でした!」
そう言ってカエデに付いていった。
ええっと......
俺帰ってもいいかな?
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