第30話 カエデとの関係
それから何秒だろうか、しばらく沈黙が続いた。
カエデ、ロドロス様は無表情、俺とコアネール様は驚きの表情を見せている。
「そうか......」
ロドロス様が口を開く。
そして、小さくため息を吐くとカエデを見た。
「それをすまないことを聞いてしまったなカエデ殿」
「いえ、そんなことは......」
「しかし娘さんがこんな美人で立派になって、シロガネも喜んでおるじゃろうな!」
ロドロス様は笑顔を見せた。
しかしその笑顔は無理をしているように見える。
「お父様......」
コアネール様もその無理を理解しているのか心配そう声をかけた。
「大丈夫だよコアネール、さてカエデ殿、ロイ殿、長旅で疲れたであろう。今日はこの城に泊まってゆくいい、コアネール、案内頼めるかの?」
「は、はい、それは大丈夫ですが......」
「ワシはそろそろ自室に戻る、ゆっくりしていきなさい。カエデ殿、ロイ殿」
そう言ってロドロス様は車椅子を引き、部屋を出ていった。
ロドロス様、悲しそうだったな。
しかしカエデのお父さんが亡くなっていたなんて......魔王討伐に出て殉職したってことはまさか......
いや、ゴラドさんが言っていたが魔王様の父親も魔王様と同じで平和主義者だったと聞く。魔王に殺されたとは考えたくはないが......
だがそうなってくるともしかしてカエデが魔王様討伐を目指している理由って......
「聞いてますの!?」
「「えっ!!」」
俺とカエデはコアネール様の声に同時で驚く。
どうやら俺は考え事していたせいでコアネール様の話を無視してしまっていたらしい。
そしてカエデも同様みたいだ。
「私がせっかく案内して差し上げようとしているのに二人して無視しないで下さるかしら?」
「ご、ごめんなさいコアネール様」
「まあいいですわ、一応自己紹介から始めますの。私はコアネール・サン・サンベルス、お見知りおきをお願いいたしますわ」
そう言ってペコっとお辞儀をするコアネール様。
コアネール様は鼻筋の通った綺麗な顔立ちに平均ほどの背丈、カチューシャで長い髪を後ろに全て流している。
そして、衣服や仕草からその気品の高さが伺え、如何にもお嬢様と言ったような風格である。
同じお嬢様で魔族の王女である魔王様とかけ離れた気品の高さである。
と胡座をかいでお菓子をボリボリ食べる魔王様を想像する俺だった。
「私はカエデ・エーユエジルと申します。こっちが付き人のロイ・レンズです。先程はこのバカが失礼しましたコアネール様」
俺をバカ呼ばわりするカエデ。
誰がバカだよ誰が!
そう思ったが、さっきの出来事があったがいつも通りのカエデで少し安心した。
「いえいえ、では部屋へ案内するので付いてきて下さい」
コアネール様は広い廊下を俺達を連れて進む。
「着きましたわ、ここですの」
コアネール様は部屋が沢山並んだ廊下で立ち止まる。
この一室一室が客室なのか?
「それではえーっと......」
コアネール様は少し考え込む。
「どうしたの?」
「いえ、お二人は寝室は同じの方が都合がいいですか?」
そう聞いてくるコアネール様。
つまりコアネール様は俺達が恋人関係にあるのかないのか決めかねているのだろう。
「え、えっと、まあ部屋が勿体無いし同じ部屋で」
「別々でお願いします!」
俺の言葉を遮り、断固とした態度で言うカエデ。
まあそうなるわな!!
「そうですか、ではこちらの部屋とあちらの部屋をお使い下さい、必要な物は基本的に部屋の中に用意されているはずですが足りない物がございましたら、お声掛け下さい」
そう言うコアネール様。
流石はサンベルス城、久しぶりに優雅な夜を迎えられそうだ。
「ありがとうございます。コアネール様」
カエデがお礼を言う。
「いえいえ、それでは私は失礼させていただきますが、そこの殿方」
そう言ったコアネール様は俺の方を見て、近付いてきた。
「肩にゴミが付いていらっしゃいますわよ」
そう言って俺の肩の糸屑を右手で取ってくれた。
と同時に左手で俺のズボンのポケットに何かを入れた。
「え?コアネール様、これは......」
「それではお二人供、ごゆっくりなさって下さい」
そう言うとお辞儀をして去っていった。
なんだったんだ......
俺がポケットの中を手で確認すると、どうやら手紙のような物を入れられたらしい。
ま、まさか......ラブレター!?
いやー、俺って罪な男だなー。
「どうしたのよ?」
「うえっ!?」
俺が考え事していると、カエデがジトーっとした目で俺を見てきた。
「なんかコアネール様に言われたみたいだけど?」
「い、いや......その」
コアネール様がカエデに内緒で渡してきたってことは隠したいってことだよな?
ここはあんまり他言しない方がいいか。
「いや、何でもないよ」
「ふーん、まあいいけど、他人のアンタが誰とどうしようが関係ないし」
そう言って自分の部屋の扉を開けるカエデ。
他人って......
「......他人とか言うなよ」
そう言った瞬間カエデは動きを止めた。
「俺達もう仲間だろ!他人なんて......悲しいじゃねーか」
「何よ、アンタの方が私そっちのけで他の人とコソコソやってることばっかりじゃない」
カエデは振り向いて、その鋭い目を俺に向けて言った。
「そ、それは......」
「だから別にアンタが誰とどうしようが私には関係ないって言ってんのよ」
「で、でも他人なんて悲しすぎるだろ!お前はいつも人と距離を置きすぎなんだよ。もうちょっと心開いてもいいんじゃないのか」
そう言うとカエデはより鋭い目付きに変わり、俺を睨み付けた。
「そんなこと他人のアンタに言われたくないわよ!」
「そういうところのことを言ってんの!俺はお前の助けになりたいんだよ」
俺がそう言うと、カエデの表情は徐々に暗くなり、下を向いた。
「アンタにはわからないわよ」
そう言うとカエデは後ろを向き直し、ドアノブを掴んだ。
「カエデ......」
「隠し事なんて誰にだってあるでしょ、私にも他人に心を開けない理由があるの」
扉を開くカエデ。
その背中はいつもの頼りがいになるカエデの背中とは全く違う弱々しい背中だった。
「俺、助けになれないかな?」
「なれないわよ、それにアンタだって隠し事あるでしょ」
「隠し事?」
「アンタ、私に隠れて夜中何かしてるでしょ?私が気付いてないとでも思った?」
「え......」
そう言うとカエデは部屋に入っていった。
ま、まさかカエデに魔王様のところへ言っていたことがバレていた!?
いや、今の様子だとどこで何をしているかまではバレていないようである。
しかし、まさか何かやっていることがバレていたなんて......
俺はカエデに包み隠さず話すつもりだ、このタイミングで話してしまってもいいかも知れない。
よし!俺はカエデに本当のことを言う!それでなんとか俺を信用してもらいたい。
カエデは俺にとって大切な人の一人だから。
意を決した俺はカエデが入っていった部屋のドアノブに手をかけ、勢い良く扉を開ける。
ガチャッ!!
「カエデ!!俺、実は......」
扉を開けると、カエデは服を着替えようと下着姿になっていた。
あ、下着姿になってもスレンダー体型。
じゃなくて!!
「アンタね......何急に入ってきてんの」
「い、いや!いきなり着替えてるとは思ってなくて!ハハハ」
「うるさいバカ!出てけ!!」
カエデは隣にあった小さい箒を投げ付けた。
「びへっ!!」
それは俺の顔面に直撃し、俺は扉の外へ吹っ飛び、倒れる。
「ふんっ!!」
カエデは扉を勢い良く閉めた。
や、やべー、本気で怒らせちまった......
どうしよう......
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