第11話 勇者VS忍者
「ジ、ジジイ!!テメー何者なんだよ!!」
「だからさっき言ったじゃろ、ワシは尻の冒険者じゃ」
「嘘つけ!今の強さは並の......」
「何よ、騒々しい」
そうこうしていると、カエデさんが戻ってきた。
「カ、カエデさん!このジジイめちゃくちゃつえーぞ!」
「え?このおじいさんが?」
カエデさんはそれを聞くと、ジジイをじーっと見つめた。
そして、少し考える仕草を見せる。
「なんじゃ見つめられると照れるのう」
「おじいちゃん、良ければ私とも手合わせ願えるかしら?」
カエデさんは真剣な表情で言った。
カエデさんとこのジジイの手合わせ......
俺は唾を呑んだ。
「ほっほっほ、なんじゃケツのお嬢ちゃんも手合わせしてくれるのか、願ったり叶ったりじゃ」
そう言いながらジジイは構える。
ジジイは右手を握り、腰の辺りに下げ、左手を大きく突き出す構えを見せる。
「......」
それを見てカエデさんは一瞬ピクリと反応したが、カエデさんも腰の刀に手を添えた。
「おじいちゃん、始めるわよ?」
「ほっほ、いつでもどうぞ」
ザッ!!
その瞬間、カエデさんは地面を大きく蹴り、一瞬にしてジジイの目の前に移動した。
は、速い!!
「ハッ!!」
そして、刀を抜きながら素早く振るう。
ガキッ!!
しかし、ジジイはそれをクナイで防いでいた。
ク、クナイ?
って言うかスゲー!!
カエデさんの全く見えない抜刀斬りを完璧に防いでみせた。
やはりこのジジイ、只者ではない。
「ほっほう、ワシが避けきれないとは、お嬢ちゃんやるのう」
「くっ!!」
キンッ!!
カエデさんとジジイはお互いの武器を弾き合い、距離を少し空けた。
「おじいちゃん、元忍者部隊の人ね」
カエデさんはそう言った。
忍者部隊?
「カエデさん、忍者部隊って何?」
「帝国軍の諜報部隊、簡単に言えば帝国を裏で支え、敵の情報を密に収集する部隊のことよ」
カエデさんは構えながら言う。
「な、なんだそりゃ!そんな部隊が帝国にいたのかよ」
「まあ帝国の裏の部分だから知らなくて当然だと思うわ。私はお父さんが元帝国の兵士だったから知ってるけど」
帝国の裏の部分......
まああれだけの国を支える帝国にそんな組織がいてもおかしくはないが......
って言うかカエデさんのお父さん帝国の兵士だったの!?
「さっきの構えからして忍者部隊の人だとは思ってたけど......まさか」
カエデさんはグッと剣を握り締める。
「ほっほっほ、なんじゃワシも有名なんじゃの。そうじゃ、まあワシはもう忍者部隊を辞めた身じゃ」
ジジイは無表情で言った。
「......聞いたことがある、帝国の忍者部隊を裏切り、数多くの機密情報や金品を盗んで逃走した大罪人、名前はカツラという年配の男性だったはずだわ」
カエデはジジイをじーっと見る。
「ええ!?ジジイ、犯罪者だったのか!?」
カエデさんがジジイを睨みながら言うのに対し驚きを隠せない俺。
ジジイはそれでも無表情のままだ。
「大罪人、犯罪者、そう言われるのも慣れたわい。年寄りは細かいこと気にならなくなるのじゃ」
「そうだとするなら、容赦しないわよ」
カエデさんは剣を両手で握り、構える。
「ほっほっほ、始めから容赦などいらんぞ」
「そう......なら」
またカエデさんは地面を大きく蹴り、前進した。
そのスピードはさっきの比ではない。
「こっちもやりやすいわ!!」
ブンッ!!
そのままカエデさんは剣を横に振る。
が、ジジイはしゃがんで避けていた。
「なっ!」
それに驚くカエデさん。
「ならばこちらも本気を出すとしよう」
そう言うと、ジジイは両手を重ね、人差指と中指だけを立てた。
「忍法・火喇叭」
ボッ!!
そう言うと、ジジイは口から無数の火の玉を飛ばした。
あの至近距離からの攻撃はカエデさんの素早さを持ってしても避けきれない。
危ない!!
「くっ!!」
しかし、火の玉が当たる瞬間にカエデさんの身体から電流が流れ、火の玉を掻き消した。
そしてカエデさんは後退し、少し距離を空ける。
「ほほう、今ので軽く仕止めるつもりだったが、雷遁を使うのか」
「ええ、あなたは火の魔法を使うようね」
「忍者部隊では魔法では無く忍法と呼ぶのじゃ」
二人はジーッと見つめ合う。
すげー......魔法を魔法で打ち消すところなんて初めて見た。
「ほっほ、ではワシも少し本気を出そうかの」
ジジイはまた両手を合わせ、印を結んだ。
それはさっきの印とは違う形をしている。
「忍法・分身の術」
すると、ジジイの隣に一人、また一人、ジジイが増えていき、四人になった。
「ぶ、分身した!?」
「恐らく魔力で自分の分身を成形してるのだと思う」
驚く俺に解説するカエデさん。
「そんなことが可能なのか!?」
「理論上はね、だけど普通はそんな魔力成形方法のやり方なんて誰も知らない。忍者部隊に伝わる特殊な訓練でもあるのだと思う」
カエデさんはジジイを睨みながら言うが、少し顔が強張っている。
「正解じゃカエデちゃん、忍法は忍者部隊に伝わる秘伝の巻物を見ないと絶対に修得出来ないのじゃ」
「フッ!じゃあ今あなたとやり合えること自体運のいい話ね!!」
その瞬間、カエデさんは左手を剣から離し、ジジイに向けた。
それとほぼ同時に雷撃がジジイに向かって飛んだ。
ドゴッ!!
っという音とともに地面には焼け跡が出来るが、四人のジジイはいない。
ジジイは全員が跳んで避けていた。
「ほっほう、なかなかの魔法だが」
「まだまだヒヨッコというところじゃ」
跳んだ四人のジジイの内、二人のジジイが手裏剣を投げる。
その手裏剣は真っ直ぐカエデさんに向かって飛んだ。
「ハッ!!」
カキンッ!!
カエデさんは剣を横に振り、手裏剣を打ち落とした。
「まだまだ!!」
そのまま回転して跳び上がるカエデさん。
「セリャッ!!」
ザシュッ!!
カエデさんは一人のジジイを剣で突き刺した。
「ぬわっ!!」
ボンッ!!
しかし、ジジイは煙となって消えた。
どうやらカエデさんが斬ったジジイは分身だったらしい。
「やりおるな、だが背中ががら空きじゃ」
他のジジイの分身が上空のカエデさんの背後に回り込んでいた。
カエデさんは上空、あのままでは動けない。
「これで終わりじゃ」
ジジイはカエデさんの背中目掛けて足を振り抜く。
危ない!!




