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身体で慰めってなんじゃろか!

そのあと何があったのかはよくわからないが、俺は家のベッドで寝ていた。


セリナに話を聞くと、ぶっ倒れたのでダマが背負って帰ってきたらしい。


それにしても、あの子、廊下で演劇部の勧誘した子だったのな。なるほどだから、じっとみてきてたのか。

たしか名前は美咲ちゃん。


美咲ちゃんはセリナが連れて一度うちで保護したらしいけど、素性がわかったからもういいよ、という母上様の指示で家に帰したらしい。


保護は?しなくていいの?て感じだけど、良いならいいよ。よくわからんけど。

いや、まあ本当に意味がわからんけど、問題ないならいいよ。



「てか、マスクはさすがに外して帰ったよな?」


あのマスク姿で街中歩くとかやべえと思う。


「素性がバレてはいけないと思いましたので、つけたままにしました」


「まじかよ」


恥ずかしい!あの子、美咲ちゃんはなんも言わなかったのか?


「あ、てか、襲われてたのは美咲ちゃんでいいんだよね?」



ここに来て違ったらなんか嫌だから一応聞いておこう。


「ですね。クラスメイトですので、私の覚えてます。明日にでも話を聞きますか?」



「まあ違和感なく話せそうなら少し話してみようかな?」


「わかりました」


それにしても携帯を見ると22時、日付も変わっていない。


力を使ったら倒れるのは変わらないけどそんなに長い時間は寝ずに済んでるな。

まあ力の大小も関係あるだろうけどさ。



+++



そんなわけで放課後である。

俺は理由もわからずセリナとダマに連れてこられた美咲ちゃんと会っていた。


しかし、美咲ちゃんはすぐに俺のことが分かったらしく、その上、「あぁ!昨日のは瀬里奈さんと守さんだったの!」と何か納得したらしい。


「はい!あ、昨日は本当にありがとうございました!」


角度にして九十度のお辞儀を俺とダマ、セリナにする美咲ちゃん。

動きが小動物みたいで可愛らしい!


「よくわかったな!気にしないで!まあ、今度からは何かを予知したら俺に連絡してくれないかな?その方が危なくないからさ」


「おう!さすが幸信!ナンパテクが光るね!!」


「いや、どちらかといえば保護者と呼んでくれ!」


「幸信さん、不潔です。」


「いや、セリナ!だから違うって!」


そんな俺らのやり取りに美咲ちゃんがお腹を抱えて笑いだした。


「あはは!みなさん面白いですね!」


急な出来事にダマとセリナはきょとんとした顔をしている。

俺からしてみるとおそらく、これが彼女の本来の姿なんだろうなと思う。


「美咲ちゃんは笑ってる顔が一番だね。」


「へ?」


今度は美咲ちゃんがきょとんとする。


「その笑顔で未来を変えてこうな!もちろん一緒にね!」


俺は手を差し伸べた。それを見て美咲ちゃんはさっきの笑顔で握り返した。


「今回は予知にないところで危うく私が殺されてしまうところでしたし、これからは一緒に未来を変えてください!」


「あはは、そうだったね。俺がやっちゃったね・・・ま、まあとりあえず美咲ちゃんが救えて良かったよ。」



+++



「にしても、幸信さん。」


「なんだ?」


「もう少しチームプレーで敵は倒したほうがいいと思います。たしかに幸信さんは強いですが、第二第三の敵がいた場合がどうにもならなくなってしまいます」


「え、あ・・・ごめん。」


セリナはほんのりむすっとしている気がする。


「ほらほら、セリナ、怖い顔してるでしょ!かわいらしい顔がもったいないからやめなさい!幸信も必死だったんだよ。」


ダマが俺をフォローする。

意外と仲裁うまいタイプか?


「ダマ、お前いい奴だな!」


「ダマって言うなし!まもるって呼んでくれし!」


「わりぃわりぃ。」


守と少し戯れてから、ふと、なぜ俺は先走ってあの蝙蝠男を殺したのかを考えた。


あの時は確かに必死だった、と思う。

でも、楽しかったから夢中だったというのが適切だったかもしれない。

それに気が付いた時、俺は自分の狂気ににわかに恐怖した・・・。



俺は、一体どうしてしまったんだろう。



+++



蝙蝠男の事件から数日が経ち、俺は演劇部の部室にいた。

もちろん、部活があるからだ。

そして、今日は一年生が体験入部に来ている。


「演劇部の活動を見に来てくれてありがとう。」


月野先輩が一年生に向けて感謝の言葉を述べる。

今回来ているのは、瀬里奈、守、美咲ちゃん、と美咲ちゃんの友達の女子二人と男子が五人。


さっきから男子がデレデレしているところを見ると、女子狙いかと勘ぐってしまう。


「では、いつもの演劇部の活動に参加してもらって、それから入部を考えて貰おうか。」


「ですね〜、いつも通りに頑張りましょうか〜!」


なんだか、しょうちゃんの「いつも通り」てところがやけに強調されている感じがした。何か企んでいるのだろうか?


その後、ジャージに着替え、部室棟の前で軽くストレッチしてから、校外の沼の畔で新入生を含むみんなが集まった。

そして、月野先輩がそれを確認して口を開いた。


「さて、いつも通りこの舗装された道を真っ直ぐ走って、白鳥の銅像があるところでUターンしてここまで戻る。これで一セットだ。」


うむ。いつもやってるメニューだ。これをいつもは二セットやって、体育館の舞台に登って緞帳どんちょうを降ろしてから再びストレッチ、その後発声練習をするんだが・・・。


「いつも通り男子は七セット、女子は四セットして貰う!」


「了解で・・・え?」


「いつも通りだよね〜男七、女四セット!もっと増やしてもいいと思うんだけどな〜」


「そ、そうだよね!」


少々どぎまぎしながらあんちゃんもそれに乗る。


「え、あんちゃんまで?どういうこ」


「私はここでみんながサボらずしっかりしているか一人一人確認する!翔子は白鳥の銅像の前でみんなの来た回数を確認だ!では翔子がスタートしてから五分程したらスタートする!」


一年生達はみんな「は、はい!」とか「わかりましたー」とだけ言う。


一年生はわかっていないのだ。

白鳥の銅像からここまでの往復は一キロちょっとある。それを四or七セット。男子だったら合計八キロ以上あるかもしれない。

運動してない奴が走ったら相当辛い。


「じゃあ先行きますね〜」


そう言ってしょうちゃんが小走りに走り出した。


いつもは女子二セット、男子三セットなのだ。なぜこんな暴挙に出たのか。

まあ明白か。


さっきまでデレデレしていた男子が狼狽している。

やる気のない奴に入ってもらっても困るからな。

まあ俺もここは乗っておくか。


「いつもとか言って、いつもはもっと多いじゃないですかー、優しいですね月野部長!」


俺は全員に聞こえるように、ニカッと先輩に笑いかけると先輩はニヤッと笑ってとんでもない事を言い出した。


「うむ・・・それもそうだな、では櫻井。お前はいつも通り十セットやってこい!新入生に演劇部のタフさを見せて一位でゴールしてみせろ!」


「任せてください!」


いつもの命令と同様に一つ返事でOKしてしまったが、よくよく考えると理不尽な内容だという事に気がついた!


えぇえええ?!この人頭おかしいだろ!?

十セットて十一キロ超えるぞおい!!


そんな俺にあんちゃんが小悪魔のような笑顔で俺の背中を叩いてくる。


「頑張っ!櫻井くん!」


「おう!頑張るよ!」


その様子を見ていた神村が茶々入れてきた。


「なーに杏瑠に励まされてデレデレしてんだよ!オラ!元気よく走ってこいよ!」


バゴッと思っきし俺の背中を叩く神村。その手はパーではなくグーだった。


「おま!神村痛ぇよ!お前のせいでゴールまで辿り着かなくなったらどうしてくれるんだ!」


ここでちょっと俺が完走できなかった時の保険をかけておく事にした。まあ意味はないだろうけど。


「ほぉ?こんなもんで?くくく!まぁいいや、完走できなかったらこの神村さんが身体を使って幸信を慰めてやるよ!」


と言って、胸をポンと叩いた。その衝撃でぽよんと揺れる大っきなお胸・・・


「「「え?」」」


あんちゃんと美咲ちゃん、そして部長までがポカーンとしている。

セリナは、その様子を見てよくわからないといった様子で首を傾げている。


身体を使って慰めて、ど、どんなことじゃろか?一瞬むふふな感じの変な妄想に走りかけてから、即座に返す事にした。


「よーし、今の言葉で完走できそうだ!神村ありがとな!」


「おー!良かった良かった!て、おま、それどういう事だこら!」


そんな優歩にキレながら部長がスタートの号令をかける。


「優歩!!黙れこの馬鹿女!!・・・そろそろ五分経った!みんな出発しろ!」


その合図でみんなとのやりとりを中断し、猛スピードで俺は走り出した。



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