最終話 この世界の真実
やっと、最終話です。
最終話
この世界の真実
「しかし、意外とあっさりだったな。 まあ、あれで死んでくれなきゃ、あの大きさだ。かなり苦労しただろうが。」
「でも、遂にやりましたわ! アラタさん、おめでとうですわ!」
「はい! 2か月足らずで攻略してしまうとは、流石はアラタさんです。」
「しっかし、あのやり方は、おっかないっす! あたいも耐えられるか少し不安だったっす!」
「とにかく、後はあの扉をくぐるだけね! きっと、『この世界の真実』というのがあるはずよ!」
「この肉、食べれそうもないですにゃ。」
皆は異口同音に、喜びの声をあげる。
相変わらず、場違いな事を言っているのもいるが、まあいだろう。
いつものことだ。
「そうだな。まずは魔核を探そう。俺はこの魔結晶を集める。」
散らばっていた水晶の破片は、鑑定するとやはり魔結晶だった。
俺は部屋の中央に立ち、手の平を下に向けて、気力を込める。
「集まれ! 魔結晶!」
即席の魔法だが、成功のようだ。
部屋中に散らばっていた魔結晶が、俺の足元に集まり、高さ1mくらいの小山になる。
俺は、スコットがやったように、その魔結晶の山に気力を込めると、合体し、元の水晶よりは幾分小さくなったが、巨大な一つの魔結晶になった。
持って確かめると、気力が1万近くも増えた。
もし、神殿のが同じ物なら、勇者召喚に使う気力は、約1万ということになる。
破格だな。
もう使う事も無いだろうが、取り敢えずアイテムボックスにしまう。
「う~ん、やっぱりないっすね。魔核も壊れてしまったかもっす。」
「でも、あの爆発じゃ仕方ないわね。どんな魔核だったのかは気になるけど、もうあたし達には必要ないわ。」
確かにリムの言う通りだ。
これで攻略完了なら、もう俺達には何も要らないはずだ。
「ふむ、じゃあ、行こうか!」
「「「「「はい!」」」」ですにゃ!」
俺達は扉を潜る。
今までと同じようにワープの小部屋があったので、全員で登録する。
ただ、今までと違うのは、そこで行き止まりということだ。
これ以上、下への通路は無い。
「取り敢えず、乗ってみよう。」
俺達は部屋の中央の魔法陣に乗る。
やっぱり出た!
頭の中に、1階から90階までの、10階ごとの階層が表示され、一番下に、『神の間』というのがあった!
「ふむ、ファンタジーものの王道だな。皆、構わないな?」
「「「「「はい!」」」」」
流石に全員少し緊張しているようだ。
声が若干上ずっている。
ワープすると、やっぱりいやがった!
イオリだ!
後、見知らぬ顔が2つ。
こいつらが、この世界の神か?
既に閻魔に会っている俺にとっては、特に違和感が無い。
全く何も無い部屋。
足元も見えない。
宇宙空間に漂っているという感覚か?
ただ、重力はちゃんと感じられる。
「やっと来たか! まあ、楽にしてくれ。お前達は俺様の果たした試練に耐えたのだから、俺様と同等と認めてやるぜ!」
見知らぬ顔の一つが話しかけてきた。
銀髪で、整った顔立ち。
身長は若干高いがそれでも、人間サイズ、180cmくらいか?
何か、とてつもなく凄い奴が出てくると思っていたので、少し拍子抜けだ。
しかし、俺様?
どっかで聞いたような口調だな。
確か、80階層の主だっけか?
そいつがそう言うと、3人掛けのソファーが2つ、出現した。
そして、一人掛けのソファーも3つ。
ふむ、俺達はその3人掛けの方に座れという事だろう。
皆で顔を見合わせてから、座る。
俺の隣には、クレアとミレアが座った。
イオリと、見知らぬ顔2つも、一人掛けのに腰掛ける。
「初めまして。俺は、近衛新。異世界から召喚された、勇者なんて呼ばれている者だ。」
「クレアですわ。アラタさんの従者であり、許婚者ですわ。」
「ミレアです。以下同文です。」
「カレンっす! 同じくっす!」
「リムよ! アラタの最初の器にされた人間と言えばいいかしら?」
「サラですにゃ。アラタさんの妻候補ですにゃ!」
銀髪の男は、俺達を見回してから、足を組み、答えた。
「俺様はロキ! この世界の神と言えば話が早いだろうな。で、隣のこいつは俺の息子だぜ!」
ロキが顔を向けた先には、狼顔のウルベンのような奴。
ただ、ウルベンとは違って、漆黒の毛並みだ。
「あ~、わいはフェンリルや。ちなみに勘違いせんといて欲しいねんけど、この姿は親父もやけど、あんさんらに合わせたってるだけやで。親父はそういう魔法、得意なんや。本来の姿は、まあ、さっき見たわな。あれや。あれはわいの分身みたいなもんや。かっこ良かったやろ? 弟の方は少しスケールダウンさせたけどな。」
あ~、なんか全て理解できた気がする。
ロキ、フェンリル、聞いた名だ。
俺達の世界の神話の住人だ。
それで、100階の主の狼、あれはフェンリルの分身だと言いたいのだろう。
そして、大蛇のほうが、こいつの弟なのだろう。
しかし、あれで小さくしているって言うのだから、本物はどれだけでかいのか、想像もつかない。
「うん、アラタ、思ったよりも遅かったけど、やっぱり来てくれたね! アラタとクレアとミレアには、もう必要ないけど改めて。僕は長野伊織! ここで君達が来るのを待っていたんだ!」
ん?
隣のソファーに座っているリムの様子がおかしい!
「え? お姉様?」
「あ~、リムちゃんだっけ。僕の身体は、多分そう。君のお姉さんのだと思う。因果なものだね~、姉妹で勇者召喚の素体にされちゃうなんて。残念ながら、僕は君のお姉さんのことは知らないよ。僕がこの身体に入った時には、ただの抜け殻だったからね。ただ、この身体をくれたことには感謝しているよ。」
「やっぱり、そうだったのね! でも、いいわ。お姉様は死んだと覚悟していたから。ええ! もうお姉様は居ない! すみません。続けて下さい。」
ふむ、道理で似ていると思った。
リムの髪の色が黒ければ、成長すればああなるのかもしれない。
何となく想像はつくが、俺もこれ以上を聞く度胸は無いし、今はそれどころじゃない。
「そうか、じゃあ、これで自己紹介も終わったな。お前等には既に見当がついていると思うが、このダンジョンは俺様が作った物だぜ! 目的はお前等のような優秀な奴を選別する為の、そう、試練の儀式だ! そして、選べ! お前等には3つの選択肢があるぜ! じゃ、フェンリル、イオリ、後は任せたぜ。で、決まったら、呼んでくれ。どうせ時間かかるだろうから、俺様は妻といちゃついてくるぞ。」
ロキはそう言って、姿を消した。
しかし、妻といちゃついてくるって。
偉そうな口調の割には、なんか愛嬌のある奴だ。
その後、フェンリルとイオリから説明を受ける。
3つの選択肢とは以下のことだった。
一つ目は、ロキに、一人一回だけ、この世界に関する事に進言する、つまり、お願いできる権利を得ることだ。
その内容には、この世界の理を変える事も含まれる。
何でも、一度だけであっても、叶うのならば凄い事だが、当然、ロキが認めないと実現されない。
ただ、どっかの国の王になりたいというくらいなら、簡単だそうだ。
二つ目は、このままここに残って、フェンリルのような、ロキの眷属になること。
ロキのファミリーとしての地位を得ることになるので、一回こっきりの一つ目とは違い、この世界でそれなりの発言力も得られるが、そうなると当然、今まで通りという訳にはいかない。
この世界の一般人とは、縁を切らされる羽目になる。
そして、3つ目は、ロキに挑み、彼を倒す事。
ロキは、元々居た、この世界を統べる神を倒し、この世界を引き継いだとのことだ。
つまり、勝てば、この世界の神になれる。
負ければどうなるのかは分からないらしい。
まあ、ロキ次第だろう。
「ふむ、それで、一つ目の場合、ロキに受け入れられなかった場合はどうなる?」
「あ~、それはやな、通る案が出るまで何回でもいけるで。まあ、親父がへそ曲げなかったらやけどな。ぶっちゃけ、ええ意見が欲しいだけや。」
「なるほど。それで、イオリ達はどうしたの?」
「僕達の場合は、皆で相談したよ。その結果、二人は最後の試練で死んだ2名の復活を望んだんだ。そして、それは叶えられたよ。僕達にはアラタのような魔法は使えなかったからね。それで、一人はこの世界の理を変えることを望んだんだ。」
やはり、最後の試練で死んだ奴が出たと。
そして、当時の彼女達には、俺のように蘇生魔法が使えなかったから、ロキに頼んだということか。
「じゃあ、その一人が望んだ、この世の理の改変とは?」
「ああ、それは貴族と奴隷のシステムだよ。彼はこの世界の奴隷の扱いに対して、良くなって欲しいと願ったんだ。そして、その効果はアラタ達も受けたよね。」
あ~、信頼補正か!
あれは昔からあったのではなく、イオリ達のおかげだったのか!
ならば、イオリ達はあの補正なしでクリアした事になる。
時間がかかって当然だ!
「うん、かなり受けている。そのおかげでクリアできたようなものだし。」
「うんうん、ウルベンは間違っていなかった! もっとも、君達が強くなり過ぎちゃったんで、ダンジョンは大分修正されたようだけどね!」
イオリはそう言って、フェンリルを睨む。
「そら、簡単にクリアされたら、試練の意味があらへん! せやから、あんさんらのダンジョンだけは途中からは特別仕様や! わいらが出張ったのもそうやし、他のダンジョンの階層主もばんばん使うたった。」
ふむ、ナインティードラゴンの90の意味は、シスの90階の階層主だったと考えていいようだ。
でもって、ラストマスターが、トロワの90階に降ろされて、100階には彼等が来たと。
ひょっとしたら、深層の名前のついていなかった奴も、他のダンジョンの階層主だった可能性が高い。
「しかし、90階以後、魔物が出なかったのは何故だ?」
「ああ、あれはな、強い魔物を出せば出す程、あんさんらが強くなってしもたからや。ほんま、人間ってのは適応力が高いっちゅうか、何でも利用しよる。その結果、わいらはあのざまや。あんな滅茶苦茶なやり方でやられたんは予想外や! あの手は70階で懲りたと思うとったんで、忘れとったわ! もっとも、あんさんの最初の魔法だけでも、かなり効いてもたんやけどな。」
なるほど、彼がうっかりさんで良かった。
しかし、あの最初の魔法がかなり効いたとなれば、正攻法で行っても、勝てた可能性は高いと見ていいだろう。
「それで、イオリは何を望んだんだ?」
「僕がここでアラタ達を待っていたということから分かるよね? 勿論、僕と君達とで、ロキをぶっ倒して、この世界の神になりたい! きっと楽しいよ~!」
まあ、大体予想はついていたがな。
「それ、イオリ一人じゃなくてもいいのか?」
「うん、今の僕だけじゃ勝てると思えないからね。ロキにも、お前一人じゃ相手にならんって、言われてしまったよ~。」
「ふむ、で、援軍待ちという訳ね。」
「そ、そ。勿論協力してくれるよね!」
しかし、いきなり神と戦うって言われてもな~。
「う~ん、返事はちょっと待ってくれ。だが、イオリ、自分が強くなることは考えなかったのか?」
そう、5年もあったのだ。
ダンジョンで鍛えれば、俺よりも強くなれたはずだ。
「あ~、それなんだよね~。ダンジョンを一度クリアした人は、再び入ってもいいけど、レベルとかは上がらないんだよ~。なんか、そういう仕組みらしい。」
ふむ、自分に挑戦する奴を育てる気はないと。
当たり前か。
「せや。それと、ダンジョンにはもう一つの目的があるんや。」
なんだろう? フェンリルが割ってきた。
「え? それは一体?」
「この世界で戦争が起こりにくくする為や。親父が統治するまでは、この世界の人間共は、戦争ばっかしや! まあ、わいらも他人の事は言えへんけどな。せやけど、わいらの統治する世界では御免や! で、日本って国のゲームのシステム、真似したんや。」
なるほど、道理で、お約束なダンジョンだった訳だ。
もっとも、今のゲームでは、子供騙しの部類だがな。
この世界との時間の流れがどうなっているかは分からないが、俺の世界のかなり古いのを真似したのだろう。
「しかし、それで戦争が減るのか?」
「あんさんも見たやろ? ダンジョンあるから、皆、戦争どころやあらへん!」
確かに、魔物が出るから、戦争に戦力を消費しすぎれば、自国の治安が保てない。
帝国もだが、各国共に、冒険者にはかなりの予算を割いているはずだ。
それに、人間よりも悪役を作ることで、お互いの悪感情を半減できる。
しかし、俺達勇者が居たから、戦争になりかけた訳でもあり、防がれたとも考えられる。
では、俺達の召喚された意味は?
「うん、納得だ。だが、そのダンジョンと、俺達勇者はどう関係してくる? それだけが理由なら、異世界の俺達まで呼び出す理由が分からない。」
「そこや。ダンジョンを作ったはええんやけど、人間共は、諦めてしもたんや。で、魔物はほったらかしで、なんちゅうか、進歩が無いねん! 挙句に、また戦争したいってアホまで出る始末や! せやから、誰かにクリアさせたらって、考えてん。勿論、あんさんらの世界の知識を普及させたい、っちゅうのもあるで。」
「なるほど、それでチートな異世界勇者か。誰かにクリアさせることによって、ダンジョンに再び興味を持たせて、技術発展を促し、更に戦力も割かせようと。」
しかし、現状、ダンジョンは、逆に勇者に任せっきりの感がする。
「そうや。でも、なかなか巧くはいかへんようやねん。イオリや、あんさんらみたいに挑戦すんのは一握りや。後は、それなりに力つけたら、はいさいならや。まあ、今のとこは、戦争になってへんし、ええねんけどな。後、わいも親父も、人間共の意見は聞きたいし、力のある奴なら仲間に入れたい。勿論、わいらに勝てる奴が出るなら、それはそれでええ。弱いもの虐めは嫌いやけど、勝負は大好きや。せやから、あんさんらやったら、楽しめるって親父も喜んどったわ。」
ふむ、これの方がダンジョンの意味が分かり易い。
要は、あの試練を乗り越えられるような、優秀な人間が欲しいという訳だ。
勿論、この世界を統治する為の意見だけでも構わない。
多分、そういうことだろう。
更にフェンリルは続ける。
「それとな、もしあんさんらが良かったら、あんさんらの元居た世界に、一緒に喧嘩を売りに行きたいねん。わいらは色々と因縁あるからな。あんさんらをこっちに寄こしてくれた閻魔も協力してくれる手筈やしな。」
閻魔、裏でそんなこと考えていたんかい!
『君が望まない限り、もう会う事は無いと思う』という、言い回しは、そういう事か!
しかし、俺も、元の世界の神がどんな奴かは知らないが、喧嘩を売りに行くほどの理由は無い。
そこへイオリが口を挟む。
「ね。アラタ、分かっただろう? こいつら、この世界を良くしたいのは本当らいしんだけど、僕達の世界への恨みも多分に残っているんだ。僕も元の世界には特に義理は感じていないけど、そこまでしたいとも思わない。なので、僕が出した結論は、こんな不純な神は要らない! ロキと戦って、この世界の神になる! だから手伝って!」
ふむ、俺も彼女の事は良く知らないが、直情、直球、正義感タイプなのだろう。
しかし、返答はまだだ。
よく考えてからだ。
「まあ、イオリがどう思おうと、イオリの勝手や。わいらはこの世界を良くして、ええ人材を集めて、他の世界も吸収したいだけや。せやから、イオリがダンジョンに、召喚された連中を送り込もうとしてくれたんは歓迎や。せやけど、ダンジョン攻略に直接関わるような、助言や物の受け渡しは禁止や。それされたら、またいじらなあかんようになるさかいな。」
ふむ、それで彼女は何も教えられなかったのだろう。
物の受け渡しに関しては、第三者を通じてならいいという事のようだ。
でなければ、【解除】の小太刀とかは手に入らなかったはずだ。
それに、全部禁止にされたら、こっちも困る。
少なからず、売って金にしようと思っていたしな。
「ところで、イオリ、ひょっとして、ここからなら、俺達の行動、全部見えてた?」
「うん、この部屋じゃないけど、全部見える部屋があるよ~。それにこの空間は時間が経たない。だから、僕もあれから殆ど年を取っていないんだ。なので、僕はそこで、ずっと君達のことを見守っていたんだよ。クレアとミレアを助けたのは、あまりに無謀な子が居たから、思わず手が出ちゃったという感じだね~。まあ、あの時はまだ僕の仲間も一緒だったから。今じゃ、あいつらも僕の為に下界で協力してくれているけどね。それで、また訊くけど、あの【魔法の極意】ってなんだい? 後でいいから教えて欲しいな~。」
イオリにとっては、あれは喉から手が出るようなスキルだろう。
この世界の神と戦おうと言うのだ。
あれくらい会得してなきゃ、話にならない。
「フェンリルさん、俺が教えるのは構わないのか?」
「何のことか分からへんけど、あんさんらとイオリは、もう、わいらと同格や。あんたら同志で何しても文句はつけられへん。ただ、ダンジョンの攻略に関して、まだの奴に教える事だけは勘弁して欲しいだけやで。」
なるほど、イオリには構わないが、ミツルに教えるのはもう無理と。
これはかなり残念だ。
ただ、あの調子なら、あいつも、そのうちこの部屋に来るだろう。
フェンリルの様子じゃ、他はトロワよりは易しいようだし。
また、下手に教えて強くさせてしまい、結果、難易度をいじられても困るしな。
そして、良く考えてみれば、もし俺達がここでイオリに協力しないのならば、イオリにも教える意味が無い。
というか、もし、このままロキにこの世界を統治させたいのであれば、逆効果である。
「もう一ついいか? 貴方達が直接、人間に関わって、命令するということはしないのか? その方が手っ取り早いと思うが?」
「あ~、それは無しや。神っちゅうのは、見えないところから、見守ってるだけなんが理想なんや。わいらは、今は、そうできるような土台作りをしとるんや。せやから、親父もこの世界を乗っ取ってからは、一回だけ顔見せしただけや。」
ふむ、それがアウガル教の始まりな訳ね。
「分かった。考えさせてくれ。考えが決まったら、またここに来ればいいんだな?」
「せや。急がんでええ、保留もありやから、よう考えてや。イオリも今んとこは保留扱いやしな。お勧めは親父の眷属になって、わいらと一緒にこの世界を統治することや。他所に喧嘩売りに行くんもおもろそうやろ? それと、別に帰らんでも、イオリみたいに、ずっとここに居てくれてもかまへんで。後で他の部屋も案内するわ。」
「うん、だが、やはり一旦帰って、皆と相談したい。お前達もそれでいいか?」
「私は勿論構いませんわ。アラタさんがしたいようにすればいいのですわ。」
「そうですね。これは大変な事です。帰って、皆でゆっくり考えましょう。」
「あたいは、アラタさんが決めればいいと思うっす。それで、あたいも一旦は帰りたいっす!」
「あたしは、アラタに危険な事はもうさせたくないわ。でも、アラタが望むなら、ついて行くわ。」
「私はお風呂に入りたいですにゃ!」
「じゃあ、そう言う事だ。悪いが、イオリもそれでいいか?」
「うん、仕方無い。僕も、本心から賛同してくれなきゃ困るしね。待ってる~。」
俺達は、その部屋からテレポートして、屋敷に帰る。
しかし、本当に迷う。
彼女達と暮らすだけなら、俺達にとって、この世界にとって、いいと思えるであろうことをロキにお願いするだけだ。
あの様子なら、理に適った要求なら通りそうだ。
しかし、イオリに協力してやりたいという気持ちもある。
彼女がこの世界の神になるのなら、そう悪い世界にはならないだろう。
勝てるかどうかは流石に分からんが。
ちなみに、俺が神になるという考えは今の所は無い。
こういうことは、本気の奴に任せるべきだ。
帰ってからは、マリンに対して、ダンジョンに関しては何も言わなかった。
また、皆も何も言わない。というか、言えない。
100階をクリアしたことすらだ!
彼女も何か察してくれたのだろう。
何も聞いて来ない。
本来ならば、祝って貰いたいところなのだが、とても気まずい。
イオリがあそこに籠るのも、納得な気がする。
自分達が、この世界とは切り離された感覚だ。
さて、どうする?
ここは、皆で風呂にでも浸かりながら、ゆっくり考えるとするか!
『出来ると思えば、出来るのですにゃ!』
第二章 完
―完結―
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。m(_ _"m)
リムとイオリの身体のことや、他の勇者のこと等、書きたかったことはまだまだあったのですが、長くなるだけのような気がして、書きませんでした。
また、詳しく書いてない部分も沢山ありますが、そこは、この後の展開も含めて、皆様のご想像にお任せしたいと思います。
設定はちゃんとしているつもりなのですが、魔結晶とか、ウルベンの事とか。
続編は、現時点では特に考えていません。
評価や感想をして下さった方、本当にありがとうございます!
まだまだ未熟ですが、皆様の御意見を次の作品に繋げたいと思いますm(_ _"m)




