反則技
反則技
あれから三日後、ミレアは問題無く、リベンジを果たした!
リベンジとは言うものの、実質は、あの即死攻撃に耐えられるかどうかだけなのだが。
ステータスを確認すると、ちゃんと【即死耐性中】がついていた。
もっとも、俺達は大に昇格したが。
俺は色々聞きたかったのだが、今回は俺達が扉を開けるなり、巨大美少女【ラストマスター】の【オールデス】により、自身もお引きも一瞬で死んでしまう。
結果、何もせずに奥の扉が開くという、あまりにもあっけないものだった。
なので、あの魔法の効果は、どうやらその場に居る者、己を含めて全員に作用するのだと、認識したほうがいいようだ。
何とも捨て身な魔法だ。
「よし、これでミレアもクリアできた訳だ。で、どうする? 一旦戻るにしても、俺としては、91階層を覗いてからにしたいのだが。」
そう、前回同様、新顔の顔だけ拝んでからというつもりだ。
「そうね。でも、今度は無理しないでよ。相手から来た場合はすぐに撤退よ!」
「リム、勿論だ。でも、前回のはどうしようもなかっただろ?」
「そうですね。私も二度も死にたくはありません。用心するに越したことはないでしょう。」
一度死んだミレアが言うと、重みが違う。
俺達は、ミレアにワープの小部屋で登録を済まさせ、そろそろと、通路を降りて行く。
当然、先頭は囮の魔物だ。
今回は百人前に務めてもらう。
奴は、生きている時には【魅了】の効果がつかなかったのだが、死んでからは効いた。
重いので、俺のアイテムボックスにでも、2体が限度だ。
サラの、『囮に使うなんて勿体無いですにゃ。』という意見を説得するのが大変だった。
「ん? 何も居ないぞ? 危機感知レーダーにも何も表示されてないよな?」
俺は、【シースルー】と、【ファーサイト】を同時に使って、階層全体を確認したが、何も見当たらない。
「そうっすね。あたいも何も感じられないっす。リムちゃんは?」
「ええ、反応無いわ。」
「ふむ、俺も反応は無い。一体どうなっているんだ?」
「スワレントラップの事を考えると、私達では認識できないだけなのかもしれません。用心すべきです。」
「確かに、ミレアの言う通りだ。予定外だが、魔物を確認できないのでは意味が無い。注意しながら進もう。サラちゃん、部屋に入ったら、中心部分に【サラの剣山】を適当に投げてくれ。」
「はいですにゃ。」
小部屋に入るが、何も変化は無い。
囮に部屋の中央まで進ませるが、何も起こらない。
サラが、広範囲にダガーを投げてみるも、徒労に終わる。
「う~ん、訳が分からんな。取り敢えず、下への通路への最短ルートを、この手順を繰り返しながら進もう。」
「「「「「はい、」」」」ですにゃ。」
しかし、その後も何の変化も無い。
俺は、もしやと思い、【地獄の業火】で部屋全体を焼き尽くしてみたが、意味は無かった。
「う~ん、遂に92階層への通路まで来てしまった。降りてみるべきか?」
「魔物が出ないなら、楽ちんですにゃ。どんどん行きますにゃ!」
確かにサラの言う通りではあるのだが、あまりにも不気味だ。
俺は、このダンジョン、前から、何から意図的なものがあるような気がしているので、何かの罠ではないかと勘繰ってしまう。
しかし、もし罠があったのなら、この時点で既に引っかかっているはずだが?
「まあ、疑い出したらきりが無い。進んでみよう。」
92階層も同様だった。
何も無い。
それでも囮を先頭に立てて、慎重に進む。
「本当に何も無かったな。もう93階への通路だ。」
「今までのパターンでは、ここから新顔が出ますわ。ひょっとしたら、百人前と、スワレントラップみたいに、ペアで出るのかもしれませんわ。」
「ふむ、単独では無力なので、揃ってからお披露目か。クレア、それはありかもしれんぞ。」
だが、読みは当たらなかった。
93階にも魔物は居なかったのだ。
どうせならと、94階にも踏み入るが、やはり無人、というか無魔物。
これを作った奴が居るとすれば、手抜きだな。
「う~ん、分からん。遅くなったし、今日はここで休もう。屋敷に戻ったところですることもないしな。サラちゃんじゃないが、このまま魔物が出ないようなら、一気に100階まで行かせて貰おう。」
そう、俺達の装備は、現状、ほぼ完璧だ。
やることがあるとすれば、さっきの90階層の主の魔核を、リムの帽子に付与するだけだ。
ちなみに、魔核を取り出したのはリム。
根に持たれていたようで、彼女が、自分がやると言い張ったので、サラに見えないようにしてからやった。
「それが良さそうっすね。でも、こんなのダンジョンじゃないっす! ただの洞窟っす!」
カレンの怒りは理解できるが、どうしようもない。
俺達は適当な行き止まりなっている小部屋を見つけて、野営の準備をする。
当然、前の小部屋に囮を配置するのも忘れない。
結界石も奮発して2個使う。
どうせ、攻略してしまえば要らなくなる。
このままなら、後数個もあれば足りるので、余るのは目に見えている。
翌日も全く同じだった。
スライムすら居ない。
全くの無人。無魔物。
魔結晶だけは落ちていたので、ダンジョンであることをかろうじて認識できる。
「う~ん、本当に何も居ないようだ。遂に99階層まで来てしまった。前回のようなことがあると嫌だから、今日はここで休もう。明日はいよいよ100階! ゆっくり休んでから挑戦だ!」
「「「「「はい!」」」」ですにゃ!」
その晩の食事は豪勢だった。
クレアが今まで節約していたのを一挙に放出したのだろう。
例の刺身まで出た。
「なんか、最後の晩餐みたいで、落ち着かないな。今までなら、魔物を倒した勢いがあったのだが。そもそも魔物が居ないので拍子抜けだ。」
「そうですわね。でも、遂に99階ですわ! アラタさん、明日が終わったら、その、約束の方をお願いしますわ。」
「あたいもっす! これが終わったら、結婚っす!」
「ミレア・コノエ、なんか新鮮です。早く慣れないといけませんね。」
「あたしは、別荘が欲しいわ。湖の畔の一軒家なんていいわね。」
「私は今まで通りがいいですにゃ。でも、アラタさんは、終わったら、次は何しますにゃ?」
ふむ、サラの言う通り、俺はこの後の事は全く考えていなかった。
正直、4人を娶る事までだけだ。
そう考えると少し不安になる。
「そうだな。しかし、とにかく明日だ。全てはそれからだ。今日は早く寝るぞ。」
そうは言ったが、その晩、色々な事が頭を巡り、寝付けない。
皆も同じようで、ベッドに寝転がってはいるのだが、寝てはいないようだ。
端っこのサラだけが寝息を立てている。
俺が起きて、紅茶でも飲もうとソファーに移動すると、サラ以外の全員起きてくる。
「ふむ、お前達も同じか。そもそも魔物が出ないから、あんまり疲れていないんだよな~。」
「全くそうっす! このダンジョンがいけないっす!」
「でも、明日、階層主を倒せれば、アラタさんの望みが叶うのですわ。わくわくしますわ。」
「この世界の入籍の仕方、確認しておきますか?」
「お姉様方、まだ気が早いわ。でも、準備は万全ね。アラタらしい作戦だわ。」
うん、全ては明日だ。
細かい事を考えてもどうしようもない。
イオリが言った事が本当なら、今までの謎も、全て明日解明されるだろう。
ただ、問題は、明日の主に勝てるかどうかだ。
しかし、リムの言った通り、俺達は明日の為、寝る前に相談し、作戦を立てた。
おそらく、どんな魔物が出ようとも、少なからず効果が期待できると思う。
ただ、もしこのダンジョンを作った奴が見たら、反則だと言われそうだが。
「それで、悔いは残したくありません。その、キスだけでいいです。して下さい。」
ミレアの顔が迫ってくる。
俺も嫌じゃないのだが、なんか変なフラグが立ちそうで、少し迷う。
しかし、彼女の唇が触れると、そんなものは吹っ飛んでしまった。
思いっきり抱きしめてやる。
「次はあたしよ。」
リムも抱きしめ、キスをする。
リムの舌が侵入してくる。
「リムちゃん、長いっす!」
今度はカレンだ。
俺が尻尾をモフりながらキスしてやると、彼女はあっさりと果ててしまったようだ。
だから、何故そんな物を外に出しておく?
「あらあら、カレンは満足しましたのね。じゃあ、最後は私が。」
クレアはいつも通り濃厚だった。
そのまま押し倒されるが、なんとか踏み止まる。
そう、ここにはサラが居る。
皆も、慌ててクレアを引き剥がす。
その後は、皆でお茶を飲み、ベッドに戻る。
両脇にミレアとリム、更にその外側にクレアとカレン。
文字通りの肉林状態であるが、俺はそのまま寝入ったようだ。
朝、目覚めると、何故か胸の辺りがモフモフしている。
見ると、俺の胸の中でサラが丸くなっていた。
どうやって、この厳重な警戒網を掻い潜ったかは分からないが、まあいい。
ダンジョンで皆と寝るのも今日までだ。
最後くらいはと、可愛い耳をモフってやる。
「あ~っ! サラちゃん、それ違反っす! 禁止っす! モフられるのはあたいの特権っす!」
ふむ、カレンが気付いたようだ。
「お前は昨日・・・、あ、いや、何でもない。」
危うくサラが居るのを忘れるところだった。
あまり性的なことはよろしくない。
カレンの尻尾は立派な、その、弱点である。
皆もこれで起きたようだ。
案の上、サラはマッハで俺から引き剥がされる!
う~ん、もう少しあの感触を楽しみたかったのだが。
食事を済ませ、野営地を引き払う。
これで最後かもしれないと思うと、何か、感無量だ。
だが、それも階層主に勝ってからだ!
俺はそう考えて、気を引き締め直す。
ここで彼女達を失ったら、元も子も無い!
「思った以上の大物だな。ひょっとしたら、主も居ないのでは、と、期待していたのだが。」
「そうっすね。あたいのレーダーでは、でっかい赤点が1個、ほぼ部屋全部の大きさっす。」
「いや、カレン、2体居る。片方がでかすぎて、もう一体はそいつに隠れているだけだ。」
「それで、どんな感じですにゃ?」
「うん、一体は蛇の化物だ。部屋いっぱいにとぐろを巻いている。もう一体は、これまた巨大な狼。その蛇の上に立っている。5mくらいありそうだ。」
蛇の方は、漆黒で、あのとぐろを解けば、100mくらいあるのではなかろうか?
俺の国の、伝説の龍が実在すれば、あの感じだろう。
違うのは、角はあるのだが、短い。
また、手足も無い。
顔付きは獅子のようで、鬣みたいなのが首の周りに生えている。
狼も漆黒だ。
ただ、この狼は、ただでかいというだけで、それ以外に特徴は無い。
せいぜい牙が6本見えていることくらいか?
遠くから見れば、今まで見た狼の魔物と同じに見える
あと、少し気になるのが、部屋の中心に巨大な、真っ赤に輝く水晶のようなものがある。
あれは、色は違うが、城の神殿にあったのと同じ物ではなかろうか?
そして、やはりあれは巨大な魔結晶と考えるべきか?
もしそうなら、あいつらの気力は無尽蔵に近い!
「それで、あの作戦で行くの?」
「勿論だ、リム。じゃあ、全員準備してくれ。今回は相手も気付いていないようだ。」
「「「「「はい!」」」」」
よし、準備完了だ!
「じゃあ、開けるぞ! まずはリム! 突っ込ませろ!」
「はい! 行きなさい! 二人十六脚!」
ふむ、名前までつけたのか。
まあ、見た通りなのだが、百人前の死体を魅了化し、背中を合わせた状態で縛り、背後の死角を無くしたものだ。
こいつらは横には移動できるが、前後には無理。
なので、この状態でも問題無く歩ける。
俺が扉を開けると同時に、二人十六脚は口から泡を吐きながら、部屋に突入する!
「よ~来たな! 待っとったで! つうても少しやけどな。 まずは自己紹介や! わいは・・・、って、おい! ちょっと待たんかい! そいつをどないするつもりや!?」
巨蟹が突入すると、巨大狼の方が喋ってきやがった!
ふむ、まあ、予想通りだな。
関西弁には驚いたが。
しかし、もう情報は要らない。
80階、90階の奴も喋ってきたが、大した情報は持っていなかったし、どうせこれで最後だ!
それに、答える暇があるのなら、先手必勝で行ったほうが遥かにいい!
俺は奴の言葉を華麗にスルーし、次の指示を出す。
「次、クレア、ミレア、サラ、投げ込め!」
「「「はい!」」」
これは一度70階で使った戦法だ。
ダイナマイトの魔核を利用して、誘爆させる作戦である。
あの時は、スライムが爆風で分裂してしまい、成功か失敗か良く分らなった。
しかし、今回は、前回と違って物量が違う!
5個を網で束ねて、それを一人が2つ持つ。
計30個のダイナマイト!
あれ以来、使わずに取っておいて良かった。
予定通り、部屋の中心から少し離れた場所に、固まらないように、均等に投げ込まれる!
「よし! カレン!」
「はいっす! 無敵!」
カレンが扉の前に立ち塞がる!
「ちょ、待てっちゅうとるやろ! そんなん反則や!」
巨大狼が文句を垂れるが、知るか!
大蛇の方も、目をぱちぱちさせている。
そして、その大蛇のとぐろの上を、二人十六脚が、部屋の中心目掛けて駆けて行く!
「リム!」
「はい! 泡を撒きなさい! 二人十六脚!」
2体の巨蟹の口に貯まっていた泡が、一斉に宙に放たれる!
「よし! 退避! カレン頼むぞ! 踏ん張ってくれ!」
「はいっす!」
俺はそう叫ぶと、カレンの陰に入る!
後の4人は扉の陰に隠れる!
俺は、宇宙創成、ビッグバンをイメージし、気力を込める!
「爆ぜろ! この世の始まり!」
部屋の中心に、巨大な炎の塊が出現し、一気に膨張、爆発する!
凄まじい轟音が響くが、当然、それだけでは終わらない!
百人前2匹の、無数の泡爆弾、そして、クレア達が投げ込んだダイナマイトの魔核、それらが一斉に誘爆する!
音の洪水だ!
途中から、音が全く聞こえない!
俺は、カレンを後ろで支えながら、必死に耐えるが、二人纏めて吹き飛ばされる!
「チッ、俺にも使えるだろ! 無敵!」
俺は、吹き飛ばされながら、必死に気を練る!
壁が迫ってくるが、無視だ!
俺の身体が真っ赤に光る!
よし! 成功だ!
そのまま壁にぶち当たるが、何の痛みも無い!
「ふむ、終わったかな? 全員、返事しろ!」
俺は、通路の端まで飛ばされたようだ。
ステータスを確認すると、気力は流石に半分を切っていて、残り300くらいしかない。
おそらく、あの、【この世の始まり】が大幅に食ったに違いない。
体力も、少し減っているだけで、ほぼ無傷のようだ。
ん? 返事が無い!
ヤバい!
全員あの爆発で死んだか?
確かに思った以上の爆発ではあったが、連中が、あの程度で死ぬとは思えない!
特に、カレンには【無敵】がかかっている。
最低でもカレンだけは無事なはずだ!
俺が起き上がって、周りを見渡すと、目の前にカレンが近寄ってきた。
更に、全員、俺に向かって駆けて来る!
うん、大丈夫じゃないか、何故返事しない?
あ~、そういう事か。
「ヒール!」
俺は全員を選んでヒールをかける。
「「「「「アラタさん!」」」」」
ふむ、あの爆音で俺の聴覚は失われていたようだ。
「おう! 俺は大丈夫だ! 皆は?! 階層主は?!」
「あたいは大丈夫っす! 部屋の中は、まだ見てないっす。」
「あたしも大丈夫よ! 少し耳が痛かったけど、今ので治ったわ。」
「私もですわ!」
「私も大丈夫です!」
「ぴんぴんしてますにゃ! 主は・・・、まだ見てないにゃ。」
俺を気遣う暇があったら、主を確認して欲しかったのだが、まあ仕方無い。
「縮地!」
俺は、彼女達を残して、扉の前に移動する。
中はまさに爆撃の痕だ。
無数の肉片らしきものが散らばり、中心にあった水晶も無くなっており、破片らしきものが辺りに散乱してる。
奥を見ると、いつもの扉が開いていた!
次回は、いよいよこの世界の真実とやらです。
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