答えられないイオリ
答えられないイオリ
「近衛様、今の術は? それとこの石みたいな状態は?」
ヤットンが矢継ぎ早に質問してくる!
「あ~、ヤットン、済まないが、後にしてくれ。それよりイオリ! 聞きたいことがある!」
俺は呪文を唱えようと硬直していたイオリを呼び止める!
こいつ、間違いなくテレポートでとんずらする気だったはずだ!
「あちゃぁ~、でも、そうだ、僕にも聞きたいことはあったな。で、何が聞きたいんだい?」
「いっぱいあるが、まずはあれだ。リム、あの階層主を出してくれ!」
リムが巨大美少女の死体をテーブルに出す。
大きなテーブルだが、はみ出してしまう。
「こ、これは?」
またしてもヤットンが聞いて来る。
「ヤットン、それも後だ。それで、イオリ、こいつ、知っているよね?」
「うん、知っているよ~。カサードさんに確認されたら一緒なんで、答えられるかな。こいつは100階層の主、【ラストマスター】だね~。」
「やはりか! こいつはトロワの90階に居た! どういうことだ?」
「それには答えられないな~。ただ、アラタはもう気付いているんじゃないかな?」
「まあ、ダンジョンによって、魔物も、階層主も変わることは知っている。しかし、流石に100階のとなれば別だろ? それにこいつ、『最後の試練』とか言っていたぞ。」
イオリは少し考えているようだ。
大方、どこまで答えていいのかを判断しているのだろう。
「ごめんよ。それも答えられない。でも、そいつの言った事は嘘じゃないと思うよ~。なので、これ以上は勘弁して~。でも、そうだね、これだけは言える。今のアラタは、僕なんかよりも遥かに強い! じゃあ、今度は僕の番だ。あの、【魔法の極意】ってなんだい?」
俺は驚いた!
俺がイオリより強いという発言にもだが、彼女にも知らないことがあるというのが意外だった。
「え? イオリなら、当然知っていると思っていたよ。それに何故、俺が【魔法の極意】を習得した事を知っている?」
「あ! しまった! 今のは忘れて! まあ、これくらいなら問題無いと思うけどね。じゃあ、僕はボロを出さないうちに退散するよ。テレポート!」
これを最後にイオリは消えた。
うん、確実に彼女には制約がかかっている。
しかし、本当に謎の人だ。
今日、ここに現れたのは、多分、カサードとの約定のせいだろう。
『フラッド帝国が勇者の脅威に曝された時、それを排除する義務を負う。』
これだ。奴隷じゃなくなった二宮は勇者だからだ。
その後、ヤットンには、少しだけ説明してやる。
【反射】の効果を破る魔法があること。
【石化】という効果があること。
【魔法の極意】に関しては、適当に誤魔化した。
イオリでも知らない事を、彼に教えるのは憚られたからだ。
それに、俺の仲間でもまだ無理なのだ。
彼に理解できるとは思えない。
それでも、ヤットンは目を輝かせ、何度も礼を言う。
「やはり、あの時、私はあのお誘いを断るべきではなかったのかもしれません。少し後悔しております。」
「じゃあ、ミツルのパーティーはどうだ? まだ空きがあるのだろう? 残念ながら、今の俺達にはもう空きが無い。」
「そうですね。妻が許してくれるのなら、考えてみます。」
ヤットンとも、これで会話を終わらせ、俺はアイテムボックスに【ラストマスター】を仕舞う。
「じゃあ、リムはこれで帰ってくれ。皆には解決したと言って、買い物にでも行くといい。俺もすぐに戻るつもりだが。」
「え? 私も行くわ。魔核を取り出すだけでしょ?」
う~ん、できれば、その作業をリムにも見て欲しくないのだが。
「ふむ、仕方ないな。テレポート!」
俺は一人でトロワの50階層に飛んだ。
流石のリムでも、俺がどこの階層に飛ぶかまでは分からないはずだ。
ワープの小部屋で主の魔核を取り出す。
やはり、人型、それもでかいとはいえ、美少女だ。
かなり気が滅入る。
吐き気を抑えながらも、何とか取り出せた。
驚いたことに、身体の仕組みは人間とほぼ同じようで、腹、恐らくは子宮にあたる所に魔核はあった。
罪悪感が半端ない。
主の遺体?はそこに放置しておくのもなんなので、51階層まで降りてから捨てた。
後は魔物が処分してくる事を願うのみだ。
屋敷に戻り、俺は再び風呂に入る。
血まみれの身体を洗い流したかったのだ。
すると、リムが入って来た。
「あたしを放って置いて、二度風呂とはいい度胸ね! あたしも付き合うわ!」
かなりお冠のご様子だ。
「なんだ、リム、皆とは行かなかったのか?」
「ええ! 3人はアラタが帰る前に、既に買い物に行ったわ! 残っているのは、マリンちゃんとサラちゃんだけよ!」
「ふむ、だが、あの作業には、お前を付き合わさなくて良かったと思っている。作業の結果がこの二度風呂だ。」
「魔物は魔物よ! あたしを子供扱いしないで! それくらいの事は覚悟できているわ!」
う~ん、子供扱いしているのなら、彼女を抱いたりはしないのだが。
しかし、リムの機嫌はどうすれば直るのだろう?
「わ、分かった。お前を置いて行った事は謝る。そうだな。じゃあ、これから二人でデートしよう。俺も暇だし、買いたい物もある。どうだ?」
「え? それなら許すわ。アラタと二人っきりなんて、初めてかも!」
ふむ、ちょろいな。
しかし、現実はちょろくはなかった!
俺はリムの買い物に付き合わされまくる!
服屋に始まり、ランジェリーショップに終わる。
しかも、彼女の基準は厳しい。
1着買うのに、1時間は当たり前だ。
おまけに、終始俺の腕に絡みついているので、周りの目線が痛い。
悪い気はしないのだが、下着のコーナーで男を待たせるのは、容赦無いと言わざるを得ない。
屋敷に帰る頃には、陽が傾いていた。
しかし、あれだけはしゃいだリムを見たのは初めてだ。
苦労した甲斐があったというものだ。
だが、屋敷に帰ると、事態は急変した。
リムが美女軍団+サラ+αに取り囲まれる。
「リムちゃん、今日一日、アラタさんを独占した感想はどうですか?」
ふむ、良く考えれば、ミレアの言う通り、今日は魔核の回収作業以外はリムとずっと一緒だったな。
「ずるいですわ。私の下着も選んで欲しかったですわ。」
クレア、それは勘弁してくれ。
「その企みには気付けなかったっす! 完全にやられたっす!」
カレン、あれは企みとか、そんな知的なものでは無いぞ。
単なる俺の気まぐれだ。
「リム姉さん、今晩は、私が代わりにアラタさんと寝ますにゃ!」
ん? また恐ろしいことをほざいているのが居るな。
俺はまだ犯罪者にはなりたくないぞ。
もっとも今日、一人殺したようなもんだが。
「リムちゃん、皆と暮らす以上、独り占めは良くないざます。私にも・・・、いえ、何でもないざます。」
もう、何も言うまい。
しかし、リムも黙ってはいない!
「アラタが帰るまで居なかった、皆が悪いのよ! 一途にアラタのことを想っていれば、ちゃんとご褒美はあるのよ!」
リム、お前、俺の事を想っていたのではなく、怒っていただろ?
うん、これは、こっちに火の粉が飛んでくる前に消えた方が良さそうだ。
俺は工房に逃げ込んだ。
しかし、その後は全員で食事の準備をしてくれていたようだ。
台所から、笑い声が聞こえる。
なんだかんだ言っても、仲がいい。
俺の方は、あの階層主の魔核の効果を確かめられた。
しかし、【魔力+100】ってどうよ?
流石は90階の主と言ったところか。
ミレアかリムの装備につけるべきだろう。
ふむ、明日からは、90階層にミレアのリベンジだし、丁度いい。
翌日、俺達は再び80階層に飛んだ。
ブックマーク登録ありがとうございます!
評価や感想なんぞも頂けると励みになります。m(_ _"m)




