結婚式:ブーケトス-1
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終わった……。
カイトのいまの気持ちは、まさしく「ぐったり」、というのが一番正しかった。
本当に、彼女が望むような理想の式になったかはナゾなのだが、カイトとしては最大限に努力したつもりだった。
片っ端から、穴に足を突っ込んで回ったような気がしないでもないが。
しかし、これで晴れて自由の身になれるに違いない。
とっととこの教会を退場して、窮屈なこの衣装から逃げ出してやると思っていたカイトは―― この後、披露宴があることを、すっかり失念してしまっていた。
しかし。
披露宴の前に、もう一つ二つ、式の続きが残っていたのである。
ブーケトス?
リハーサルでやったことでさえ忘れているカイトだったから、実際やっていないことに関してはまったく分かっていなかった。
「そうよ、花嫁さんがブーケを投げて、それを独身女性が受け取るの…その独身女性が、次の花嫁になると言われているわ」
ご丁寧に、ハルコが解説してくれる。
何となく、聞いたことのあるような話だった。
まあ。
その場合、主役はメイなのだから、自分は何もしなくていいのだろう。
それくらいなら、もうしばらく我慢していてもよかった。
カイトは憮然としながらも、聖堂の入り口まで彼女をエスコートしてきた。
「はい、ここよ」
2人の立ち位置まで、しっかり決められる。
少し高い段差の上で、メイがブーケを軽く握り直す。
責任重大だとでも言わんばかりの、集中したような表情をしていた。
聖堂前では、独身女性の華やかな衣装で群れが出来ている。
わざわざブーケをもらうために集まってきたのだ。
関係ない連中は、脇に除外させられているようである。
その光景に、メイは深呼吸までしていた。
ブーケを受け取った女が、次の花嫁とやらになるかどうかなんて、結局は迷信なのだから、そんなに気合いをいれなくてもよさそうなものなのに。
しかし、そんな彼女さえ愛しい。
「はい、こっち向いてね」
ハルコに促されて、メイは独身女性の群れに背中を向けた。
へぇ。
何故か、そのシステムにちょっと感心してしまった。
誰に目標を定めるワケでもなく、本当に運まかせで投げるのだ。
メイが、軽く香りをかぐように。
いや、まるで別れを惜しむように、白薔薇のブーケに一度顔を埋めた。
その伏せた瞳の横顔が、カイトの視線を釘付けにする。
すぅっと。
寒空に吸い込まれるように、ブーケが空を舞った。
白い花が、白い弧を描いて、白い―― あっ!
ぶわっと、強い風が吹いた。
2月の冷たい風だ。
つむじのように円を描いて、いたずらに花の軌跡を振り回す。
「あっ…」
背中を向けたままの、メイが。
声を出した。
まだ、誰の手にもブーケは渡っていない。
落ちる寸前の花よりも早い、たった一言。
白く降る。
花は、白い指に抱き留められた。
けれども、まだ白く降る。
雪だ。




