結婚式:指輪の交換-2
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ああっ。
手袋をしたままの手を取られて、メイは慌てた。
どのタイミングで外したらいいのか、よく分かっていなかったのに、それよりももっと、彼の行動の方が速かったのだ。
しかし、さすがにカイトも気づいたらしく、はっと指輪を持った手を止めた。
そして。
二人、慌てて手袋を外す。
それは、ブーケと一緒に脇に控えていた人に預けた。
確かにリハーサルの時にも、こういう風にしなさいと言われていたのだが、すっかり忘れてしまっていたのだ。
それに。
ちらり。
山ほどのカメラが、自分に向けられている。
こんなに、たくさんのカメラに取り囲まれたのは、これが初めてだった。
恥ずかしくてしょうがない。
しかし、幸い彼女にはヴェールがかかっていたので、はっきりと顔を撮られることは―― あれ?
そこで、思い出したことがあった。
リハーサルでは、指輪の交換からヴェールを上げるように言われていたような気がする。
しかし、それをするのはメイ自身ではなかった。
彼に、上げてもらわないといけないのだ。
覚えてる、よね?
彼女は心配になりながらも、迫りくるカメラの山を怖がって、うまくそれを伝えられずにいた。
大体、こういう環境で、どうやって伝えられるというのか。
ようやく二人、手袋を外して、改めてもう一度向かい合う。
そしてカイトは。
おもむろに、彼女の手を掴んだ。
やっぱり。
彼は、リハーサルを覚えていなかった。
とにかくこのカメラの波から、一秒でも速く抜け出たいに違いない。
だから、こんなに慌てているのだ。
「カイト…」
ソウマの声が、カメラの波の中から聞こえた。
何かを、忠告しようとしている声だ。
しかし―― 逆効果だったようである。
彼は、かたくなに声の方を見ようともせず、ぐっと彼女の指に指輪をはめたのだ。
あっという間の出来事だった。
フラッシュが、いくらかまたたいたが、果たして決定的な瞬間を収めたかどうかは疑問である。
「あの、新郎さん…」
「社長…」
カメラマンたちの中から、それぞれの呼びかけでカイトに何か言おうとしているようだったが、彼はもう何も受け付けないという険しい表情をあからさまにしている。
ど、どうしよう。
これからどうしたらいいのか分からなかったメイだったが、無邪気なリングベアラーの男の子が、周囲の状況も知らない様子で、教えられた通りにあと一つの指輪を彼女に運んでくれた。
戸惑ったままの指で、それを受け取る。
「え、えー…それでは、次に新婦から新郎に指輪を交換いたします」
進行係も、このまま続けていかなければならないと思ったらしい。
「ゆっくりね、ゆっくりはめて!」
カメラマンたちは、どうやら次に期待をかけることに決めたらしい。
かなり、はっきりとした音量で指示が飛ぶ。
ゆ、ゆっくり。
赤くなりがら、メイはそっと彼の左手を取った。
ヴェールの下の方から見える空間を利用して、指輪の位置を調整する。
「ヴェール、ヴェール!!!」
もう一つの、大きな忘れ物に気づいていたらしい外野の声は、既に遅かった。
メイは、指輪をはめ始めてたのだ。
パシャパシャと、フラッシュがたかれる。
カイトの指が、イヤそうに緊張したのが分かった。
けれども、止められるはずもない。
メイは、心持ちゆっくりと。
しかし、決して遅くなりすぎないように、彼の指輪をはめきったのだった。
おかげで。
出来上がった写真のほぼ全てが、ヴェールをかぶったままの新婦が、新郎に指輪をはめているという珍しいものになったのだ。
奇跡的に、新婦に指輪をはめている姿の撮影に成功した写真が、一枚だけあって。
その撮影に成功したのは、ハルコから頼まれていたシュウだった。
メイの宝物の一つになった。




