表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

05、配役

さて、ゲームが始まる。

ここからは僕、セイギノミカタも主観的に楽しませてもらうよ。


セイギノミカタ「それでは、まずは役職決めから始めよう!

みんな円卓のへりにモニターがついてるでしょ?

そこに役職がランダムに表示されるから、見逃さないで!

これ自分にしか見えないから安心してね。

そして人狼の人は、もう1人のパートナーの名前も出るから、そこで確認してね!」


全員が円卓のモニターに目を落とす。

その顔は恐怖や、不安、焦燥が混じった顔だった。


セイギノミカタ「では、順番は前島くんから時計回りにいくよ!

この時の表情もヒントだよ。

ゲームはもう始まってる。

皆の反応見逃さないように。


ではまず前島康隆くんの役職はこれだよ!」


1人目、探偵前島。

彼の腹元がモニターで青白く光る。

彼の役職が今映っているのだろう。


前島「……ふん」


下に向けていた目線をゆっくり上げ、腕を組んだ。

鋭い眼光が面々に向く。


さて彼は何を引いたのだろうか?


セイギノミカタ「次は羽賀亮也くん!君の役職はこれだよ」


2人目、ギャンブラー羽賀。

羽賀のモニターも青白く光る。


羽賀「……うん」


頷く。

そしてなぜか先程役職が決まった前島に一瞥をくれたように見えた。


前島と羽賀が人狼だから?

いや安直過ぎる。決め付けはまだ早い。


セイギノミカタ「牧村芽衣子さん、あなたの役職はこれだよ」


3人目、牧村。

モニターに表示される。


牧村「……ふう」


安堵の息を漏らす。

これで人狼だったら大した演技力だな。


セイギノミカタ「次、織田武臣さんの役職。これだよ」


4人目、一番騒がしかった織田。

光る。


織田「……ちっ」


何故か舌打ちし、視線を集めている全員にガンを飛ばした。


ほう。

つまり何かしら希望の役があり、それではなかった反応ということか。


セイギノミカタ「山井小百合さん。あなたの役職はこれ」


5人目、ひきこもり山井。


山井「……」


膝を抱え、俯きじっとモニターを覗く。

表示されて10秒ほど。

彼女はついに何の反応も見せなかった。

ポーカーフェイスだな。


セイギノミカタ「九十九一さん。

あなたの役職はこれだよ」


6人目、殺人犯九十九。


九十九「……ほう」


モニターからゆっくり視線を上げ、卓の上で手のひらを組んだ。


うーん、わからない。

正直、初めの反応は参考程度。

これだけで人狼かどうかわかれば苦労しない。


セイギノミカタ「桐生星華さん。あなたの役職いくよ」


7人目、お嬢様桐生。

モニターに映る。


桐生「……」


何も言葉は発さなかった。

しかし一瞬手が震えたのを見逃さなかった。


参考程度だと思ったが、これは怪しいな。


セイギノミカタ「次だね。斉藤章三さんの役職これね」


8人目、舞台俳優斉藤章三。


斉藤「……うむ」


モニターを見た後、ゆっくり頷く。

そして落ち着いた振る舞いで、周りと目を合わせる。


さてこれは自分を見る周りの反応を見ているのか、役になり切ったのか?

俳優が人狼なら、不自然さを見つけるのは至難だ。


セイギノミカタ「では最後に、桃山日菜々さんの役職だよ」


9人目、桃山日菜々。

表示される。


日菜々「……はい」


啜りながらもモニターを確認した。

そして涙を拭い、キッと前を見据えた。


覚悟を決めた顔だ。

生きろの伝言が思ったより効いたようだ。

この顔付きで人狼だったら、かなり面白いがな。


さてこれでもう人狼2人はお互いを認知完了している筈。

誰と誰が人狼を引いたのだろうか?


セイギノミカタ「全員の役職が決まったね!

それではいよいよゲームを始めちゃうよー!」


突如、部屋中に鶏の声が響く。

朝を連想させる。


セイギノミカタ「ここは山奥にある9人が住む小さな村。そんな平和な村に、人に化け夜に人を喰らう人狼が紛れ込んだようです。

どうやらこの村には、

村人が3人

占い師が1人

霊能者が1人

騎士が1人

狂人が1人

人狼が2人

いるようです。

村民会議を開き、多数決で人狼だと思う人を1人処刑して下さい。

村民会議の時間は30分です。

生存者は現在、前島、羽賀、牧村、織田、山井、九十九、桐生、斉藤、桃山の9人。

それでは議論スタート!

じゃ、みんながんばってねー!」


ゴーンゴーンと鐘の音が部屋中に轟いた。

開始の合図が鳴る。

円卓の中心にあったディスプレイは、セイギノミカタから時計に切り替わっていた。

時計が30分から秒単位のカウントダウンを始める。


ついに始まった。


イラスト:あしかが様ver

挿絵(By みてみん)

1、前島康隆………探偵

2、羽賀亮也………ギャンブラー

3、牧村芽衣子……心理学専攻大学生

4、織田武臣………ヤクザ

5、山井小百合……ひきこもり

6、九十九一………指名手配殺人犯

7、桐生星華………お嬢様

8、斉藤章三………舞台俳優

9、桃山日菜々……女子高生


この中に2匹の人食い人狼が紛れている。


全員「……」


沈黙。誰も口を開かなかった。

こんなゲームやることに心から賛同出来るわけない。当然だ。


そこに最初に口火を切ったのは前島だった。


前島「さて、まず皆へ言いたいことがある。

俺はこんなゲームしたくない。

こんな理不尽に賛同出来るわけないし、命など賭けたくもない。

それは皆もそうだろう。


しかし、セイギノミカタとやらが本気なのはこの死体でよくわかった。


ここは人狼側になった者には申し訳ないが、さっさと人狼を処刑して終わらせようではないか。


不安なのはわかる。

だが俺が導いてやる。


この理不尽。適応出来ず、駄々をこねるやつから死んでいくぞ」


確かにそうだろう。

むしろゲームマスターの僕としては積極的に挑んでほしい。


前島「セイギノミカタか……

ふん、こんな真似が出来る異常者は俺が長年追ってるMr.ハロウィンかもしれないな。

しかし奴がどこの誰だろうが、俺は必ず生き残り本当の正義の裁きを受けさせてやる」


くく、面白い。

やれるものならやってみなよ。


織田「まあ確かにセイギノミカタとやらは許せんが、今はゲームに集中せにゃあのう」


前島「それに上手くいき、人狼2匹連続処刑すれば、村人チームは1人の犠牲で勝てるしな」


羽賀「何なら、人狼2人名乗り出てくれよ。

2人の犠牲で皆助かるなら、それが一番いいだろ。

ここは運が悪かったと思って頼むよ」


斉藤「……それは無理だろう」


桐生「そうよ!殺されるとわかってて、名乗り出るわけないじゃない」


前島「とにかく村人チームは人狼殲滅に向け、意思を統一しないと本当に全員喰われる。

現状を理不尽と思うのは、全員そうさ。切り替えろ」


九十九「……それはわかったが、ちょっといいかい?」


前島「何だ?」


九十九「全員が助かる道を探すのも大事だと思うんだが」


羽賀「は?どうやって?」


九十九「それを皆で考えるのさ。

村人チーム、人狼チームと対立させられて忘れてしまいそうだが、ここにいる全員被害者だろう?

セイギノミカタとやらに乗せられるな。

みんなで結託すれば、きっと全員助かる方法があるはずだ」


牧村「え?本当?」


前島「ふふ、今の発言で九十九は怪しくなったな。

綺麗事を並べて、人狼を探す会議の邪魔をしたいようにしか見えない」


桐生「そ、そうよ。殺人犯のくせに綺麗事を並べるのもおかしいじゃない」


織田「どうせ具体的な方法なんかないんじゃろう?」


九十九は黙った。

無表情だが少し悲しそうに見えた。


前島「さてじゃあそろそろ本気で人狼を探すか。安心しろ。俺は村人チームだ。

探偵の俺が必ず要素を拾ってやるから、思ったことはどんどん発言しろ」


9人がきょろきょろと視線をぶつけ合う。

この中の2人が人狼。誰が嘘つきなのか。


羽賀「なあ、君さ」


牧村「私?……はい?」


そんな中、ギャンブラー羽賀が隣の牧村へ話しかける。


羽賀「心理学出来るんだよな?

仕草とか言動で人狼とか、見つけれないの?」


牧村「え?……えーっと

ごめんなさい。私、あんまり講義聞いてなくて、そういうのはまだ出来ないや」


羽賀「くそ!そっか」


織田「……」


前島「……お前ら馬鹿なのか?

くだらんこと言ってるヒマがあるなら、その足りない知能で少しでも何か考えろ」


全くだ。

羽賀と牧村。今のやりとりでこいつらは人狼ではなさそうだな、とさえ思えてしまった。


牧村「んーと……あ!私も村人チームだよ!

役職は、ただの村人でした」


牧村が意気揚々に手を上げた。


前島「……バカ女が。村人カミングアウトはやめろ。

人狼側に役職を持ってる奴が絞られるだろうが」


牧村「え?絞られる?何で?」


前島「はぁ……

人狼2人は、自分達以外の残り7人が村人だとわかっている。

7人の中に、占い師、霊能者、騎士が紛れてる。

まあ人狼の味方の狂人もいるが、そこは大きな問題ではない。

お前が村人だと言うことで、役職持ちが絞られることがわからんのか?

人狼が一番殺したいのは、役職持ちだぞ」


牧村「……うーんと、よくわかんないけど、ごめんなさい」


前島「……まあこいつが村人かどうかわからんがな。

役職を持ってるが、村人を騙っている可能性も十分にあるぞ」


前島のこの言葉は人狼に向けた言葉だろう。

一度沈黙に落ちる。


斉藤「日菜々ちゃん。

大丈夫か?

友達が死体となって現れ、届きそうで届かない隣に存在しているのは、辛いだろうが黙っていては疑われるぞ」


日菜々が斉藤の方にゆっくり振り向く。


日菜々「は、はい。大丈夫です。

なるべく議論に参加するようにします。ごめんなさい」


前島「桃山日菜々か……」


前島が冷たい目で日菜々を眺めた。


日菜々「は、はい?」


前島「こいつ怪しいな。

今日は桃山を処刑してみないか?」


日菜々「え?」


桐生「何で?どうして?」


羽賀「この子が人狼なの?」


織田「ああ?理由を言うてもらおうか」


ほう、これはおもしろいな。


前島「ふん、具体的な理由はない。

だが俺は探偵だ。

万引き犯から殺人犯まで多種多様な黒を暴いてきた。


その経験による勘が言っている。

こいつだ、とな」


前島は日菜々に指をさし、宣言した。


羽賀「勘か。でも妙に説得力あるよな」


斉藤「何を言っている!それだけの理由で、友達が殺されたばかりの桃山さんを処刑しようと言うのかね?」


織田「ほーう。斉藤は桃山を庇うんやな」


斉藤「な、私は別に庇っているわけではないぞ!」


前島「いや、お前は庇ったぞ?

話さないと疑われるぞと呼びかけただろ?

何故、桃山の肩を始めから持っている?

もしお前ら2人が人狼なら納得出来るがな」


牧村「え?舞台俳優の演技なんて、見抜ける自信ないな……もし人狼だったら怖いと思っちゃうよ」


斉藤「私は人狼ではない!!

庇ってもいない!

人を殺すんだぞ!ただ具体的な根拠を言えと言っているんだ」


前島「桃山と斉藤、何人か貴様らを疑い始めたぞ。

特に桃山、何か反論はあるか?」


全員の目が日菜々に集まる。


日菜々「わ、私は……

人狼では、ないです。

信じて下さい」


ポロポロと涙が落ちた。


九十九「ふん、醜いな。下衆ども。

精神的に参ってる女の子に、よってたかって。まさにこの社会の縮図だ。

私は1人でも全員助かる方法を考えるぞ」


前島「黙れ……好きにしていろ」


羽賀「んー、もし今のが演技なら大したもんだよね」


織田「では桃山。お前は誰が怪しいと思っとるんじゃ?」


日菜々「私?」


日菜々が悩む素振りをする。


前島「ふ、今から考えるのか?

それはお前が人狼で、人狼を探す必要がなかったからなんじゃないのか?」


牧村「あ、なるほど。

確かに人狼なら、疑われないようにどうするかとか、誰を襲うかとか考えてるはずだもんね」


日菜々は前島にマークされてしまったようだな。


日菜々「ち、違うよ。

……あんまり人を陥れることは言いたくないって困っただけで、怪しいと思った人は……いるよ」


斉藤「怪しい人?誰かね?」


日菜々「……しいて言えば、桐生さんが怪しいと思ってる」


桐生「……は?何であたし?」


織田「理由は?」


日菜々「えっと……

手が震えてたの。

役職決まった時の桐生さん」


一瞬だが静かになる。

どこかで、そう言えばと聞こえてきそうな空気になった。


桐生「は、はあ?あんた何言ってんの?」


羽賀「いや、確かに震えたのは俺も見たな」


牧村「あ、私も!」


日菜々「人狼引いちゃったから震えたのかなって思ったよ」


前島「どうなんだ?桐生?」


確かに震えてたのは僕も見ている。

いい指摘だ。

これは桐生に矛先が変わるな。


桐生「ち、違う。そんなんじゃないって!」


斉藤「では何だったのか説明をしてもらいたいな。

私もあれは気になったんだ」


桐生「あ、あれは……」


前島「ふ、この反応怪しいな。

こいつ処刑でもいいかもな」


九十九「すぐに殺そうって発想になるんだな。

よく殺人犯の私を咎められたな?」


前島「お前は黙ってろ」


織田「手が震えたことの納得いく説明など出来んじゃろ」


桐生「し、仕方ないじゃない!

責任重大だと思ったんだから!」


牧村「責任重大?

何どういうこと?」


前島「ほう……」


斉藤「何だ、はっきり言い給え」


桐生は一拍置き、言い切った。


桐生「私は、占い師よ」






1日目、昼のターン。

挿絵(By みてみん)

1、前島康隆

2、羽賀亮也

3、牧村芽衣子

4、織田武臣

5、山井小百合

6、九十九一

7、桐生星華

8、斉藤章三

9、桃山日菜々


全員生存。残り9人。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ