27、ラストウルフ
Mr.ハロウィン
10年以上、正体が掴めていない伝説の詐欺師。
主な手口はなく、結婚詐欺、高齢者を狙った詐欺、果ては複数の人間で行うストーリー詐欺、と多種多様な方法で、相手から金を奪い取る。
神出鬼没で、悪戯のように大金を搾取する。
その仮面の下の素顔は誰も知らない。
以上のことからMr.ハロウィンと呼ばれ出し、ネット上などでは崇拝する者さえ現れ出している。
羽賀「お前が……康隆の長年追ってた……」
日菜々「……Mr.ハロウィン」
牧村「そ。意外でしょ?
ふふ、少女にしか見えないよね?
まあ信じてもらえるように外見には金かけてるしなー。
人を見た目で判断するなって言葉さ!
余計なこと広めるなって話だよね。あははは。
さあ信じてくれたかな?
私がプロの嘘つきだってこと!」
日菜々と羽賀の2人は圧倒されている。
羽賀「ひ、日菜々ちゃん。
本当最悪だわ。俺は最悪の相手を残しちまった……
ハズしちまった。
でも信じてくれ!俺が人狼なんだ!
俺はちゃんと疑われてただろ?
牧村なんて真っ白だったじゃないか。
こいつが人狼なんて今更だろ?」
牧村「ふふ、じゃあさ。視点を変えようか。羽賀が村人である証拠を教えちゃうよ」
日菜々「証拠?」
羽賀「はあ?そんなもんあるわけないだろ。もう喋るなよ、こじつけ女!」
牧村「あるから喋るね?
初日の日菜々ちゃんと桐生の決選投票の時。
お前、日菜々ちゃんに本物の占い師ならちゃんと訴えないとって説いてたじゃん?
あれー?これおかしいよね?
桐生はパートナーなんでしょ?
何であの状況で日菜々ちゃんの肩を持ってんの?」
羽賀「あ、あれは身内切りだ!
康隆も言ってたじゃねえか!
決戦の時は、桐生が吊られる流れだったから仕方なかったんだ。
お前だって康隆を身内切りしたって話なんだろ!」
牧村「身内切りの種類がおかしいんだって。あそこで身内切りするなら、桐生を否定しとくのが正しい身内切りよ。
さらに言うと、パートナーとの2択なのに、占い師候補にあんなくっさいセリフ言ってる場合かっての!
あれは素の村人の発言よ」
羽賀「だから、それは日菜々ちゃんに占われないように村人っぽい発言してただけだ!
桐生は俺が人狼だって知ってる唯一の相方だぞ?直接身内切りして、もしも全部バラされたらやばいなって考えて何が悪いんだよ!」
牧村「ふふふ、さらに言ってあげようか?
お前、さっき織田が死んでゲームが続いた時さ。
日菜々ちゃんにえらく、これで終わりだよな?って確認してたよね?
結果、ゲームが続いちゃって日菜々ちゃんを罵倒した。
あれも演技?」
羽賀「あ、当たり前だ。あれも村人っぽい演技だよ」
牧村「違うね!
もうお前こそ、喋らなくていいよ。
あのシチュエーションでそんな演技は必要ない。
……日菜々ちゃん!意味わかる?」
日菜々「ど、どういうこと?」
牧村「あのね、織田が吊られた時点で次の日パワープレイ。つまり勝ち確定なのに、あのタイミングで感情的にごちゃごちゃ言う理由あると思う?
……ないよね?
普通は私みたいに黙っておけばいいと思わない?
つまりあれは騙されたことに気付いた村人の反応なのよ」
羽賀「う、うるせえ!一応まだ村人っぽくしとこうと思っただけだ
お前パワープレイしたことねえのかよ?
人狼カミングアウトも迷うもんなんだよ!
もし何か間違ってたり、騙されてたら終わりなんだからな!」
牧村「あーあ、下手な言い訳だね」
羽賀「と、とにかく日菜々ちゃん!
まじで、本当に、がちで人狼は俺だぞ?
俺に投票したら、日菜々ちゃんも死んじまうんだぞ!」
牧村「いやーお前が結構頭よかったのは意外だったな。
でもやっぱり村人の人狼騙りは穴だらけだったね。
羽賀にそのまま投票すれば生き残れる。これは本当に安心していいよ」
日菜々にとっても生存率50%の人生最大の2択だ。
日菜々「ああ……わかんないぃ
こんなの決めれないよ……」
羽賀「日菜々ちゃん信じてくれ!
詐欺師に騙されんな!牧村に入れてくれ!」
牧村「大丈夫。普通に羽賀に投票で勝つから。
もっとわかりやすく言うと、日菜々ちゃんに騙されてた村人はどっちだと思う?
ほら!羽賀でしょ?」
日菜々「……な、なるほど」
羽賀「……いやいやいやいや!
……てか、そうか。なるほど。
それだよ!
お前ほどの村人策略家が何で日菜々ちゃんを昨日信じたのか。さっきから疑問だった。
だけど、これか!
最悪、俺にパワープレイされても、それを上回れば問題ない。
俺が夜に騎士の九十九を噛むことは予想出来たから、自分が人狼だってこじつける作り話をずっと練っていたわけだな!」
牧村「へえ、上手な言い訳考えたじゃん」
羽賀「うるせー!じゃないと、何で人狼の俺が村人に言い負けなくちゃいけねえんだよ!」
牧村「言い負けてる時点でおかしいんだけどねー。
てか、日菜々ちゃんさー。
もういいでしょ?
私が仲間だって把握したよね?
一緒にここまでがんばってくれてありがとう。
灰司くんとの約束、生きるためでしょ?
最後に間違えちゃダメだよ?」
日菜々「うぅ……牧村さん。
信じていい?」
羽賀「はあ!?違う違う!騙されてる!」
牧村「うん、安心して。迷わせてしまってごめんね」
羽賀「やばいって!日菜々ちゃんよく考えてくれよ!
詐欺師だぞ、こいつは!」
牧村「詐欺師って言ったのは私自ら。
真実を言ってる証明で、不利になるかもだけど全部話したの。
私が嘘つき村人なら、自分から嘘得意な詐欺師なんて言わないから。
真実のみで勝負してんのよ」
日菜々「そ、そうだよね……」
羽賀「おい!マジかよ!そういうのをあえてやるのが詐欺師の手口じゃねえか!」
牧村「詐欺師イコール全部嘘って偏見やめてくれる?傷つくなぁ。
詐欺師だって真実は話します。
しかもこの状況の私からすりゃ、詐欺師はお前だろって話。
もう無理だって、諦めなよ村人さん」
羽賀「ぐっ……日菜々ちゃん!俺の目を見てくれ!
俺は有罪だ!!
俺が、斉藤、山井、九十九をぶっ殺した人狼だ!」
羽賀が日菜々を見つめながら、机をバンバン叩く。
牧村「はいはい。そうだね、よく見てあげて。これが彼のガチガチに固めてきた演技だよ。さっきと全然印象違うのわかるでしょ?」
羽賀「だ、だまれお前!殺すぞ!」
牧村「はあー?前島ごときのパシリカスが、私を殺せるもんならやってみなよ?
出来ないよね?村人だもんね」
日菜々「うっ、うっ……うぅ」
日菜々が唸り、両手で顔を覆う。
そして、ゴーンゴーンと鐘の音が響く。
羽賀「やべぇ!日菜々ちゃん頼む!
俺と一緒に牧村に入れてくれ!
牧村は村人だ!!」
牧村「日菜々ちゃん!私はもちろん村人の羽賀に入れるから。
日菜々ちゃんも羽賀でよろしくね」
日菜々「……うぅ」
最後の村民会議の時間は終わってしまった。
セイギノミカタ「はい。話し合いは終了です!
これより一切の会話を禁止させていただきます!
日が暮れて、容疑者を処分する時間がやってきました。
手元のモニターで処刑したい人に投票してください」
息をつかせない白熱の議論。
つい聞き入ってしまった。
こんな展開を最終日に見れるとはな。
しかし日菜々は最後、牧村寄りの考えになってたな。
個人的には羽賀の方が人狼な気がしているんだが。
牧村はやはりどうしても弁が立つような先入観が拭えない。
いや、だが決め手にはなってない。
最後まで聞いたが、本当にどっちかわからない。
羽賀「……」
牧村「……」
日菜々「……」
日菜々は頭を抱えて、目をつむる。
授業中に先生に当てられた2択の問題などとは比べものにならないほど必死に悩んでいるのがわかる。
命が懸かっているから当然だ。
羽賀はもちろん牧村に投票し、牧村は羽賀に投票する。
さあ日菜々はどっちに投票するのか?
日菜々の票で、このゲームの勝敗が決まる。
果たして日菜々は、最後の人狼、ラストウルフをどっちと判断するのだろうか。
セイギノミカタ「それでは1人ずつ票開示を行います。
票を開示した人は、一言理由を述べても大丈夫です。
まずは、羽賀亮也くんの投票先見てみよう!」
羽賀亮也→牧村芽衣子
羽賀は牧村へ。もちろんそうだろう。
羽賀「……何にも言うことなんかねぇよ。
牧村は最後の村人なんだ。
こんな厄介な奴を残しちまったのは、俺のミス。後悔してる」
羽賀は脱力し、憔悴している。
牧村に1票。
セイギノミカタ「では次、牧村芽衣子さん」
牧村芽衣子→羽賀亮也
牧村は羽賀。これも当然だ。
牧村「最後まで演技おつかれさま!
いやいやこちらこそ、そこまで応用力のある人とは思わなかったよ。
日菜々ちゃんが迷った以上、間違いなく一番厄介な村人だった」
さて、ここまでは当然の流れ。
決着を決める票は、悩んだ末どっちに入れたのか?
セイギノミカタ「最後に、桃山日菜々さんの投票だよ」
日菜々「私は……」
羽賀「くっ、頼む」
牧村「……お願い」
羽賀と牧村は祈る。
願うは相手の名。
僕も心臓の鼓動が早くなる。
そして日菜々の投票先が、ゆっくりと円卓のスクリーンに表示された。
桃山日菜々→……
最終日、昼のターン。
1、前島康隆………死亡、2日目処刑
2、羽賀亮也
3、牧村芽衣子
4、織田武臣………死亡、3日目処刑
5、山井小百合……死亡、2日目襲撃
6、九十九一………死亡、3日目襲撃
7、桐生星華………死亡、1日目処刑
8、斉藤章三………死亡、1日目襲撃
9、桃山日菜々
残り3人。




