26、パワープレイ
考えた末、牧村が口を開く。
牧村「んー正直に言う。
あれは今でもよくわかってない。
ただお前の視点でも山井の存在がおかしいのは事実でしょ?
私が人狼じゃないとは言い切れないはずよ」
羽賀「なら山井の存在で、俺が人狼じゃないとも言い切れねえだろうが」
一度、口論が止まる。
確かにどっちの視点でも山井の行動は謎が多い。
今となってはわからないが、あいつは何の役職で、何を考えていたのだろうか?
日菜々「き、聞かせて!2人とも!」
焦っている日菜々が問う。
羽賀「なんだい?」
牧村「うん、何でも答えるよー」
日菜々「人狼なんでしょ?
ならどうして2日目に、その山井さんを噛んだの?」
いい質問だ。
人狼なら必ず考えたことだし、村人はそこまで答えを用意してない可能性が高い。
羽賀「そりゃ騎士狙いだよ。あの段階で役職カミングアウトをするのは騎士しか残ってない。
だから九十九が騎士だって言ったのは、びっくりしたさ」
牧村「霊能者狙い、あわよくば騎士狙い。
前島が人狼だから、あいつか斉藤しか霊能者いないからね。
あと織田の白ってのもあるよ。占い師の白はスケープゴートになりにくいし、いらないから殺した」
村人はここも理由を用意していたか。上手いな。
日菜々「なら、斉藤さんと九十九さんは何で噛んだの?」
羽賀「斉藤は霊能者と騎士の話をしてたから。役職狙いだ。
九十九は騎士だって言ったから。
騎士じゃない村人が騎士ブラフしてて、パワープレイ防止で狂人の日菜々ちゃんを噛ませようとしてる可能性まで悩んだけどな」
牧村「うん、その通り。正解。
斉藤は霊能者狙いだよ。
前島が霊能者を乗っ取り、占われない位置にいくためにね。まあそのせいで日菜々ちゃんに黒出しされたんだけどね。
九十九はなんかうだうだ言ってたけど勿論、騎士を抜くため。
今日パワープレイをするために、確実に噛める奴を噛んで人数を減らしたかったの」
ダメだ。ボロを出さない。
これは本当に村人の逆転勝利があるかもしれない。
羽賀「いい加減にしやがれ!
よくもまあ根も葉もないデタラメ言えるなお前!
そもそもお前は初日に村人だってカミングアウトしてただろうが!」
牧村「ふふ……ああ言えば、人狼が狙うまでもない素の村人だから残り続けても不思議じゃないでしょ?
作戦に決まってるじゃん!
それにお前さ。2日目にうちの前島に吊られそうになった時に、役職ない村人だって言っちゃってたじゃん?
本当に人狼なら、騎士なり本物の霊能者なり答えりゃよかったよね?
あれこそ真実でしょ」
羽賀「はあ?あれこそ、ああ言えば人狼っぽくないだろうが!」
牧村「ふふ、大声出して必死だね。
パワープレイの勝率知らないの?
パワープレイになったら、9割以上人狼側が勝つって相場なんだよ。
ずっと人狼してた私に対して、ふらふら村人してたお前が一朝一夕で人狼になんてなれない。
どうやってもひっくり返せないから、さっさと諦めて女に遺書でも書けや。ボンクラ」
羽賀「くそっ!……日菜々ちゃん!
こいつを残しちまったのは、明らかに俺のミスだ!
でも本当、信じてくれ!
本当に俺が人狼なんだよ!」
牧村「やれやれ……
本物の私に理論で勝てないからって、感情込めて人狼だって言って信じてもらえりゃ苦労ないじゃん。
と言うか、日菜々ちゃんも彼が一発逆転を狙う村人だって薄々わかってきたでしょ?
こんなのにさすがに騙されてないよね?」
日菜々「ま、牧村さん……」
牧村「ん?なあに?」
日菜々「い、今までと態度全然違うよね。
ずっとキャラ作ってたの?
あなたの本当の顔はそれ?」
牧村「ええ、そうよ。
何にもわかってないバカだから人狼に残されてる、って周りに思ってもらうためにそうしてた。
おかげで誰も私を疑えてなかったでしょ?
で、少しずつ場を支配していた」
牧村の顔がまた悪意で満ちた。
牧村「3:1……これが何の割合かわかる?」
日菜々は少し止まり、首を横に振る。
牧村「3回バカなことを言ったら、1回まともなことを絶妙のタイミングで言い、会話の流れを少しずつ誘導してたの。
私の常套手段なんだ!
3回エサを撒き、1回の猛毒で相手を仕留める。
一番人間が騙されるやり方よ」
そう言い、牧村は上着から大量の名刺や免許証を円卓にばら撒いた。
日菜々「な、何これ?」
牧村「橋本明美、飯田美希、巽里子、名山円香、津島亜梨沙。
これ全部私の仮面!
色んなとこから買った戸籍。
もちろん牧村芽衣子ってのも本名じゃないし、大学生でもないし、歳も本当は30越えてるよ」
羽賀「……え?」
日菜々「……全部嘘なの?」
牧村「そう嘘。詐称しかしてないよ。
人狼ゲームも初めてじゃないし。
ゲーム中も、牧村騙されてるなーって、……みんな騙されてたでしょ?」
日菜々「そう……なんだ」
牧村「だって嘘を生業として生きて来たから。 むしろ今みたいに、人狼だっていう真実を伝えるのは苦手なんだよねー」
羽賀「お前……何者だ?」
牧村「あら、驚いてるね。
前島の情報網で引っかからない私は一般人……
ではなくて、前島でさえ特定に至ってないほどの犯罪者。
何で誰も思いつけないのかなぁ?」
日菜々「牧村……さん。
あ、あなたは……本当に何なの?」
日菜々は怯えながらも牧村に聞く。
牧村「私?そうだね……
正体を明かすなんて緊張するなぁ。
まあ一回しか言わないから、よく聞いてね」
全員、息を飲む。
牧村「ハッピーハロウィン!
トリック オア グリード!
……私は、詐欺師だよ」
ふざけたセリフだが、その言葉にはずっしりと重さがあった。
羽賀「そのセリフ……
まさか10年以上正体不明の伝説の……」
日菜々「……Mr.ハロウィン」
牧村「正解。
どうも!トリック オア グリード
(嘘が嫌なら、全財産を置いていけ)
よろしくね!」
伝説の詐欺師、Mr.ハロウィン。
ついに本性を現したか。たぬき女め。
そう、こいつ自称牧村芽衣子は、ここに集めた9人の犯罪者の中で、最も被害規模の大きい史上最悪の犯罪者だ。
最終日、昼のターン。
1、前島康隆………死亡、2日目処刑
2、羽賀亮也
3、牧村芽衣子
4、織田武臣………死亡、3日目処刑
5、山井小百合……死亡、2日目襲撃
6、九十九一………死亡、3日目襲撃
7、桐生星華………死亡、1日目処刑
8、斉藤章三………死亡、1日目襲撃
9、桃山日菜々
残り3人。




