決戦
すみません、グラセフとユーロトラックにハマりこんでましたm(__)m
北水晶海上空~side
高速起動艦フェンリル・ナイトside
サラ・フェンリルside
両軍、ここ北水晶海上空で相対する。先のゼウラニアス側の5大都市消失を受け、ゼウラニアス軍は殺気立っているのが分かる。そして、反ゼウラニアス勢力も同様に殺気立っていた。
何しろ、ゼウラニアス側の主張が【反ゼウラニアス勢力】が我々の同胞と都市を破壊した。
と言っているのだから、我々にとっては寝耳に水だ、しかし、私の祖国ドラグニア帝国で何やら不穏な空気があると言う噂を最近耳にした。
なんでも、皇帝陛下の本土不在をいい事に一部の貴族が不穏な空気を見せていると言う噂だが
ランスもその噂は承知のようだが、まだ、確信を突いていないか、それともワザと知らないフリをしているのか、今は沈黙を守ったままだ。
そして、全軍に攻撃の命が下った。
<全軍総攻撃開始!>
「フェンリル司令、全軍攻撃の号令がでました」
「うむ、全艦、攻撃開始、この一戦で全てを終らせるぞ!」
「「「おーーーっ」」」
連合軍とゼウラニアス軍が一斉に攻撃を始める。お互いに一定の距離を保ちつつ、砲撃を行うなう。
互に牽制しながらのよな様子見をしつつ、両軍優位な位置に付こうとするが、こちらにはヘイルダム空中要塞が彼方には天空の玉座があり、互いに決定打に欠ける戦いとなった。
そして、状況は混戦の様相を呈していく……。
※※※※※
ゼウラニアス軍第18戦闘区域:戦艦グレゴール~side
ブライアン艦長side
海戦が始まった。敵味方の砲撃の雨嵐がお互に死の矢となって降り注ぐ。戦況は一進一退の攻防戦へとその流れを変えて行った。
天空の玉座の要塞砲が放たれるとヘイルダム要塞の防御シールドが展開され此方の攻撃が無力化される。
そして、要塞同士のエネルギー再チャージの間、両軍が一斉に砲火を浴びせお互い決定打を欠く消耗戦へと突入していく。
「全艦、主砲三連、砲撃しつつ、敵前衛を抑え込むぞっ、これ以上の敵の接近を許すなっ!」
「はっ、砲撃開始、敵に圧し負けるなよ!」
副長が私の命令を復唱し我が戦隊は一斉に攻撃を開始する。
激しい砲撃の応酬で遼艦が被弾し更にバランスを崩して、砲撃準備中の寮艦の射界を遮る。いきなり目の前に飛び込んできた見方艦を砲撃で吹き飛ばし、双方共に大破爆発四散した。
「艦長、前方に新たな敵影を発見、敵は……フェンリル艦隊です」
「よーし、気を引き締めて掛かれ! 相手は精鋭だぞっ」
「「応っ」」
私の激にクルーの士気が上がる。そして、すぐさま陣形を防御陣形に変更し、フェンリル艦隊と激しい砲撃戦が始まった。
そして、一進一退の攻防戦へと発展していく中、友軍の一際巨大な空中戦艦【ソロモン】が右翼中央に展開する。
そして、天空の玉座と連携しながら、防衛線を支えて少しづつではあるが押され気味の戦線をゆっくりと
押し返し始めた。
※※※※※
高速機動艦シリウス~side
カオス・フェンリルside
膠着状態になって、一週間が過ぎ始めた。ドレッドノート級空中戦艦2番艦【ソロモン】が敵の右翼に展開して、こちらの左翼を押し戻している。通称魔人ソロモンと呼ばれるだけの事はある。
特にドレッドノート級空中戦艦は、その防御力と火力に定評があるが、それは機動性を無視しすると言う設計思想からなっており、番艦は拠点防衛用としていて、こちらの総攻撃を諸共せず、戦線を最大3週間単艦で支え続け、最後は弾薬庫に燃料庫の誘爆で爆散するまで戦い続けた正真正銘の怪物であった。
そして、二番艦は若干の機動性を維持しながら、一番艦を凌ぐ艦として、反ゼウラニアス帝国勢力に【ソロモン症候群】と言う悪夢まで見せつけた。
「やれやれ、あの艦を相手にするのは骨が折れる。だが、アイツをここで仕留めれば流れは此方に代わる! 全艦、此処が正念場だっ、気を引き締めてかかれっ」
「「おーーーーっ!」」
私の号令に、我が白狼戦隊いの士気が上がり、素早く持久戦に対応するため防御陣形を取った。
兎に角、あの手の化け物を相手にするには、根気とどっしり構えて彼方が根を上げるまで我慢比べと相場は決まっている。
幸い、こちらの補給面や後方司令部の構築も済んでいるので、ここまで来ればもはや根競べの勝負には正に、うってこいの状況になってる。
「ダメージの激しい艦は後方に下がらせよ。このまま、此処で粘り抜くぞ! それと各自交代しながら、戦闘を継続せよ」
「はっ、了解しました」
各艦隊は気長に敵の行動が飽和するまで攻撃を続けている。そして、こちらは、後方に前線司令部を展開し、補給や戦闘で損傷をしている艦艇の修復に入った。
敵軍も一度、天空の玉座の中で艦の修復をしながら、反撃の機会を伺っているが、こちらの包囲網が完成しつつあり、そして、敵軍の通信を解読してみると、呆れた事に玉砕覚悟の総力戦を唱える者が多数いて
敵司令部と突撃するしないの押し問答さえあったが、アルゼリアス親衛隊に制圧され現在はかなり秩序を取り戻していた。
「追い詰められながらも、士気は高いな」
「そりゃあ、そうでしょう。負けたら滅びるのですから、必死になって当たり前です」
そう、副官と軽いやり取りをしながらも私は戦況図から決して目を離さなかった。
ここは、持久戦でどちらが痺れを切らせて焦りだすかが、この戦いの流れを変える。だから、とことん粘ってやろう…… いや、少しちょっかいをやってみよう。
相手が余程の猪武者でなければ、馬鹿な行動はしないはず。私は、直ぐにサラ司令に通信回線を繋ぐように指示を出した。
やや、間をおいて姉さんが通信スクリーンに映し出された。
<カオス戦隊司令、どうした?>
「ええ、敵巨大戦艦ソロモンを足止めしつつ、敵左翼をこのまま釘付けに使用しうと思います。
ただ、敵が余程の猪でなければ、膠着状態のままですが、もし、気の短い指揮官なら、こちらの挑発に
乗ってくるはず。ですが、その場合は、乱戦になると思われます、それもかなりの」
そう、巨大戦艦ソロモンをこちらに押し出して来たら、それを全力で阻み、もし可能なら巨大戦艦ソロモンを撃沈する事が出来れば、こちらの士気は大きく上がるだろう。
全長800メートル級の巨大戦艦だが、その巨体と火力が物を言い、その機動性は限りなく低い。
だが、肝心の機動力が無いため、一度懐に飛び込まれれば脆い弱点と言えた。
私はサラ司令にその事を伝える。
「ですから、乱戦に持ち込む切っ掛けを作るのがこの作戦の目的なのですが、同時に我が左翼部隊のみで敵右翼を抑える形になり、他の部隊の支援は当てにできないと言えます」
<フム、確かに、現状ではその流になるな? よし、私の【提案】として、帝国艦体司令部と騎士団総司令部に打診をしてみよう>
サラ司令の打診で陽動作戦が連合軍司令部に承認された。そして、旧式だがヨルムンガンド級砲撃艦とシールド艦も複数配備された。
これで、手順さえ間違えなければ、あの巨艦を足止めあわよくば沈める事が可能になった。
おっと、欲を掻いては碌な事にしかならないな? いかんいかん。
「よーし、全艦、予定通り、敵を挑発しまくるんだ! ソロモンを此方に誘い出すだけでいい。小賢しく行くぞっ」
「「「応っ」」」
そして、陣形を素早く整えると、左翼部隊もって全軍を敵艦隊右翼目掛威嚇射撃で挑発を始めた。
後は敵が此方の挑発に乗ってくるかだが、私の挑発はかなりしつこいぞ?
※※※※※
巨大空中戦艦ソロモン~side
レムナス副長side
敵の右翼部隊が挑発的な砲撃を仕掛けてきた。こちらはヨルムンガンド砲撃艦で応戦をしていたが、肝心のヨルムンガンド砲撃艦がオーバーヒートを起こした為、今は長距離砲での応酬が続いて、膠着状態になりつつある。
このまま敵と組み合って、予備選力の一部を前線に出せば、こちらへの挑発どころでは無いと
ブリッジのクルー全員がそう思った時、左翼艦隊司令部から正気を疑うような命令が発令された。
<右翼部隊全艦、敵左翼を蹂躙せよ>
「なっ……」
「冗談じゃない、増援が到着して、敵は此方の15倍だぞ! 俺たちに死にに行けと言うよかよっ」
クルーに動揺が広がる、確かに本艦の装甲や火力は敵の脅威になるが、機動性がその分低いため
一度懐に飛び込まれれば敵の集中砲火で撃沈される可能性がある。
一番艦ドレッドノートはその足の遅さが命取りとなり集中砲火を受けながら、戦い続け、その3週間後に沈んだ。我々も一番艦の二の舞は御免だ。
そう、私も含めてブリッジのクルー達が考えていた時に、本艦の艦長ヒュー・レバイン大佐が右翼戦隊司令部と会話をしていた。
「ならば、本艦だけでは敵の集中砲火によって撃沈されるやもしれませんな。そうなっては、私の責任問題はもちろん、司令閣下にもその責がとわれましょうな」
<そうだ、だから、私も前線に出る。くれぐれも、我が隊の名を堕とさぬようにな?>
「はっ」
左翼全軍で勢い付いている、敵艦隊を一体何時まで抑えられるかが、私達の役目だが、恐らく生きては還れないだろう……。
何故なら、私を含むドレッドノートの乗員はゼウレニアス帝国に家族を忠誠の証として差し出すように
仕向けられたからだ。
しかし、それも終りだな。恐らく我がゼウレニアス連合は、この日滅びを迎えるだろう。
ふっ、新たな、時代の幕開けに立ち会えただけでも行幸というものだ。
右翼部隊全軍が一斉に敵左翼に討って出た。
※※※※※
高速機動艦シリウス~side
カオス・フェンリルside
よし、こちらの思惑通り、敵軍が攻勢に出てきた。あとは、敵の攻撃を凌ぎきり、反撃に出る。
とにかく、敵の第一波をしのげばいい。
「全艦、制圧射撃はじめっ、当てなくてもいい、敵を今の位置に釘付けにするんだ! それによって、サラ司令の本隊の展開が援護できる、もう少し、敵とのダンスに付き合ってくれ」
「「了解」」
一斉に絶え間ない砲撃が敵右翼部隊を釘付けにする。下手に動けば、撃たれると感じ取ったか、敵軍は此方の予想通りその場にとどまり、防御に徹していた。
しかし、それも長続きはしない。
「敵艦隊に動き有り、巨大戦艦ソロモン率いる前衛が徐々に前進をしてきます」
「よし、それも計算の内だ。サラ司令の部隊はどうだ?」
「はっ、予定通り時計回りで反包囲攻撃の位置に向かって展開中、展開が終わるまで、約15分」
流石に、早々此方の思惑通りにはいかないか? 敵艦隊も此方に囲まれまいと必死に反撃をしてくる
此方は、この我慢比べに焦りだした方が負ける。
ま、膠着状態からの持久戦なら、私の方が長けている。何せ、今まで相手にしびれを切らせて此方に向かってくるのを幾度となく返り討ちにしてきた。
しかし、相手が、超巨大重戦闘艦なのは初めての経験だ。他の敵艦も最新鋭の戦闘艦だが、魔神ソロモンに比べればまだ楽な相手だ。
「全艦、魔狼艦隊の攻撃位置に展開が終えるまで、粘るぞ! 此処であの魔神を仕留めるぞっ」
「はっ、全軍、魔狼艦隊の包囲を援護、敵艦隊の動きを封じてしまえ」
「はっ、全軍、援護射撃を継続せよ、15分現状を維持せよ」
そして、また敵の動きを封じる目的の制圧射撃を始める。要はあの魔神を釘付けにしてしまえばいい。
此方を蹂躙すべく前進してきた右翼部隊が此方の攻撃に足止めをされ、彼等は思うように前進が出来ないでいた。
どうやら、彼等の思惑が外れたらしい。
「カオス戦隊司令、先ほど、敵軍の無線を傍受したのですが、どうやら、彼方はあの魔神を此処で使い潰す潰つもりのようです。現に直掩艦以外は全て全面ではなく、右翼部隊本体に合流しようと試みています」
「たしかに、あの魔神ソロモンだけで、一個中規模艦隊に匹敵するからね。連中も此処で虎の子を潰してでも自軍の有利な状況を作りたいのだろうさ」
敵がしびれを切らせて全艦突撃でも仕掛けて来れば此方も一気に反撃できたのだが……
中々上手くいかないものだ。
ぼやいても仕方がない。なら、姉さんの艦隊の展開が終わるまで時間稼ぎをして、そこから反撃に出よう。
こうして、我々白狼艦隊と魔神ソロモンの地味手で気長な我慢比べが始まった。
※※※※
高速機動戦艦フェンリルside
サラ・フェンリルside
白狼艦隊の支援もあってこちらは被害が最少限度で敵左翼部隊を抑える事が出来た。
しかし、流石は魔神ソロモン…… あの艦が居るだけでこちらは慎重に対応せざるを得ない。特に艦首主砲はあのヨルムンガンド級すら上回る。
しかも最大二発までなら問題なく撃てる筈だったが、白狼艦隊の足止めの制圧射撃で彼らは屈辱的な防戦をしなくてはいけなくなった。
強引に白狼艦隊を蹂躙するために魔神ソロモンを前面に出してしまったのが彼等の判断ミスだ。
「よし、敵は白狼艦隊が押さえてくれている。こちらも彼等と連動ながら、ヨルムンガンドの展開を待って総攻撃に掛かるっ、全艦、一斉射初めっ!」
「はっ」
私の号令で全艦が一斉に攻撃を始める。こちらが切り札に持ってきたヨルムンガンド級は旧式で足が遅い
しかし、戦いの流れは此方に向いてきているので、焦らずにあの魔神を仕留めればいい。
だが、何故、こうも容易く魔神ソロモンが前線にでて来るかが気になる。
「参謀長、傍受した敵軍の通信では、敵の右翼部隊や本隊の動向はどうだった?」
「はっ、敵軍は此方の本隊に圧されて戦線を天空の玉座の有効射程位置まで後退しています。どうやら、右翼部隊を囮にしたようです」
ふむ、魔人ソロモンの防御と火力で我々を抑え付けて艦隊決戦を挑もうとしていたか? それとも魔神頼みで蹂躙したかったのか? 今となっては憶測の勢いでしかないが、とにかく此処でソロモンを仕留める
なくては、長期戦になれば遠征軍の此方が不利になる。
「フェンリル司令、ヨルムンガンド砲の展開が完了しました」
「よし、狙いは敵右翼艦隊に集中砲火を! 此処で敵艦隊を終らせるぞ」
「はっ、全ヨルムンガンド砲、一斉射撃目標敵艦隊、撃てっ」
一斉にヨルムンガンド砲がレーザーを放ち敵艦隊を右翼艦隊を焼き払った。
※※※※※
高速機動艦シリウス~side
カオス・フェンリルside
「敵右翼艦隊、陣形崩れました。また、魔人ソロモン被弾、右舷上部装甲ヨルムンガンド砲の砲撃で溶解するも、現在白煙を上げながらも体勢を立て直しています」
オペレーターの報告にメイン画面を見ると、魔人ソロモンは確かに右舷上部装甲から白煙を上げているが
上げているが、あれは応急処置で撒布した冷却材で装甲板が冷やされているせいで艦体本体への致命傷ではないが、敵右翼は此方の攻撃で陣形が崩れつつあった。恐らくこの機会を逃せば二度と魔神を下すことは出来ないそれどころか、此処でヤツを取り逃がせば必ず手負いの獣となり友軍にその牙を剥くだろう。
(敵は艦首主砲は使えない上、右舷の防空稼働砲が一部溶解して使い物にならない。なら、接近戦に持ち込んで一気にやるしかない)
俺はそう判断すると、手早く白狼艦隊の突撃の命令を出した。
「全艦、敵軍が体勢を立て直す前にカタをつけるぞっ! これより、接近戦を仕掛ける、発光信号、ワレニツヅケを継続発信」
「はっ、全艦突撃せよ、繰り返す、全艦突撃せよ」
指揮下の100隻の空中機動艦が一斉に敵陣に向かって突撃をする。敵軍の魔人に張り付き幸運が舞い込めば撃沈、全力で拿捕を目的とするプランを考え出す。奴はその巨体故、小回りの利く艦に懐に飛び込まれるとたちまち身動きが取れない程運動が鈍くなるだから、接近戦に持ち込めば十分勝機はある。
そして、激しい砲撃戦が始まり、敵味方共に乱戦に発展していった。
後世に言う魔神の断末魔と呼ばれる戦い、そして、俺の【魔神を仕留めるのに幾多の犠牲を払った指令を出した男】と言う批評が付くことになるが。この時はただ我武者羅に戦って、あの魔神を仕留めるだけしか頭になかった。
「僚艦アキレウス艦橋部中波! 艦橋要員が数名外に投げ出されました!」
「護衛艦、レナウン轟沈、生存者無し」
「魔神との距離は? 100メートル以上だと蜂の巣にされるぞ」
出来るだけ敵の懐に飛び込んで、巨艦が苦手な接近戦に持ち込む、火力は魔神が長けているが、機動性ではこちらが勝っている。
そして、通信感度が悪いがサラ司令率いる魔狼騎士艦隊本隊も一気に突撃を開始する。相変わらず姉さんは蹂躙するのが得意だ。敵も魔神と切り離され防戦一方になってきている。
他の友軍も少し出遅れたが、皆腹が座ったのか、よい動きで敵艦隊に食らいついている。友軍の左翼部隊に割り当てられた、ダリア連盟軍の動きが鈍いがそれは仕方がない。彼らはドレッドノート戦で悪夢を見て辛くも生き残った。だから、あの怪物の恐ろしさがよく解っているため、消極的姿勢で対峙していたため後方に下がらせていたが、左翼部隊全軍の突入命令で勇気を奮い立たせ後方から援護しつつ、戦列に加わった。
そして、一気に距離を詰め乱戦に持ち込むことに成功した。しかし、魔神ソロモンの身を呈した防衛線を素早く引かれてしまった為、敵後方部隊の半数がこの戦域より離脱するのを許してしまった。
既に左翼敵艦隊旗艦は此方との壮絶な砲撃戦で大破炎上し、姉さんの座乗艦フェンリル・ナイトの艦首主砲の一撃が弾薬庫を直撃し轟沈し魔神ソロモンが旗艦を引き継ぐ形で正に死兵となって我々に立ちはだかった。
「全艦、魔人ソロモンの旋回砲塔の動きに警戒しつつ、敵艦を包囲せよ、敵は此方よりはるかに巨体だが、接近戦に持ち込めば旋回砲の狙いが付けにくい、機動性の高い艦で敵の注意を逸らしつつ、ヒット&ウェイで確実にダメージを与えるんだ!」
「はっ、全艦、接近戦開始、味方同士の同士討ちに注意せよ」
魔神ソロモンに白狼艦隊が肉迫し接近戦が始まった。その距離は100メートルでの超至近距離での砲撃戦になった。小型艦ならお互にドッグファイトで対応できようが、魔神ソロモンは全長4キロ越えの超ド級戦艦で更に右舷の上部装甲がヨルムンガンド砲の一撃で一部溶解し本来の対空防御を発揮する事が出来ないでいた。
そうして互いに気が付けば敵味方共にかなりの損害が出始めていた。
その時、カオスが大胆な命令を下した。
「ち、中々、粘るじゃないか。よし、本艦はこれより、魔人ソロモンに張り付く、アンカーを敵艦に撃ちこんで右舷すラスター全開で右舷側に貼りつけ、総員対ショック体勢!」
「はい、総員、衝撃に備えてください」
シリウスからアンカーが射出され、魔人ソロモンの左舷装甲に突き刺さりシリウスがスラスターを全開で吹かすと振り子のように時計回りで貼りつく。そして、逆噴射でブレーキをかけ右舷に張り付くと
一斉に使用可能な武装をソロモンの上部建造物、つまり砲塔や艦橋に目掛けて一斉に放った。
艦橋はシールドの展開が間に合い大したダメージは受けなかったが砲塔や通信設備にレーダーが破壊され
更に僚艦が三艦魔神ソロモンの周囲を囲んで艦首主砲をロックオンしていた。
勝利を確信し、降伏勧告をする為通信回線を開こうとした時、ソロモンの護衛をしていた戦闘艦がシリウスに向かって射撃レーダーを照射してロックオンをする。
「て、敵艦が此方をロックオンしました!」
≪我が第21艦隊旗艦ソロモンに張り付いている敵艦に告ぐ、こちらは重戦闘艦バルバドス。直ちにソロモンから離れられたし、さもなくば、そちらがソロモンを撃ち抜く前に本艦が貴艦を撃沈する。これは、脅しではない≫
「ほぅ、彼方にもな中々肝が据わっているのがいるな? 全艦下手な行動はするなよ。同士撃ちの可能性がある」
「りょ、了解」
正に三竦みってヤツだ。この状況で下手な動きを見せると敵味方の双方はとんでもない状況を見る。つまり同士打や相打ちと言った笑えない結末だ。
此方はこのまま膠着状態に持ち込んで敵の動きを…… いや、下手に刺激すると彼らは何をするか判らない。何しろ彼等にはもう後がない。
戦いも敗北が決し、我々は次はいよいよ要塞攻略戦になる。だが、彼等はこの戦いに敗れればもう後が無い。それだけに必死になるのは当然と言える。
今は姉さんを始め他の艦隊も戦闘を停止しているが、ソロモン級の周りは未だ戦闘が続いている。
誰かが、戦闘停止の命令を出さないと双方矛先を納められないそれどころか収めるタイミングを誤ればお互にかえって地獄を見る。
そして、誰もが最悪の事態を考えたその時だった。
≪告げる、こちらは超ド級防衛艦ソロモン艦長レムナス大佐。各艦直ちに戦闘行為を停止し、武装解除せよ。既に我が左翼部隊は壊滅し、本艦も旗艦能力がほぼ皆無となった。これ以上の抵抗は生き残った若い者を無駄に死なせるだけであって、もう意味のないものである。我々が次にすべきことは生き残った者たちに故郷の土を踏ませ家族の元に帰す事である。よって直ちに戦闘を停止せよ》
《了解…… 本艦は直ちに武装解除する。俺たちの負けか……》
「こちら、白狼戦隊司令カオス・フェンリルソロモン及びその他の艦のと停戦と降伏を受け入れる
各艦は戦闘態勢から警戒態勢に以降、以後投降した艦の武装解除と接収に当たれ」
「はっ」
右翼が壊滅し。形勢は此方に流れつつあるが、魔人ソロモンの奮戦で敵艦隊本体と左翼部隊は天空の玉座まで後退。我々も増援艦隊到着まで一時体勢を立て直す事になった。
今の戦力でもゴリ押しをすれば勝利はつかめるが要塞を陥とすには上陸部隊の編成と増援を待たなくてはならなかった。
次話来年には更新したいと思います。