朱に染まる氷海
次話更新しました。
北水晶海ヴァルゼリア公国軍集結座標~side
ミカside
フェリオ君の治療が無事に終わって、安心したのも束の間、ゼウレニアス帝国の残存部隊が北水晶海に集結しているらしい。
恐らくここが決戦場になる。私たちは30隻余りの艦隊の一翼として偵察任務に就いていた。
幸いなことに同盟各国がゼウレニアス帝国の各方面軍を押さえてくれているので、私たちは天空の玉座のみに戦力を集中することができた。
そして、威力偵察艦隊を該当海域に派遣すると司令部の予想通り50隻の艦隊と出くわした。
《全艦警戒体制から戦闘態勢に移行》
「了解、全艦、目標補足次第攻撃開始、さぁ、バリバリ始めちゃうぞ♪」
「了解、全艦に通達、目標補足次第攻撃を開始してください」
まずは、敵艦隊に向けて一斉に砲撃をする。当然、敵艦隊も反撃を開始する。
互に苛烈な砲撃が飛び通い、敵の大型戦艦が火を噴き炎に包まれ爆散しながら海面に落下していく。
そして、こちらの被害は30隻中5隻余りが撃沈、損傷は、大小合わせると10隻が被害を受けていた。
《敵、増援を確認! タイプは……重戦闘艦クラス6、突撃型駆逐艦10接近》
「退くには、ちょい時間がないね。よーし、一定距離を保ちつつ持久戦に持ち込むよ」
「了解です」
弾幕を張って敵の進撃を防ぐ。でも、流石にキツイかな? 特に新型の突撃型駆逐艦はすばしっこくて、
なかなか捉えるのが難しい。
「誘導ミサイル、発射用意、目標の起動パターンを予測して、回避後の未来位置に撃ち込め」
「は、はい」
一斉にミサイルを発射するが、敵はこちらが放ったミサイルを次々に撃ち落しにかかる。そして、敵がこちらのミサイルに気を取られていたところを今度はレールガンで砲撃を放つ。そして、今度直接らに向かってき突撃型駆逐艦の一隻が瞬く間に蜂の巣となって爆散した。
(防御力は思っていたより貧弱ね? 極限まで機動性を重視していたようね)
「敵突撃型駆逐艦、更に二隻接近中」
「うーん、流石に二隻は……」
まずい、もう、向こうの射程に入った。今からじゃ、回避は間に合わない!
直撃も覚悟したとき、エレノアさんの怒声が通信機から 響いてきた。
《おんどりゃーーーーーーーーーーーっ! これで、往生せいやーーーーーーーーーーっ》
「あれは、アマテラス級の護衛高速機動艦スザク」
そう、ヤワト王朝から一時的にヴァルゼリア公国に一時的に貸渡されている四隻の護衛艦のうちスザク級は突撃型駆逐艦に設計思想がよく似ていた。
こちらは防御力を維持しつつ火力と機動性を上げれるだけ上げた設計になっている。
艦首前部に火力を集中させ、運用方法も突撃型駆逐艦と酷似しているが、スザク級の火力が突撃型駆逐艦のソレをはるかに上回っていた。
そして、一気に突撃型駆逐艦に接近をすると、前部砲塔が一斉に火を噴き残りの9隻の突撃型駆逐艦を狩りつくした。
「す、凄い……」
「敵、重戦闘艦6隻こちらの射程圏外から、発砲!」
「全艦、落ち付いて対応、下手に浮足立つとかえって危ないよっ」
冷静に対応するように全艦に指示を出す。敵はゆっくりと間合いを取って攻撃態勢に入る。その時、重戦闘艦が何故、たった6隻しかいなかったか? それは直ぐに分かった。
「敵艦、艦首巨大ビーム砲展開!」
「艦首部分が左右に別れて、中から、ヨルムンガンド砲がでて来るなんて」
ヨルムンガンド砲…… 試作砲撃艦は、ほぼ無人鑑だけれど、どうやらあれは、改良型のようだ。
あの手のタイプの砲は一回しか撃てないのと、主砲のチャージに時間が掛かる。
とにかく回避に専念すれば…… しかし、私の予想は裏切られる。
「敵、小口径高出力ビーム砲発射……う、嘘、敵、小口径高出力ビーム砲を連射してきます!」
「ちょ、聞いてないって、反則だよっ」
《待たせたな、対ビーム吸収ミスト展開》
そこに、拠点防衛艦ゲンブが突然、空間転移をして、対ビーム吸収ミストを撒布する。これは、カレンさんが開発した、対ビーム用防御兵装で敵の光学兵器を無力化するための粒子兵器で、元重装甲のゲンブ級の脚の遅さと鉄壁の装甲に改装したこれらの兵装を搭載して、防御面ではほぼ無敵となった。
空中に球体の物体が放出されると辺り一帯に霧が撒布される。
そして、小口径ヨルムンガンド砲のビームさえ吸収分解してしまった。
「ひゅ~ これは、反則~」
「ミカ艦長、後方のセイリュウ、ビャッコより当艦に退避勧告です」
「よし、みんな、後退、後ろの味方に道を開けろ」
そして、私たちの偵察艦隊が左右に別れ道を開けると、そこに重戦艦ビャッコの一斉射撃が行われ、敵艦隊は次々に撃破された。
その後、体勢と損害の有無を確認をして、速やかに、この空域から撤退をする。
次に来るときは、双方大規模戦力を交えての戦いになる。
「うーん、いよいよ決戦か…… お互い全力で激突するんだろうね」
「ええ、そうなると思います」
およ? ルイセが緊張している、後でモフモフしてあげよう。
※※※※※※※※※※
???~side
アルゼリアスside
私はとある森に来ていた。ここはどの陣営からも距離が遠くそして、此処の存在を知る者はほとんどいなかった。
それだけに、私が守りたい人を隠すには絶好の場所と言えた。
森の奥に一軒の小屋を隠して、彼女の身の安全を守っている。だが、それで、本当に守っている事になるのだろうか?
「もう、私の滅びは避けれぬが、せめて彼女だけでも守れれば……な?」
そう、彼女の存在を貴族共から隠し続けてきたが、存在を知られ、彼女の身の安全と引き換えに
最高指揮官に付いた。そして、彼女の存在を知っている者たちから、無事助けだし、ラグ老師のおかげで
身の安全は守れたが……。
「俺の周りにもう少し頭の柔らかい者たちがいれば、このような事にもならずに済んだのだがな」
今更、そう言っても時間は元には戻せない。なら、最後まで走らねばな。
それが、倒れた者たちへの俺なりの示し方だ。そして、ドアをノックする。
「セレニア、私だ。アルゼリアスだ」
「アルゼリアス様」
扉を開けると、わが最愛の伴侶、セレニア・エルシタスが出迎えてくれた。
本来ならば、もう少し穏やかな時に来たかったのだが……。
(いや、全てが終われば、もう、こんな下らぬ事で命を落とすすものもおるまい。
思えば、つくづく運がなかったな)
だが、贖うだけ贖ったのだ。今更、悔いはない。
「パパだ~」
「だっこ~」
エルザリアとそれにローザリアの二人がよちよち歩きで駆け寄ってくる。そして、セレニアにはもう直ぐ生まれてくる長男のアルフレッドを身ごもっていた。
「よーし、お前たち、遊んでやるぞ」
「「やったーーーーっ」」
そして、俺は時間の許す限り二人と遊んだ。そして、遊び疲れて可愛いかおで眠っている二人をやさしく見ながら、俺は穏やかな笑みを浮かべた。
出来る事なら、何時までも側にいてやりたい。だが、もう、俺には止る事さえ許されない。
「すーすー」
「むにゃむにゃ……」
「あら、あら、二人とも気持ち地よさそうに寝ているわ」
「そうだな、うーん、何から話そうか…… そうだな、まずはアルフレッドの事についてだが……」
アルフレッドは将来どうするのだろうか? 俺と同じように剣を持って誰かのために戦うのだろうか?
ふふ、不甲斐ない父親だ。何せ家族の身の安全と引き換えに帝国の総帥になり、各地を侵略し、今更、対話など不可能な状況に持ち込みんだ。
最初っから、当に滅んだ上級種族の怨念さえ鎮める事が出来なかったのだから。
「君に、俺の剣を渡しておく。これは、アルフレッドが物事を自分で決められる年になったら、アルフレッドの手で、売るのも自分の【何か】の為に振るうのも好きにしろと言って、渡してくれ」
「はい……貴方」
本当なら、俺が直接手渡せればいいのだが、おそらくこれが今生の別れになるだろう。
ならば、愚かだが、実の子に憎まれるのも親の務め。それも果たせずでは、業腹と言うものだ。
その後俺たちは昔の他愛のない話をした。そして、この日は久々に家族で過ごす事に決めた。
そして、これでようやく次の世代にはもう、上級種族も下級種族も関係のない世の中が来る事が革新できた。
(それには余りにも大きな犠牲を払ったな……まるで、幼い頃ろ見ていた竜帝の姿を見ているようだ)
そう思いながら、俺は深い眠りに落ちていった。
そして、家族と最後の食事をして、小屋を後にした。そして、信頼できる部下が森の出口で俺を待っていた。
「報告します。敵が此方の防衛ラインまで迫っております」
「そうか…… で、各地の我がゼウラニアス軍は決戦に間に合あいそうか?」
「それが、ここにきて、今まで鳴りを潜めていた、反帝国勢力や小弱国が次々に抵抗を初めて、天空の玉座の防衛に割ける戦力が……」
だがまだ、勝敗が決した訳ではない、敵巨大要塞ヘイルダムは防衛重視の巨大要塞で本来は天空の玉座との連携を目的にして建造された。そして、究極の破壊力を持つのが天空の玉座で絶対的な防御力を持つのがヘイルダム。この二つの要塞は旧ドラグニア帝国時代の末期に建造されていたが、大戦末期に建造され
この二基の要塞が完成した時には戦いが終わっていて、天空の玉座は北水晶海に沈められ、ヘイルダムもヴァルゼリア公国に厳重に封印され、お互い日の目を見ることなく封じられた。
上級種族至上主義者達が強気に出たのも、天空の玉座のマスターキーがとある遺跡で発見され、ヴァルゼリアの辺境の軍事基地に運ばれたからだった。
そして、無事鍵を手に入れ、各地の兵力を纏めると直ぐに、我々はゼウラニアス帝国の建国と各都市国家への宣戦布告を行い各地を占領した。
しかし、ヴァルゼリアの反撃が予想より早く始まったのと、黒の賢者が彼方に付いたので、上級種族主義者ので間に動揺が出て思うように作戦を実行できなかった。
しかし、大聖堂騎士内部や国防軍内部にヴァルゼリア王家に不満を持つ者を動かし反乱を起こさせる事に
成功するがそれも失敗に終わる。
「それはそうとして、全軍の配置は?」
「はっ、間に合いそうな部隊は全て天空の玉座の防衛に回しました」
この馬鹿げた戦いも間もなく終わる。だが、我々を打倒する人々がこの世界をより正しく導くには、あとどれくらいの【血】が必要になるのか? いや、後戻りはせんし、慈悲も請わない。
ならば、上級種族が支配をするのが当然と思い上がっている連中を一人でも多く道ずれに逝こう。
「所詮は血に塗れる定めだ、今更、何を迷う?」
「いかが為されました?」
「いや、ただの独り言とだよ。さぁ、逝くぞ」
そうして、俺たちは決戦の舞台へと向かった。
さぁ、この世界の歴史に名を遺す大悪党として逝こう。はっきり言って迷惑な話だが、一つの時代を終わらせるには十分な結末だ。
精々、最後まで楽しむとしよう。
(なにしろ、どう足掻いても、敗北と言う未来しか見いだせないのだからさ……)
次回不定期ですが、更新を頑張ります。