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凶星のハイカラ乙女 ~明治ハレー彗星奇譚~  作者: 立花鏡河
三章 蛇神の生贄

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第十四話 妖刀

 すると、成田曹長が手帳をめくりながら、

「さらに厄介なのは、蛇神をお祀りしている神社があるのですが……。ああ、蛇好神社といいましてね、代々神主を務めているのが泉家でして……」

 と説明した。


「泉家……。そいつは厄介だな」


 幻十郎には、こちらの方が馴染みがあった。

 皇族にも連なる由緒正しき一族で、西国の各地に「家」を構えている名門だ。まさか農村にまで根付いているとは思わなかったが。


「現在の神主は葉蔵という男で、過去に先帝に謁見(えっけん)したこともあります。ただ、既に高齢ですから、実際は三男の久葉が取り仕切っているようです」

「三男……?」

「ええ。長男と次男は十年ほど前に出奔(しゅっぽん)したという話です」

「理由はなんだ?」


 幻十郎の問いに、成田曹長は「そこまでは……」と苦笑いを浮かべる。

 長男と次男がそろって出奔したのが引っかかるが、とりあえず成田曹長に話の続きをうながした。


「……それで、次期当主だという久葉は物腰は柔らかいのですが、これまた非協力的でしたね。しかしながら……村にいる間、妖刀(ようとう)の反応はなかったわけですが……」


 成田曹長と飯島軍曹が腰に下げているのは、ただの軍刀ではない。

 帝の命により、名のある陰陽師によって呪力をこめられた刀である。悪しきあやかしを探知し、切り裂き、祓うことのできる唯一の刀――。

 本隊の全隊員に支給されるが、幻十郎たち別働隊は持つことを許されていない。もっとも、能登は一度は手にしていた刀だが。


「反応がありましたら、禁足地だろうが問答無用で踏み込みましたものを……」


 妖刀の鞘(さや)を指でなぞりながら、成田曹長は悔しげに言った。


「悪しきあやかしがいないとして、村人たちが自発的に生贄を捧げているとしたら……一番性質(たち)が悪いな。そうでしょう? 八神中尉」


 忌々しそうに言った能登に、幻十郎は「ああ」と応じた。


 帝都から派遣されている残りの二名――永井軍曹と榎本軍曹は、蛇ノ目村の東隣の桜町にある、陸軍西国方面第十三警備隊の屯所(とんしょ)で待機しているらしい。

 面が割れている成田曹長と飯島軍曹は、しばらく旧都に留めておいたほうがいい。


 しばし思案したあと、幻十郎は口を開いた。


「おまえたちはここで待機してくれ。準備が整い次第、私と能登で桜町に入り、永井たちに接触する」

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