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分水嶺〜群馬の片田舎〜  作者: 木村空流樹


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47 ドライ

 戦国時代のあやめに会ってから、あやめはぼーっと外を見ていた。夢でも見ているように、時計の秒針の音だけが聞こえる。


 それに反して弥彦は刀を抜刀しょうと藻掻いていた。両刀は封印をされていれ警察署の登記の札が付いている。


「あやめ?これ解いちゃ駄目がな?」


 あやめは弥彦の問に答えない。弥彦が諦めた顔をして、あやめの刀をおばあちゃんの腹に置きに行った。


「あやめ……。大丈夫か?まあ、怖い思いをしたんだから仕方がないよな……。俺も初めて幽霊にあったよ」


「弥彦さんもあやめさんも多分ご先祖様なんだわ。おばあちゃんも私の名前にあやめと付けた位だから……。多分、私が末裔になると知っていてあやめさんが出て来たと思うの……だって、本来ならお母さんが当主になるはずだもの」


「戦国時代のあやめさんはあやめにそっくりなのか?俺は見えなかったけど……」


「ええ、生き写しと言って良い程よ。でも、あやめさんは現代まで残らなければいけない理由があったのかしら?」


「それだけ強い想いがあったんだろ?」


 あやめには分からなかった。戦国時代の弥彦の想いもあやめの思いも……。ただ、痛々しくて見れない程の痛みが感じた。


「弥彦さんの事を待ってたなら、あやめさんはどんな思いだったんだろうな……」


 弥彦が呟く。


「愛なのかな?」


「違うんじゃないか?解らないけど……」


 弥彦は頭を掻いた。人の気持ちは解らないと伝えてるようだった。


 玄関から音がする。


「〇〇〇〇葬儀屋です。山陵やすよ様からご依頼頂いた。担当〇〇です」


 あやめは直ぐに母から連絡のあった葬儀屋だと分かった。玄関に行くと、黒ずくめの男が立っていた。


「この度はご愁傷さまです」


 男は手慣れた手つきで玄関を上がる。


「故人様は?」


 あやめはおばあちゃんの所へ連れて行く。男は直ぐにおばあちゃんの体に沿わせるようにドライアイスを置いて胸の上の水になった袋をあやめに渡す。


「暑いですね。クーラがないんですか……。早めに埋葬をお願いします。臭いと虫が……」


 多めにドライアイスを置いてるようで、布団の中が冷たそうだった。


「お母様が来てから葬儀の話はしますね。ドライアイスは二日後に代えに来ます。ご遺体の腐敗が早いと思いますので……」


 男は流れるように動いていた。当たり前のように死を受け入れている。


 男は最後に線香を立ててから帰った。


「流石に手早いな……」


 弥彦が感心している。


「どうした?あやめ……」


「おばあちゃん、寒がりなのに……」


 弥彦があやめを抱きしめると、あやめは余計悲しくなった。だが、涙は出なかった。


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