葛藤を壊す叫び
ガイはふうふう言いながら腰を落とし明らかに先程までと違う構え、姿勢を取った。
まるで獲物を狙う獅子である。
殺意と闘争本能で動いているような。
そう思った瞬間、シギアは切られた。
「あっ!」
目にも止まらぬスピードだった。
さらに2発続け胸を切られてしまった。
「ぐあ!」
「シギア!」
シギアは思った。
何て速さだ。
全く目で追えなかった。
それだけじゃない、あいつの異様な目つきや雰囲気に気おされて反応が遅れたんだ。
シギアは飛ばされ叩きつけられた。
さらにハイスピードでガイは追ってくる。
「速い!」
シギアはダッシュして来たガイに顔を蹴り飛ばされた。
「ぐあ!」
またシギアは離れた場所に飛ばされた。
「なんて速さだ。いやあれは人間の動きじゃない、何が起こってるんだ」
魔法使いは高笑いした。
「はーっはっは! 獣人病のやつは神経や凶暴さが通常時の数倍になるのよ! 勇者の貴様でも見切れなかったろう! もしもそいつが裏切る事態を見越して2段構えの作戦を取ったのよ」
「ガウウウ!」
その叫びはまさに野獣そのものであった。演技などではない。
またシギアは腹を蹴られ、さらにつかまれて肩を噛まれた。
「ぐあ!」
「噛んでるぞあいつ!」
「シギア!」
レオンハルトが助けようとしたが手で吹き飛ばされてしまった。
「シギア! 空を飛んで逃げろ!」
シギアはやむなく空中に逃げた。
ガイはターゲットを変え今度はレオンハルトを攻撃した。
顔を殴り腹を蹴り肩にかみつき吹き飛ばした。
先輩騎士は叫んだ。
「レオン! 反撃しろ!」
「駄目です! この人はヘリウムの人です」
「くそ!」
アリザインは空気投げを放った。
しかしこれも効かない。
アリザインは吹き飛ばされた。
シギアは困った。
「くそ、俺が逃げたら皆が攻撃されてしまう!」
帝国兵は叫んだ。
「その通りだ腰抜け勇者! さっさと降りてきて仲間の代わりに死ね」
シギアは苦しんだ。
くっ、さっきタードさんにエネルギーを分け与えてエネルギーがない。
シギアのスキルエネルギーは魔法使いの魔力と同じで特殊スキルや奥義、高速飛行等をすると別換算で減っていき戦闘中は回復できずしばらく約1日休まないと回復できない。
「くそ」
仕方なくシギアは降りた。
そこへガイが猛然と突っ込んで来る。
「う、力が残ってない! 避けられない!」
そこへ先輩騎士バグロが立ちふさがりガイの剣を胸に受けた。
「あっ!」
バグロは死にそうな表情でガイに言った。
「駄目だ、あんたは操られているだけなんだろ? 目を覚ませ。いたずらに人を攻撃したら駄目だ」
そしてバグロは倒れた。
「バグロさん!」
シギアは駆け寄ったが吹き飛ばされた。
「ぐう」
「俺達も黙っちゃいないぜ!」
先輩騎士達は剣を捨て必死に呼びかけた。
シギアは地面をたたき悔しかった。
くそ、また人を救えなかった。
また俺の力不足で救えなかった、洪水の日の戦いで勝ちよりも人の命を優先すると決めたのに。
しかし騎士たちは次々倒されて行った。
シギアは何とか立ち上がろうとする。
「待て!」
そこにいたのはタードだった。
タードはガイに言いかける。
「シギアは俺の命を救ってくれたんだ! 生きる価値がないなんて生きてる意味がないなんて絶対にないとあいつが教えてくれたんだ! 俺達が死ななくて良い世の中を作る! だからあんたも人を殺したりするのはやめろ! 人を殺すのも自分が死ぬのも、自分を思ってくれる人への最大の裏切りだ!」
この叫びを聞きガイの動きが止まった。そして頭を押さえて苦しみだした。
帝国魔法使いは言った。
「何! どうした!」
ガイは苦しみ呟く
「がう、俺、人間の心……」
「チャンスだ!」
シギアは手から波動を出しガイの頭部にぶつけた。
ガイは吹き飛ばされた。皆が様子を見守る。
そしてしばらくして起き上がった。
「俺は一体?」
ガイの目から殺気が消えていた。




