魔帝王の決断・3
何回か戸惑って今に至りました。
魔帝王の住まいは宮殿の奥にある。何処よりも人が少なく、護衛も少ない。名高い近衛騎士団の人たちは基本周りと門しか守っていない。
理由は簡単だ。普通の人は魔帝王の魔波を耐えられないからだ。特に魔帝王は悪夢を見ると、周りにいる人は息出来なくなったり、心臓止まったり、全身が痺れ動けなくなったり、色々と問題が発生する。だから、夜は魔帝王の居住空間の中に彼女しか居ない日が多い。
朝一、魔帝王の侍女達は朝食を持ってくる。居住空間に小さな台所はあるが、未だに魔波を耐えられる料理人は見つかっていない為、宮殿の台所に作って運ぶしかない。門の診査を通して、100メートルの塀で囲まれた庭に進むと、住宅の玄関がある。侍女長のジュリエはドアにノックして、5秒待ってからドアを開く。
「失礼します。おはよう御座います」
はっきりとそう言って入室する。
普段はジュリエは魔帝王の寝室にノックしてる間に他の侍女は部屋の掃除と朝食の準備をする。だが、今日は違った。だって、挨拶に返事があった。
「あ、おはよう!」
居間から出る魔帝王は何時も以上に美しい。朝日の淡いピンクの髪の毛は腰までふわふわで、まだ櫛を通していないのに艶々で光る。身に纏う透けて見えるシルクのローブは彼女のスタイルの良さを引き立てる。でも、それよりは魔帝王の笑顔の迫力。貴族令嬢の完璧営業スマイルではなく、若々しい楽しそうな微笑みが美女の顔を明るくする。魔波は抑えられているのに、息が詰まる。
「どうなさいましたか、陛下?随分と早い寝起きですね」
ジュリエは確認するけど、予想がつく。最近の上機嫌の理由は一つしかない。
「今日はちょっとお出かけするね」
「左様ですか。どこら辺に行きますか」
魔帝王は全世界を日帰りで観光出来る。目立たないように、その土地に相応しい服装を選ぶ。
「首都の下町」
「何処の首都ですか」
「ここの」
「...畏まりました。ちょっと工夫しないと行けませんね」
ジュリエは内心焦る。今まで遠く遊んできた魔帝王は誰にも気づかなかったが、首都では話が違う。魔帝王の容貌は全民が知っているが、顔を直接見た人は限られている。首都の人なら年明けの挨拶や祭りの時のパレードはあるから、首都民は拝見した確率はかなり高い。
魔帝王が朝食をとる間に準備するしかない。服装は裕福商家レベルに下がって、広い縁の帽子で取り敢えず髪や角を隠そう。伊達メガネで目も隠す。香水...はここにない。部下に花系香水を探し出すのを支持すると、ジュリエはお風呂の支度を始めた。
「果物の皮からエキスを摂れば...」
最近の魔帝王は本当に香ばしい。魔波が凄まじい事は昔からだが、香りはすれ違うときぐらいで気づく程度だった。それでも凄かった。だが、今は住宅全体に梅香りが漂う。これは都民なら気づく。
台所に置いてある果物を全部手早く剥いて、魔法でエキスを絞った。身はお風呂中のおやつにする。
「風呂は良い匂いがする」
嬉しそうに風呂に浸かる魔帝王は侍女の苦労を知らない。
うぅ、頑張ります。
新しい話に誘惑されます。でも、魔嬢様を最期まで送らないといけません。踏ん張って今月中に!!




