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第十九話 妖怪の報復

「座敷童が返って来ないんよ」


 マヨイガで緊急の妖怪会議が開かれた。

 内容は座敷童の所在。

 妖怪のほとんどは特別な用件が無い限り夜か朝には必ずマヨイガに帰ってくる。マヨイガは家であり帰る場所であり唯一故郷を感じられる場所であるから。

 そして妖怪の中でも特にマヨイガを気に入っていた座敷童が帰って来ないのは珍しいを超えている。


「憑りつく家を決めたのではないか」


 雪女から意見が上がってきたがぬえは首を振った。


「座敷童は地球で前科があるために決めたら必ず報告するようにしているんよ。嫌がらせで俺に言わなくても他の奴に言うはずなんよ。でも座敷童から報告を受けた奴はいないんよ」


 それでは逃亡した、などと妖怪間で様々な意見が交わされ、場が徐々に騒がしくなると木霊が全員に聞こえるように溜め息を吐いた。


「どうせ分かっているんでしょ。さっさと話を進めようよ」


「せっかくに緊急の会議らしくしてたのに壊さないで欲しいんよ。しょうがない木霊なんよ」


 そう言ってぬえが取り出したのは大街カラルの見取り図。その中の一つに建物を大きな赤丸で囲っていた。そこにはブール商会の文字。

 

「未確認なんよ? それでも多分ここに座敷童はいるんよ。大老との話の最後に出た場所で、ここは様々な檻を仕入れたのに店に並べず会長の寝室に運んでいるんよ。今は確認のために影女やろくろ首が行っているんよ」


 言われて見ればいない、と妖怪たちも今になって気づく。とはいえ元々影の薄い影女と引きこもりがちのろくろ首では仕方がない。

 

「しかしぬえ。檻程度抜けられるものではないか?」


「天狗は考えが甘いんよ。ここは地球じゃないんよ。魔法なんて言う妖術に似て異なる物が普通にあるんよ? 入ったら出れない檻、霊体だけを捕らえる檻だってあってもおかしくはないんよ?」


 傷を瞬時に治すポーションやぬえが勝手に買ってきた魔法具の数々。魔物と言う存在に獣人などと言う人とは異なる人。ここでは地球の常識など通用しない。

 この世界の常識なら妖怪を捕らえられる檻があってもおかしくはない。


「それじゃあこれから座敷童の居場所を確認終えたら助けにいくんか?」


「助けるくらい俺一人でも出来るんよ。それはあくまで表向きの理由なんよ。本当に聞きたいのは報復についてなんよ」


 ぬえはそこで一拍おいた。全員の意識がこちらに向くように。

 いつもの冗談ではないと分かるように。


「どこまでやるのか、それを聞きたいんよ」




「久しいな座敷童。元気そうだな」


「三日ぶりが久しいの? 珍しいわね、天狗が出てくるなんて」


 ブール商会、会長の寝室。音も気配もなく突然現れた天狗は、ベッドの隣の棚に置かれている小さな檻の中にいる座敷童を見つけた。

 座敷童は退屈そうに足を延ばして座っていたが、特に身体に異常はない様子。


「ようやく救出してくれるの? 三日前に影女とろくろ首が顔を見せて以来で暇なのよ。とっとと出してくれる? 何で隠密行動の苦手な天狗が来たのか知らないけど」


「残念だがお前を救出しに来たわけではない。これから起きることについて話に来た」


 首を傾げる座敷童に天狗は丁寧に答える。

 天狗が来たのは座敷童を捕らえた檻を警戒して。おどかし専門の妖怪では捕まった時に出られない可能性があるので、力があり隠密行動が一応出来る天狗が来たこと。

 そしてこの三日間何をしていたのか。妖怪会議で何が話し合われどのような結論に至ったのか。

 そしてこれから行われるであろうことについて。


「そして今、伝承が出来ていない奴はマヨイガで泣きながら作成に移っている。猫又やぬえのような複数の妖怪を演じていた奴は不眠不休でやっている。猫又は猫系列で複数持っているのは知っていたがぬえの数は正直驚いた。手を出し過ぎだあいつ」


「……そう。それでそれはいつやるの? ああ、オークションで人が集まった時?」


「それについてだが、人間側に救済を用意すべきと言う意見もあった。確かにここの商会の人間は妖怪のルールを破った、しかしカラルの人間が妖怪を広めたのも事実。恩は返さねばならん。そのため何らかの回避方法を用意するらしいがまだ決まっていない」


「そう、それじゃあ決まったらまた教えに来てもらえる? 私ここから出れないから。しかし久々に聞いたわね」


「ああ分かった。詳細が決まり次第教えに来よう。そうだな、あの時はまだ座敷童は参加していなかったのではないか?」


 頷く座敷童に天狗は笑みを浮かべてならば楽しみにしておけと期待を持たせた。

 

「百鬼夜行は楽しいぞ」


『ササン』

 ブール商会、会長であり代表者会議商会部門出席者。若くして商会を立ち上げその手腕は未来を見通すが如く早く正確だった。常に人の良さそうな笑みを浮かべ丁寧な口調、しかしその心では何を思っているのか。


『カバル』

 冒険者ギルドの副ギルドマスター。大老の息子であり人々からは二代目と呼ばれている。ギルドマスターは世襲ではないが、父の背中に憧れ努力した彼の功績に今の地位以上にふさわしい物はなかった。


『白面金毛九尾の狐』

 はくめんきんもう九尾の狐である。読み間違えてはいけない。名はたまも。知る人ぞ知る妖怪。その美貌は各国の王を唸らせ后にしたくなるほど。しかし后にすれば悪事を働き国を傾ける。最後には八万の大軍を相手に頑張り殺されるも殺生石になり瘴気を発し人を殺していく。頑張りすぎ。あと狐は妖怪枠で優遇され過ぎな気がする。



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