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ブランクアームズ -BloodRhizome-  作者: 秋久 麻衣
-歪む時空、氷と血-
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再臨する炎


 街では一体のアロガントが暴れていた。喰らうのではなく、暴れる……それはまるで、錯乱状態に陥り興奮しきった動物のようだ。

 アロガントは癇癪を起こしたように両手を振るう。それこそ子どもがだだをこねるように身を捩るも、その腕は丸太のように太い。直撃した車両は宙を舞い、電柱はへし折れ壁に大穴があく。

 そして、暴れる合間に胴体にある口を大きく開き、空に吼えるのだ。

 だが、その暴挙も長くは続かない。

 遠方の空が煌めく。太陽の光を受け輝くその人影は、まっすぐにアロガントへと向かっていた。



 二騎のレリクスが飛翔する。一方が空を飛び、もう一方がその手を掴み風に揺れている。

「唯、このまま投げるぞ」

「外すなよ!」

 エイトの、《ブレイクドロウ》レリクスの言葉に唯は、《ブランク》レリクスはそう返す。

「そちらこそ、地面に埋もれない、ことだな!」

 《ブレイクドロウ》はその場で回転し、勢いをを付けてから手を離す。解放された《ブランク》は、一直線に地上へと、アロガントへと飛来する。

「一撃で、吹っ飛ばす!」

 投げられたままの勢いで、《ブランク》はアロガントへと着弾する。突き出された右の拳が、肉厚な胴体、その顎を撃ち抜く。

 アロガントは《ブランク》の勢いを引き継ぎ、地面を抉りながら転がっていく。逆に《ブランク》は殴打の衝撃と反動を活かし、難なく着地してみせた。

「あれ?」

 唯が怪訝そうな声を出す。

「直撃はしてた筈ね」

 リンがその疑問を代弁する。《ブランク》の拳は、間違いなくアロガントに命中した。

 だが、件のアロガントは立ち上がり、咆哮を上げている。そこまで軽い拳ではなかった筈なのに。

 アロガントがこちらに駆け寄ろうと走り出す。その進路を塞ぐように、白の重装が地面に降り立った。《アーマードロウ》レリクスはただ着地しただけだが、その衝撃は地面を揺さぶり、走り出していたアロガントを再び吹き飛ばした。

「ふむ」

「なんかピンピンしてない? あいつ」

 エイトとゼロもまた、アロガントの様子に違和感を覚えているようだ。現に、アロガントは二度の衝撃を受けても尚、立ち上がり走り出した。

「まあ、構わないが」

「あたしは構う。さっさと帰りたい」

 《アーマードロウ》は仁王立ちの姿勢で騎槍を形成し、アロガントの突撃を迎え撃つ。

 アロガントの太い腕が、白の重装に届く前に騎槍の穂先は届く。横薙ぎで勢いを殺し、縦に振り下ろし地面に寝かせ、穂先でかち上げるようにして吹き飛ばす。《アーマードロウ》の三連撃が、アロガントを難なく捌いてみせた。

 しかし、それでもアロガントの動きは衰えない。即座に立ち上がり吼え、再び走り出す。今度は近くに転がっていた電柱を拾い上げ、それを携えての突撃だ。

「その程度では、武器にはならないだろう」

 エイトは、《アーマードロウ》はそう告げながら騎槍で薙ぎ払う。アロガントは、電柱でそれを防ごうとする。

 レリクトで形成された騎槍が、それ以外の物質に負ける道理はない。故に、騎槍の穂先は容赦なく電柱を両断する……誰もがそう考えていた。

 しかし、予想に反して電柱と騎槍はぶつかり合い、火花を散らしている。

 アロガントは膂力のみで電柱を振り抜き、《アーマードロウ》は珍しく後方に飛び退く。

「武器になってるけど!」

「そのようだな」

 ゼロの批判を受け流しながらエイトは、《アーマードロウ》は着地し、飛び退いた分だけ詰め寄って騎槍を突き出す。

 騎槍と電柱の応酬が始まる中、一連のやり取りを傍観していた《ブランク》が、唯が口を開く。

「なんかおかしくない? アロガントって腕や身体を変化させて戦うんでしょ? 拾った電柱で殴りかかってくるなんて」

「分からないわ。でも、基本だけを考えると説明は出来る」

 《ブランク》は攻防を見据える。優勢なのは《アーマードロウ》だ。電柱が武器として使えるのは脅威だが、技量もセンスもエイトの方が上だ。

「レリクトを凌駕するのはレリクトのみ。つまり、あの電柱はレリクトで形成されている」

 いや、と唯はその意見を否定する。

「街にある何の変哲もない電柱が、レリクトで作られてる訳ないよ」

「つまり、電柱をレリクト由来の物に作り替えた。仮説としてはそんな感じ」

 分かるような分からないような。まあいいと唯は意識を切り替え、戦線復帰しようと駆け出そうとした。《アーマードロウ》は何度も騎槍を叩き込んでいるが、アロガントの動きは衰えない。

「待って。あれを仕留めるには火力が必要だわ」

 確かにと唯は、《ブランク》は立ち止まる。

「これを使って。実戦テストよ」

 リンがそう言うと、右の義手に一瞬だけ炎が灯り、炎が一発の銃弾を、レリクト・シェルを形成した。《ブランク》はそれを左の義手で掴む。

「この弾……燃えてるのか?」

 シェル自体は何て事はない。だが、その内側に炎を感じるのだ。知っている炎、リンの炎だと納得し、《ブランク》はそのレリクト・シェルを右義型アームドレイターに装填した。

 流れるようにフォアエンドをスライドし、右義手を引き絞る。

Resonate(レゾネイト)On(オン)

「はあッ!」

 《ブランク》は右の拳を突き出す。その右ストレートには炎が灯り、その炎は膨れ上がって嵐へと変貌する。《ブランク》はその嵐の呑まれ、その姿が見えなくなる。

「おらッ!」

 嵐に呑まれ、炎上した《ブランク》が右の拳で地面を殴りつける。その一撃は地面を揺らし、嵐を霧散させた。

 後に残るのは、全身に深紅の炎を宿した一騎のレリクスのみ。

『......《Burned(バーンド)Relics(レリクス)

 唯とリンの《ブランク》レリクスは、《バーンド》レリクスとなって姿勢を直す。

「エルの補助がない以上、私は炉心になれない。だから、炉心となる為の代替プログラムを作ったの。《バーンデッド》より火力は落ちるけど」

 《バーンド》は両の拳を胸の前で打ち付ける。そんなちょっとした動作にも、炎と爆発が伴う。

「同じようなことが出来そうだ!」

 唯は、《バーンド》はそう答え、アロガントへ詰め寄るべく走り出した。

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