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2-12 魔術開発2

 朝の日差しと暖かい空気を飛ばすように何度も冷気を出し続けた。


 運動場に入り練習を始め、もう2時間半が経過しようとしていた。


 駄目だ、何度も何度も3種類の属性の複合魔術──自作の魔術を発動させる。


 上手くいくとは思ってはいなかった。

 思っていなかったのだがここまで難しいとは。


 属性が増えるということはそれだけ陣の構築、演算、維持が難しいということ。

 発動したそばから風の制御が甘かったり空間把握(グラスプ)が正しく機能しなくなったりと、いろいろ問題だらけだった。


 まあ分かっていたことだ。

 複合魔術なんてロクに使ったことなかったし。

 それでも、それでも。


「ここまで上手くいかないか……はあ……」


 この二年で築き上げてきた自身の能力に対する信頼と自信にヒビが入る。

 これまでの積み上げがあまりにも通用しなかった。

 この二年が無駄だったようにも感じる。


 ……仕方ない。時間も時間だし教室に戻るか








「あ、レイチェルさん、おかえりなさい」

「おかえり」


 教室に戻るとミシェルとマルクが出迎えてくれた。

 ヒナは居ない。恐らく同じように運動場に練習に行ってるのだろう。


「どうだった?」

「全然ダメ。ロクに発動すらできなかった」

「そうか……そういえば聞いてなかったがどんなふうに欠点を解決するんだ?」

「新しい魔術──三属性の複合魔術を作ってみてる」

「は?」

「え?」

「ん?」


 ……ミシェルにまで驚かれた。

 率直に答えたつもりだが何かおかしなことを言ったか?


「レイチェルさんそれは本当なの?」

「三属性って言ってもそんな大層な物じゃないし作るって言っても簡単な応用みたいなもので……」

「……三属性複合魔術は難易度が高い。どのような形であれ扱うには相当な時間がかかると言われてる。

 二属性でも相当な難易度だ。二属性でも成功したことはあるのか?」

「……そ、そういえばないかも……」

「二属性も試さず三属性を試したのか?成功しないはずだ」


 マルクの言う通りだ。

 先を急いで段階を踏まずいきなり完成形を身に着けようとした。

 しかし複合魔術はそんなに難しいものなのか?


 似非複合とはいえ温風(ドライヤー)が割と簡単に成功したから意外といけるんだと思ってた。


「ちょっと試しに二属性でやってみます。『風よ吹け』『空間を満たせ』『今この場を風域の支配の下に』」

「ただいま〜ってうわっ!」

「《風域(ワインドエリア)》」


 発動した術は空間を風で満たし新たな感覚として情報が流れ込む。

 というかヒナ、入ってくるタイミング悪すぎないか?


「えっと、何してたの?」

「レイチェルが複合魔術試してるっていうからちゃんと発動できてるか試してた」

「うん。で、ちゃんと使えてるかな?」

「ああ、試してみよう。ちょっと目を瞑って待っててくれ」


 言われた通り目を瞑り待つ。

 三十秒ほどしたあと前から声をかけられる。


「レイチェル、今先生とヒナ、どっちが後ろにいるか分かるか?」

「ヒナ」


 迷いなく即答する。

 3人が移動していたのはちゃんと情報として頭に流れ込んできた。


「……凄いですね。まさかこの年でこんな複合魔術を身につけるとは……。それに、先天属性じゃないんでしょう?」

「はい」


 ……なんかホントに拙いことやってるんじゃないだろうな。


「レイチェルさん、複合魔術は身につけるのに常人なら魔術の知識がある前提で最低3ヶ月かかると言われてます。それにそれは上位魔術師(アークウィザード)の領分です」

「え」


 は?これを使うのにそんなに時間がかかるものなの?

 それにこれが大魔術を専門とする上位魔術師(アークウィザード)の領分?


「え!レイチェルちゃん凄い!凄い凄い!!」

「ちょ、ヒナ」


 まだ話の途中なのにヒナが抱きついてくる。

 緊張するから離れてくれ。

 まあ、その緊張した空気をヒナが吹き飛ばしたんだが。


「ああ、ヒナの言う通りだ。本命が上手くいかなかったからって気にする必要ない」

「……ありがとう?」


 まだ目標に手も掛かってすらないのに褒められてなんだか不思議な気分だ。


「それにまだ時間はあるし先生が言った通り習得には時間がかかると聞いている。俺の父もそうだった。気長にやるのがいいだろうな」


 そんなに難しいものなのか……。


 というかそうだ、時間はあるのだ。

 こんなところで少し上手くいかなかったからってへこんでもどうにもならない、そんなことに意味は無い。


 それで駄目なら代替案を考えるがせっかく見つかったピースをこんな簡単に手放していいわけがない。


 そうだ、ヒビが入ったならまた積み上げて塞いでしまえば良い。

 足りなかったのならまた積み上げれば良い。


 そうだ結局のところ挫けようが挫けまいがやることに変わりはないのだ。

 足を止める時間がもったいない、動け、術を構築しろ、何度失敗したって繰り返せ、成功させる手がかりを探すしか無い。


「ありがとう」

「…?ああ」

「頑張ってね!」

「うん」


 新たな希望を持ち、目標を再設定し練習に打ち込むことにまた全力になる。


 そんな日々で、時間はすぐに経過していった。

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