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第1168話 みはじ

 エレさんの船内探索は、残念ながら数分程度で終了となった。

 いや、意地悪とかそう言うんじゃなくて、単に目的地に着いてしまったからだ。


 飛空艇とは移動するための手段であり、船内の設備とかはあくまでオマケだ。

 つまり船内を探索している間にも、飛空艇はウルザラ村へと飛んでいたのである。

 そして目的地に着いてしまえば、次に為すべきは下船となるのは必然の理だろう。


 電車、バス、タクシー、飛行機、船。

 どんな移動手段においても、最後は必ず降りなくてはならない。

 移動手段は所詮移動手段であり、目的では無いのだから。


 乗ってから降りるまでの時間は、目的地までの距離と移動速度によって決まる。

 小学生で習った、『道程みちのり・速さ・時間』、いわゆる『みはじ』である。

 もっとも、私塾を開いていた祖母に言わせると、『みはじ』で覚えない方がいいらしいが。


 祖母曰く、『速さ』というモノを正しく言い表すとしたら、『単位時間当たりの移動距離』、つまり時速でいうなら一時間で何キロ移動できるか、が正しいそうだ。

 単純に距離を時間で割ったものと考えるのは間違いなんだよ、と語っていた。


 でも時速の単位って『km/h』って表すんだよな。

 この『/』は『÷』を意味しているから、距離を時間で割ってるじゃん、って思いながら祖母の授業を聞いてたっけ。


 ま、速度の正しい定義はどうでもいい。

 移動するのに必要な時間を算出するには、やはり『みはじ』で考えるのが手っ取り早い。

 祖母の教えガン無視だけど、分かりやすいのだから仕方ない。


 その『みはじ』によれば、道程を速さで割れば時間が出る。

 つまり『道程』が(小さ)ければ(小さ)いほど、『速さ』が(大き)ければ(大き)ほど、かかる時間は(小さ)くなる。


 この事を踏まえ、目的地であるウルザラ村と現在地だったベスマの距離を考えてみると、実はそれほど離れていない。

 それはアレク君達は冒険者になるためマウルーに向かった時、朝方出発したにも拘らず、お昼頃にはベスマに到着していた事からも分かる。


 もちろん当時のアレク君達は俺と出会っていない為、移動手段は基本的に『徒歩』だ。

 流石にベスマからマウルーまでは道中の安全も考えて乗合馬車にしたらしいが、あれは当時の彼らにとってかなり奮発したようだ。


 当時のアレク君達の懐事情はさておき、ここで注目すべきポイントは、ベスマとウルザラ村は徒歩で半日の距離ってことだ。

 人の歩く速度はおおよそ4~5km程度だから、朝から昼までぶっ通しで歩いたとしても精々20kmぐらい、箱根駅伝で言えばスタートしてから第一中継所である鶴見まで辿り着けるかぐらいか。

 駅伝のランナーなら一時間で走り抜ける距離だが、生憎と我がダンデライオン号のスピードは、駅伝ランナーとは比較にすらならない速さを誇る。


 まぁそもそも人と飛空艇を比較すること自体間違っているか。

 ならばもっと速くて分かりやすい乗り物と比べてみよう。


 例えばそうだな……新幹線なんてどうだろう?

 丁度、東京から新横浜までのルートもあるしな。

 きっと駅伝ランナーなど足元にも及ばない結果が得られるだろう。


 えーっと……出張したときの記憶を辿ると、東京ー新横浜間は確か18分ぐらいだったか?

 あれ? 思ったよりも時間がかかってるな。

 新幹線の速さが駅伝ランナーの三倍程度な筈がない。

 何かの記憶違いだろう。


 ま、そういう俺も今回はかなりのんびり目に飛ばしたけどな。

 ダンデれもん様が本気出せば、多分秒で到着していただろうけど、それでは余りにも風情ってモンがない。

 それは近所のコンビニに行くのに、F1マシンに乗るようなモノだな。

 あっという間に着いてしまい、途中に咲いている桜とかを見る余裕すらない。


 ちなみにF1マシンで公道を走ると、普通に捕まります。

 というか、十字路を右折とか無理。

 なんでF1マシンを例えに出したんだろう?


 とにかく、音速越えすら可能なダンデれもん様にとって、ウルザラ村に辿り着くなんて山手線を一駅乗るるぐらいの時間しかかからない。

 乗ったら即降りるような感覚だ。

 だからといって歩くと、結構時間がかかるんだよな。

 電車とは偉大である。


 違う。

 電車を称えるのではない。

 ダンデれもん様を称えなくては。


 ダンデれもん様は最速。

 ダンデれもん様は超カッコいい。

 ダンデれもん様はサイコー。


 だから……ね?

 わずか数分程度の出番でもヘソを曲げないでね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 「速さ、時間、距離」で「はじき」で習いましたけど、地域差ってやつですかね。
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