第1167話 MPストック
「え? コレって飛空艇なのか?」
遂に我がダンデライオン号を目の当たりにしたエレさん。
その彼女が発した第一声がコレである。
コレ言うなや。俺も言ってるけど。
やはりエレさんにとって、飛空艇の姿はフベルトゥス商会の帆船タイプのソレであり、我がダンデライオン号のようなラグビーボールタイプは受け入れがたい形状だったようだ。
だがスキルによって保障されているのだから……って、この話はさっきやったか。
とにかく、向こうも飛空艇だけど、こっちも飛空艇なのだから、受け入れてもらうしかない。
とりあえず船着き場なんて人目に触れやすい場所で、あーだこーだと問答している間は無い。
未だ納得しきれない様子のエレさんを無理矢理船の真下に連れていくと、そのままエレベーターで拉致……もといアブダクションする。
なお、アブダクションとは、演繹および帰納に先立って、観察された現象を説明する仮説を発想し、形成する手続きを指す、仮説的推論の事である。(三省堂 大辞林 第三版より)
……ごめん嘘。あ、嘘でもない。
アブダクションにはそっちの意味もあるけど、誘拐の意味もある。
なんで誘拐と仮説的推論が同じ単語になるのか、実に謎だ。
そんな言葉の謎を考えることも無く、エレさんをダンデライオン号へとご招待する。
彼女がエレベーターから出て船に足を踏み入れた時、ウィンドウが突如出現する。
『一定の乗客数に達したことにより、「スキル:飛空艇召喚」がレベルアップしました』
『「スキル:飛空艇召喚」がLV9となったことで「機能:MPストック」が解放されました』
なんと、乗った人の数でもスキルが上がるようだ。
となると、じゃんじゃん人を乗せた方がスキルが上がりやすいのか?
いや、前回のスキルアップが航行距離だったけど、あれ以降も結構飛んでたがスキルアップすることは無かった。
単純に飛んでいる距離が足りないからかもしれんが、もしかしたら一回こっきりのスキルアップの可能性もある。
同じように人数も初回限定な可能性があるなら、人を乗せまくったところでスキルアップは望めない。
可能性の問題だけど、なんとなく俺の中のスキルが、その勘が正しいと告げているような気がする。
それに飛んでいるだけでいい運行距離とは違い、誰かを乗せるってことは、それだけ飛空艇の事をバラすってことだ。
一応、『侵入者排除』という防衛策はあるが、絶対では無いだろう。
スキルアップ目当てで、安直に人を乗せるような事はやめておくか。
「へぇ、これがショータの中か。なんというか……変わってるな!」
俺の中じゃない、ダンデれもん様の中だ。
あと、「変わってるな」とか言わない方が良い。
ダンデれもん様から悪意認定されて、船から放り出されるぞ。
しかしエレさんの悪口とも取れそうな船内評価にも、太っ腹なダンデれもん様は悪意認定しなかった。
彼女が何事も無く船内を歩き回る。
「なぁ、この間取り。もしかしてマジックルームだと思ってたのって……」
おっと、流石に気付かれたか。
まぁ昨日まで見ていた室内と同じ内装、同じ間取りともなれば、気付くのも当然だよな。
むしろ気付かないほうがおかしい。
「えぇ、この船ですよ」
「そうか! 好きな時に船に行けるなんて、迷い人のユニークスキルは最高だな!」
「好きな時って訳でも……ユニークスキル?」
「知らないのか? 迷い人達が持っている変わったスキルの事を、そう呼ぶんだよ」
へぇ、それじゃあ俺の『飛空艇召喚』やシュリの『薬学大全』なんかは、ユニークスキルってことか。
なんかカッコいいな、ユニークスキル。
たしかユニーク(unique)って独特とかそんな意味合いだったっけ。
オリジナルとか専用とかって、やっぱロマンだよな。
ユニークスキル『飛空艇召喚』。
これからはスキルを紹介するときは、ユニークスキルと付けて言う事にしよう。




